2022年を牽引する新世代ボカロPは? 柊キライやKanaria、ノラらに感じるボカロ文化の成熟

 クリプトン・フューチャー・メディア社がボーカロイド「初音ミク」を発売したのが2007年。自由自在に歌ってくれる電子の歌姫の登場により、誰もが一人で音楽を作ることができるようになり、以降、数多のボカロ曲が誕生することとなった。はじめはニコニコ動画をホームとして、いわゆる一部のオタク層向けの音楽として認識されていたボカロ曲だが、米津玄師(ハチ)や須田景凪(バルーン)、ヨルシカのn-buna、YOASOBIのAyaseなど、いまやボカロP出身者による楽曲がメインチャートを彩ることも珍しくない。彼らの楽曲を紹介する際、枕詞のように「ボカロP出身の」や「ネット音楽から生まれた」などの但し書きをつけてきたが、その活動形態自体がメインストリームになりつつある今、補足はもはや不要なのかもしれない。そんな、一過性ではない1ジャンルとして確立し、進化を続けてきたボカロシーンにおいて近年めざましい活躍を見せるボカロPを取り上げてみたい。

柊キライ

ボッカデラベリタ / 柊キライ feat.flower

 まず触れたいのが柊キライ。2019年1月に「ビイドロ」を初投稿した柊キライはエレクトロスウィングな曲調が大きな特徴。「オートファジー」でブレイクし、2020年4月に公開した「ボッカデラベリタ」が大勢の歌い手にカバーされ、1600万回再生を超える自身最大のヒットとなった。WOOMAが手がけたつり目と長い爪が強烈な女性のイラストも相まって、毒々しくも中毒性のある世界観で、一瞬で心をわしづかみにされる。「ボッカデラベリタ」は、特にボーカルが曲との相性の良さを発揮したAdoによるカバーが2400万回を突破している。

Kanaria

『エンヴィーベイビー』×『KING』

 2020年のボカロシーンのもう一人のスターは19歳のKanariaだろう。2020年5月に「百鬼祭」を投稿。箏のような音色が特徴的な和テイストの楽曲で、投稿直後から存在感を発揮した。続く第2作目の「KING」がスマッシュヒットし、YouTubeでの再生回数は4700万回を超えた。以降も「エンヴィーベイビー」、「EYE」とヒットを飛ばし続け、一気にトップに上り詰めた。赤と黒を基調としたイラストで統一感を出して、曲同士の世界観のつながりを想起させたり、「『エンヴィーベイビー』×『KING』」という、二つの曲をかけ合わせた曲を公開するなど、「知れば知るほど沼らせる」世界観を構築している。「ボッカデラベリタ」と同じく多くの歌い手にカバーされており、葛葉による「KING」のカバーは2900万回再生を超えた。

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