豆柴の大群、IxR from AKB48との対バンで見せた刺激的なステージ それぞれの個性を発揮した『豆柴48』東京公演レポ

 後攻の豆柴は全8曲からなるセットリスト。少しWACK色の強い、AKB48のカウンターとも言える攻めた選曲である。そのことが伝わってくるのが、「豆柴の大群- お送りするのは人生劇場-」「FLASH」「そばにいてよ Baby angel」といったアッパーチューン連投の頭ブロックだ。そして、この3曲は豆柴がこれまでライブで披露し続けてきたバキバキのライブチューン。ここで一気に空気を変えるぞという気概がステージの上下(かみしも)にあるお立ち台に乗りフロアを煽るメンバーの姿からもよく分かった。そこには、IxRのパフォーマンスを観て感化された熱い思いが乗っている。

 MCではAKB48への溢れる愛を伝えつつ(アイカ・ザ・スパイの「根も葉もRumor」には会場にどよめきが走る)、次のブロックでは12月22日にリリースの最新シングル『昨日は戻らない / 恋のフルスイング』から2曲が披露された。つまり、この『豆柴48』は対バンツアーでありつつ、両A面シングルの披露の場でもあったというわけだ。「昨日は戻らない」は先述した『豆柴の大群の疾走』で初披露された、「大丈夫サンライズ」を彷彿とさせるまっすぐな力強い楽曲。〈私大丈夫〉といった自身を肯定する歌詞は誰もに突き刺さる。そして、今回のツアーからセットリストに仲間入りしているのが「恋のフルスイング」である。ミユキエンジェルをセンターに据えたこの楽曲は、シャンシャンとベルが鳴る混じりっけのないクリスマスモード全開のサウンド。そこにメンバーの愛らしいダンスと思い切りのいいフルスイングが加わる。WACKのグループの中でもこれが歌えるのは豆柴だけではないかと思えるまっすぐさだが、そこにスパイスとなっているのがクロちゃんによる作詞である。今回も常人では理解できない歌詞が並んでいるものの、出だしの〈奏でられない気持ちってないよね〉だったり、〈殺伐とした己の運命に〉といったまるでビジュアル系バンドのような言葉を紡ぎだすクロちゃんの才能にはやはり感服してしまう。

 ライブのラストには豆柴とIxRのコラボレーションが披露された。楽曲はAKB48「ヘビーローテーション」、豆柴「りスタート」。お互い5人のグループであり、ユニットということでそれぞれがペアになってのパフォーマンスだ。「ヘビーローテーション」はもともと大所帯で披露されている楽曲であるが、「りスタート」が10人形式として構成されるのはこれが初めて。10人がズラッと一列に並ぶフォーメーションや楕円形を作って宙を仰ぐ振りなど、ダイナミックな「りスタート」が展開されていた。

 東名阪で行われてきた『豆柴48』は、豆柴メンバーにとってWACKの先輩グループとの共演とはまた違った大いなる刺激が得られたはずだ。そして、筆者がこの日2階からフロアを観ていて気になったのが、「この人はIxRを観に来たんだろうな」というAKB48ファンと豆粒(ファンの総称)の区別がぼんやりとついたことだった。しかし、そのことは決してマイナスなことでなく、むしろプラス。きっと今回の対バンツアーを開催した目的の一つはそこにある。今の豆柴のパフォーマンスを少しでも多くの人に観てもらうこと。48グループのファンを豆粒として掴み取れたかは、今後徐々にメンバーがそのことを実感していくはずだ。

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