BiSH解散、豆柴の大群×AKB48……話題振りまいたWACKの1年 存在感示す新たな動きも

 12月24日、BiSHが2023年に解散することを発表した。アリーナ規模のライブを当然のように開催し、今年は『第72回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の初出場も決まっているグループだ。だからこそ、勢いが続いている中で発表された知らせは、ファンだけでなく音楽シーン全体に大きな衝撃を与えた。しかし解散までに残された時間は1年以上ある。12カ月連続リリースや、ホールツアーとライブハウスツアー、『BiSH FES.』の開催も同時に発表した。解散までの間、様々な形でファンを楽しませるための活動が待っている。

 BiSHは音楽やメンバーの魅力だけでなく、ファンを驚かせるサプライズや前代未聞な取り組みをして飛躍した部分がある。例えばシングルやアルバムをゲリラリリースしたり、道頓堀や六本木ヒルズアリーナでのゲリラライブなど、まず話題性に溢れる活動で注目され、その結果として音楽が聴かれ評価されたという見方もある。解散発表が『スッキリ』(日本テレビ系)で生中継されたり、『ミュージックステーション ウルトラ SUPER LIVE 2021』(テレビ朝日系)内で事前告知なしで解散に関するCMを流したことも、世間からの話題を集めたり驚かせる施策と捉えることができる。

BiSH iS OVER! -CM完全版-

 BiSHだけでなく他のWACK所属グループでも、様々な話題性が強い企画が行われており、それはすなわちWACKという事務所の特徴の一つと考えることができる。『水曜日のダウンタウン』(TBS系)内の「MONSTER IDOL」という過激なオーディション企画をきっかけに結成された豆柴の大群も、番組と絡めることで結成前から大きな話題を呼んでいた。安田大サーカスのクロちゃんがアドバイザーを務めることでも注目を集めており、他のWACKグループとは異なるキュートで明るい雰囲気を持ったメンバーやサウンドが新鮮に感じられ、グループとして独自の人気を獲得したのだろう。意外な組み合わせでギャップを生んだり、アイドルらしからぬ活動をすることで新しい魅力を生み出すことが、WACKの得意とするところだ。

 豆柴の大群がAKB48グループと対バンを行ったツアー『豆柴48』も、日本を代表する王道アイドルとカウンター的ポジションのWACKが共演する意外性でファンを驚かせた。今年のWACKはAKBグループとの関わりが多く、特に話題となったのは柏木由紀がWACK所属の7グループそれぞれに加入するコラボレーション企画『柏木由紀なりのWACK』だ。柏木由紀は合計14曲に参加するという、コラボ企画としては前代未聞の曲数と壮大さも話題になった。かと言って話題性だけの企画というわけでもなくしっかりと音楽的にも優れており、各グループの個性が際立った楽曲に、長年アイドルシーンの第一線で活躍してきたからこその凄みを感じる柏木のボーカルが加わることで、新しい魅力がそれぞれに生まれた。さらにはコラボシングルに封入された投票券でファン投票を行い、上位のメンバー7名と柏木で8人組の新グループが結成されることも発表されている。これは、『AKB48選抜総選挙』の内容をWACKとしてアレンジしたものだろう。つまりは楽曲だけでなく、AKBグループの文化ともコラボしたのだ。

【AFTER MOViE of 豆柴48】

 今年で言えば、BiSとZOCのスプリットシングルも忘れてはならない。BiSはZOCのプロデュースを務める大森靖子の制作した「割礼GIRL」を歌い、ZOCはWACKのサウンドプロデュースを務めるSCRAMBLESの制作した「BEGGiNG」(松隈ケンタが作曲、JxSxKこと渡辺淳之介と松隈が作詞)を歌唱した。裏方のプロデュースを交換するコラボレーションは珍しいことだろう。

 外部のグループとコラボするパターンは、他事務所でも過去にいくつか例がある。しかし7組と、計14曲のコラボレーションやプロデュースの入れ替えは、WACK以外では行っていない。ましてやコラボをきっかけに新グループを結成することなどほぼない。WACKは既存の活動の中に、新しい価値観を組み合わせることで意外性や刺激を生んでいる。多くの人に馴染んでいるものの中に斬新さを潜ませるのだ。だからこそ多くの人に受け入れられると共に、今までにない刺激も同時に感じるのだろう。

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