アルバム『Chameleon』インタビュー

近石涼が追求する、シンガーソングライターとしての生き方 「自分らしさは他人が決めることではない」

 神戸発のシンガーソングライター、近石涼がインディーズ・デビューアルバム『Chameleon』をリリースした。デジタルシングル「ライブハウスブレイバー」「兄弟Ⅱ」「ハンドクラフトラジオ」を含む本作は、リアルな感情を描き出すメロディと歌詞、そして、ジャンルの枠を超えたサウンドメイクを軸にした作品。多彩にして生々しい表現力をたたえたボーカルも魅力的だ。

 来年1月22日には、彼のホームである神戸VARIT.で初のワンマンライブも決定。彼自身「自分の名刺になるアルバム」と胸を張る『Chameleon』によって近石涼は、神戸から全国に向かって飛躍することになりそうだ。(森朋之)

周囲に合わせて生きられない自分を肯定したかった

近石涼

ーーインディーズデビューアルバム『Chameleon』が完成しました。タイトル通り、歌詞、メロディ、アレンジ、ボーカルを含め、1曲1曲、いろいろな表情が味わえる作品ですが、当初から「幅広い楽曲を入れる」というテーマを掲げていたんでしょうか?

近石涼(以下、近石)いえ、最初はアルバムを意識せず、好きなように曲を作って。アルバムを出すことになって、どういうタイトルを付けて、どうまとめるか? を考えたときに浮かんできたのが、「Chameleon」という言葉だったんです。変幻自在という意味もあるんですけど、カメレオンについて調べてみると、すごく繊細な生き物なんですよ。

ーーストレスを感じやすく、気温や湿気の変化や、他の動物が近くにいるだけで体調を崩すそうですね。

近石:そうなんです。僕は大学時代に、いろんなゼミやサークルに入っていたんですけど、場所によって、周りの人の僕に対する接し方は変わるじゃないですか。それに上手く合わせられない自分がいたんですよね。状況によって無意識に自分を変えられる人もいると思うんですけど、僕はそれが上手くできなくて。そういう自分を肯定したいと思ったし、曲のなかにも“思うように生きれたら”という歌詞がいくつかあるんですよ。たとえば「兄弟 Ⅱ」では、〈『ありのまま』なんて誰が決めたのさ『思うまま』の自分になるだけだ!〉と歌ってるし、「ノスタルジークラムジー」には〈投げかける声と同じ数 この世界に僕はいる〉という歌詞があって。どちらも“思うままに生きることで、どこまでも行ける”という意味なんですよね。

近石涼 - 『兄弟II』(official MV)

ーーなるほど。ちなみに学生時代、いくつくらいゼミやサークルに入ってたんですか?

近石:6〜7個ですね(笑)。1年浪人したんですけど、先に大学生になった友達から「サークルとかを一つに絞ると、合わなかったときに困るよ」と言われて。僕もいろんな方面に興味があったし、いろんな場所に行ってみたくて。ゴルフ部にも入りました。6カ月くらいでやめちゃいましたけど(笑)。

ーーいろんな方面に興味があるというのは、音楽性にも出てますよね。このアルバムにも、ロック、ネオソウルからフォークまで、いろいろなタイプのサウンドが描かれていて。

近石:そこに対する苦悩もあるんですよ。曲の傾向が定まっていると、「いつも同じような感じ」と思われるかもしれないけど、スタイルが確立しているとも言えるじゃないですか。僕の場合はいろんなタイプの曲があるんだけど、逆に言うと「迷ってる」という印象もあるのかなと。そこも含めて、「これが自分や」と言えるアルバムにしたかったんですよね。

ーー音楽のルーツも幅広いんですか?

近石:そうですね。母がピアノの先生だったので、小さい頃から習っていて。あとは家で流れていたブラックミュージックやサザン(オールスターズ)、槇原敬之さんもずっと好きで。中学生のときはEXILEやAKB48が流行っていて、友達とカラオケで「ヘビーローテーション」をヘビーローテーションしまくってました(笑)。バンドの音楽は高校生になってから聴き始めたんですけど、それが今の音楽性につながっているかもしれないですね。ただ、その前に聴いていた音楽もずっと残っていて。

ーー選択肢を狭めるのが好きじゃないのかも。

近石:それはあると思います。高校を卒業するときも、音楽の専門学校だと狭まるなと思って。この先、歌っていくことになっても、何かのプラスになるかもしれないと思って、経営学部を選びました。

ーー音楽の道に進もうと決めたのはいつ頃なんですか?

近石:中学生くらいからボンヤリと思っていたんですけど、具体的な行動を起こすわけでもなく。本当に決めたのは大学生のときですね。就職するのは違う、やっぱり歌しかないなと思って。音楽に割く時間も増えたし、趣味ではなくなったというか、「もう言い訳できない」という気持ちになりましたね、そのときに。「ライブハウスブレイバー」みたいな熱量の高い曲は、その頃に書いたものが多いです。

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