オレンジスパイニクラブが届けた測定不能なロック体験 LIQUIDROOMのステージにあった愛すべきバンドの姿
パンクをルーツとしながらも、抜群のポップセンスを持ち合わせているのがオレンジスパイニクラブであり、兄・ユウスケのボーカルに弟・ナオトのハモリが重なるたび、本当にいい曲ばかりだなあとしみじみ思わせられる。この日の会場を「ずっと出たかったハコ」と語っていたユウスケは、緊張から足が震えているとも言っていたが、その高揚感もいい形で歌に作用しているような印象。アンコールを含め全23曲、緩急激しいセットリストだっただけに喉への負担も大きかったと想像するが、伸びのある歌声は最後まで頼もしく感じられた。
とはいえ、ただポップなだけではなく、ある地点を境に突如テンポが変わる曲構成や長めに設けられたアウトロ、メンバーの趣味趣向が滲み出たサイケ的なコードなど、各曲に設けられた捻りをフックにバンドは躍動。一筋縄ではいかない感じがそこかしこに表れていたが、一方、ほろりとくる場面もあった。「ホント夢みたいな感じですよ。何度も言いたい、ありがとうございます」とユウスケが改めて心境を言葉にしたのは「バカのしりぬぐい」演奏後のMC。ここでは、上京前、車で3時間かけて東京へライブをしに行っても、観客はほとんどいないし、また車に乗って茨城へ帰らなければならないから打ち上げにも参加できないし……という生活の中で‟バンドやめたい”と思ったこともあったのだと振り返った。
「そんななか、ナオトが作ってきたんですよ。いい曲を。ずっと大切にしている曲をやります」(ユウスケ)。そう紹介されたのがバンドの転機となったバラード「キンモクセイ」だ。「キンモクセイ」に続けて、『アンメジャラブル』リード曲にして新たな名曲「ガマズミ」を演奏したシーンは間違いなくこの日のハイライトだったろう。そのままライブはクライマックスへ向かい、「10年前の僕に、‟まだバンドやってるぞ”って想いを込めて10代の頃の曲をやります」と紹介された「モザイク」、「この歌がみなさんの生きる理由になりますように」と語られた「理由」、本編ラストに演奏された初期曲の「敏感少女」も泣き笑い的な温度感を帯びていく。
アンコールで廃盤CDに収録されている3曲を披露し(明らかに進化している演奏に再録を望みたくなる)、ステージを去っていった4人。「これからも卑屈な歌を歌ってくので!」というユウスケの言葉にかなりグッときたのはおそらく私だけではないだろう。愛情も感慨も少し斜に構えた心も全部鳴らしていく、愛すべきバンドの姿がそこにあった。
▼1st Full Album Release LIVE TOUR「アンメジャラブル」SET LIST
https://orangespinycrab.lnk.to/1stALtoursetlist
セットリスト
01. 退屈かも知れない
02. Worst of myself
03. スリーカウント
04. 37.5℃
05. 日和見の暮
06. アイヘイトマイバースデー
07. イヤーワーム
08. Cho ru ryo
09. タルパ
10. バカのしりぬぐい
11. キンモクセイ
12. ガマズミ
13. 東京の空
14. 急ショック死寸前 ※未配信
15. ハクビシンのユメ
16. 睫毛
17. ringo
18. モザイク ※未配信
19. 理由
20. 敏感少女
En1.パープリン ※未配信
En2.まいでぃあ ※未配信
En3.みょーじ ※未配信
▼アルバム情報
・タイトル: 「アンメジャラブル」
・発売日:2021年10月20日(水)
・〔初回限定盤〕(CD+DVD) WPZL-31900/01 定価:¥5,280 (税込)
・〔通常盤〕(CD) WPCL-13328 定価:¥ 3,300 (税込)
・アルバム購入リンク
https://orangespinycrab.lnk.to/unmeasurable
・収録内容:
【CD】
1.ガマズミ
2.退屈かも知れない
3.ハクビシンのユメ
4.日和見の暮
5.バカのしりぬぐい
6.アイヘイトマイバースデー
7.イヤーワーム
8.ringo
9.Worst of myself
10.Cho ru ryo
11.睫毛
12.理由
【DVD収録内容】
1. みょーじ
2. 駅、南口にて
3. パープリン
4. 急ショック死寸前
5. 37.5℃
6. 眠気
7. コーヒーとコート
8. タルパ
9. キンモクセイ
10.モザイク
11.東京の空
12.スリーカウント
13.ドロップ
14.リンス
15.たられば
16.敏感少女
17 .イージーゴーイング