NiziU「Chopstick」なぜ癖になる? 奇妙で絶妙なバランスを曲構成から解説

 しかし、シンプルなつくりだからといって抑制的なわけではなくて、ちゃかちゃかとパーカッシブな高音のフレーズと最低限のコード感を提示するずっしりとしたベースの対比が、はやる気持ちを雄弁に戯画化しているように聴こえる。「チョップスティックス」のメロディをモチーフにしたシンプルなフレーズがディレイと一緒に折り重なってモザイク画みたいに響く中盤までの展開の、浮足立った高揚感。大仰なオーケストラのサウンドと共にもっと決然とした響きになっていく終盤。シンプルな道具立てながら(むしろシンプルだからこそ?)、軽快なポップさのなかにむずむずするような微妙な感情の機微が表現されている。あるいは、言葉にしてしまえば陳腐になってしまいそうな感情に具体的な手触りがともなっている、というか。はじまりがあってクライマックスがあって終わりを迎えるドラマのかわりに、リズムとサウンドがつくりだす感情のざわめきがある、そういう曲だ。

NiziU(니쥬) 1st Album 「Chopstick」 MV

 ミニマムな構成の快活で華やかなポップソング、というのはある意味NiziUの看板のようなもので、プレデビュー曲の「Make you happy」や、あるいは「Take a picture」もその例に漏れない。なかでも「Chopstick」はいわゆる「大ネタ」の引用がもたらすキャッチーさで異彩を放つ。渋く、あるいはオーセンティックにまとまるのではなく、「みんなが知ってるあの曲を使った元気なポップソング」として瞬間最大風速を叩き出しながら聴く人の心をざわつかせる。奇妙で絶妙なバランスの1曲だ。

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