“乃木坂46の生田絵梨花”を全力でまっとうしたエネルギッシュなステージ 10年分の愛と感謝が溢れた卒業コンサート

 乃木坂46の1期生・生田絵梨花の卒業コンサートが12月14日、15日に横浜アリーナで開催された。グループ結成時から主要メンバーとして乃木坂46を牽引し続け、個人としても『レ・ミゼラブル』を筆頭に数々の舞台/ミュージカルで活躍した生田。彼女が「乃木坂46といえば舞台」というパブリックイメージを確立させるのに一役買ったことは、ファンのみならずとも知るところ。そんな生田が10年にわたり在籍した乃木坂46を2021年内に卒業するとあって、4年ぶりの東京ドーム公演から1カ月経たずして、横浜アリーナでの2DAYS公演が実現した。本稿では15日公演について記す。

 遠藤さくら、佐藤璃果、掛橋沙耶香の4期生による影アナに続いて、10年前の生田によるオーディション時のコメント映像を経て「OVERTURE」に突入すると、声は出せないものの観客のボルテージは急加速していく。そんな盛り上がりに続き、アリーナ後方から花道を歩いてステージ上の白いピアノに向かって歩き始めた生田。曲に入る前から涙をにじませながらも笑顔を見せる彼女は、ライブ1曲目にピアノ弾き語りによるソロ曲「あなたのために弾きたい」という意外な1曲を披露する。オープニングで熱量を高めてからスタートと思いきや、いかにも彼女らしいしっとりした幕開けに対して、おそらく多くのファンが冒頭から「本当に卒業してしまうんだ……」と実感したのではないだろうか。

 しかし、そんなしんみりとした空気も、続く2曲目「何度目の青空か?」から少しずつ変化していく。この2日間のセットリストは生田の意向のもとに構築されたもので、「制服のマネキン」「おいでシャンプー」といった初期の代表曲が生田センターで連発されると、生田のメンバーカラーである黄色に点灯したペンライトやスティックバルーンを手にしたオーディエンスの熱気も急上昇。その後も「会いたかったかもしれない」や「ぐるぐるカーテン」というデビューシングル収録曲がメンバー全員でパフォーマンスされ、観る側の感情は否が応でも高まっていった。

 MCではキャプテンの秋元真夏が「今日で終わっちゃいますよ? 寂しいですね」と話すと、生田も「(ステージに登場する際)10年前の自分になったような感覚で、めっちゃ緊張した」とコメント。2期生の北野日奈子が「もう何年も先輩たちと活動していますけど、ここ最近、生田さんを“いくちゃん”呼びに変えた」と言うと、生田が「呼び方が変わると距離も縮まるよね」と返す一幕もあった。

 生田のインタビュー映像を挟んでライブが再開されると、まずは期別ブロックへと突入。4期生が「I see...」、3期生が「三番目の風」、2期生は「アナスターシャ」、そして1期生は「白い雲にのって」「あらかじめ語られるロマンス」とそれぞれの期を象徴するような楽曲が用意されたのだが、この日は『乃木坂46 生田絵梨花 卒業コンサート』であることを忘れてはならない。なんと、すべての期別曲に生田が参加するというスペシャルな演出が用意された。「I see...」では生田と4期生・賀喜遥香のダブルセンター、「三番目の風」では3期生一人ひとりとペアダンスなどの見せ場が用意され、これまでありそうでなかった場面で観る者を驚かせることに。後輩と一緒にパフォーマンスする生田の表情は非常に晴れやかなもので、その姿からは先輩としてというよりも同じ目線の高さでライブを楽しんでいる様子が伺えた。

 個人的にこのパートで印象に残ったのが、生田が2期生と「アナスターシャ」を披露した際、彼女が鈴木絢音に寄り添って一緒に歌うシーン。リアルサウンドの最新インタビューで生田のことを「ガラスでできた彫刻というか、触れたいけど触れてしまったら傷つけてしまうみたいな存在というか。この美しさに自分もなりたいんだけど、絶対になれないとわかっている、そういう孤高の人です」(※1)と語っていた鈴木だが、この日こうして一緒に同じ曲を歌うことができたのは、彼女にとって大きな財産になったのではないだろうか。

 続いてはユニットブロックへ。「無表情」のオリジナルは生田と松村沙友理による“からあげ姉妹”だが、この日は卒業した松村に代わり秋元が参加。長年苦楽を共にした2人の貴重なコラボも、この日ならではと言えるものだ。また、オリジナルメンバーがすべて卒業してしまった「偶然を言い訳にして」には生田、齋藤飛鳥、樋口日奈、和田まあやの1期生4人が参加。リリース当時、グループの年長メンバーで歌われたこの曲も、発表当時10代前半だった4人が新たな解釈で表現することにより新鮮に感じられた。曲中には生田への感謝状が贈られるサプライズもあり、生田が思わず落涙する一幕もあった。

 向井葉月や山崎怜奈がそれぞれセンターに立つアンダー曲「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」「13日の金曜日」を挟んで、「ここじゃないどこか」を生田&星野みなみの2人で披露。星野は必死に涙を堪えながら、生田へ感謝の言葉を贈り、生田も来年はじめに卒業を控えた星野を労った。さらにそのあとには生田のソロ歌唱による「やさしさとは」、メンバー全員で歌う「羽根の記憶」も用意。良曲連発のこのセットリストに、乃木坂46は楽曲で勝負してきたグループであることを再認識させられた。

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