優里、オレンジスパイニクラブ、TETORAがそれぞれの“ロック”を見せた一夜 『REDLINE TOUR』東京公演レポ

『REDLINE TOUR』東京公演レポ

 7月9日に『REDLINE TOUR 2021 SUMMER』の東京公演が渋谷・TSUTAYA O-EASTで行われた。インディーズレーベルやディストリビューションを手がけるJMSが主催するライブイベントで、今回の東京公演は優里、オレンジスパイニクラブに加えTETORAが出演した。「限界を超え、すべての境界線を無くすことを目的とする活動体」というコンセプト通りに、ジャンルや音楽性もバラバラな出演陣が共演することで、化学反応が発生するイベントになっていた。

 トップバッターはオレンジスパイニクラブ。オレンジの照明がステージを照らす中で、「37.5℃」しっとりと演奏し、ミドルテンポのラブソング「またあとで」を心地よく鳴らし、フロアを温かな空気で包み込み自分たちの空気を作っていく。名曲を良い演奏で届けるだけでなく、彼らはロックバンドとしてのカッコよさも兼ね備えている。続く「スリーカウント」ではパンクバンドのように衝動的な演奏をし、スズキユウスケ(Vo)はシャウトしながらフロアを睨みつけるように歌う。このギャップに痺れてしまう。

 ゆったりとした弾き語りから始まる「みょーじ」は中盤から演奏が激しくなっていく。温かさと衝動が組み合わさった音楽には彼らの個性が詰まっている。そんな楽曲に衝撃を受けていると、「駅、南口にて」「タルパ」と切ないミドルテンポのナンバーを続け、そのギャップにより彼らの個性や魅力が際立つ。

 MCでは共演経験があるTETORAにも言及し「ボーカルの(上野)羽有音ちゃんが夢に3回出てきたことがある」とスズキが話すと、ゆっきーが「好きなの?」とイジる場面も。音楽だけでなくMCでも客席との距離を縮めていく。

 そして「優里さんがインスタライブでカバーしてくれた曲」と紹介し、代表曲「キンモクセイ」を披露。そして真逆の方向性といえるパンクナンバー「急ショック死寸前」をシャウトしながら激しく演奏、重低音響くサウンドが印象的な「たられば」でさらに違う一面を見せる。約40分の演奏時間で様々なタイプの音楽を鳴らし、一筋縄ではいかないバンドの深い魅力を伝えていた。最後の曲は「敏感少女」。〈届け届け 敏感少女〉と歌う彼らの音楽は、集まった人たちに確実に届いたはずだ。

 2番手はTETORA。ロックバラード「友達、以上」からライブスタート。そして「今日が夢でありませんように!」と叫んでから「素直」を続ける。上野羽有音(Vo)がステージ前方に出てきて客席を煽ったり、間奏で「ロックバンド始めます!」と宣言したりと、ロックの衝動をパフォーマンスで表現し、客席の熱気を上昇させていく。「嘘ばっかり」の感情をむき出しにした歌唱にも心を掴まれる。彼女たちのロックバンドとしての哲学を感じるステージで、まるでワンマンのように自分たちの空気を作っていった。

 最初のMCでは「オレンジスパイニクラブのユウスケくんにさっき話した時にイジってごめんねと言われたけど、目を合わせてもらえませんでした」と冗談まじりにオレンジスパイニクラブのMCの内容を汲んだ内容を話す。そして「今日のライブがカッコいいと思ったら、『REDLINE』もう一度呼んでください。ロックバンドやります」と宣言して演奏を再開。「ピースシーズ」で力強い演奏を響かせ、切ないメロディの「覚悟のありか」で感動を呼ぶ。「TETORAを観て何かを感じてもらえたらと思います」と言ってから〈君に書いた歌を本人が歌うなよ 自分の歌みたいにさ〉という歌詞が印象的な「ずるい人」と、「今日くらいは」を繊細な表現で演奏する。彼女たちは衝動的に演奏するだけではない。ロックバンドのカッコよさだけでなく、音楽の素晴らしさも伝えるような演奏も見せていた。

 「普段は小さいライブハウスでいっぱいライブをやっています。そこではもっとロックバンドとして泥臭くやっています。最後の曲はいつものようにやって、爪痕残します」と宣言してから「レイリー」を演奏した。今回の会場は彼女たちが普段出ている会場より広いかもしれない。しかしいつもと変わらずにロックバンドをやっていたし、この日初めて観た人の心にも爪痕を残したであろう。

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