NiziU「Chopstick」なぜ癖になる? 奇妙で絶妙なバランスを曲構成から解説

 NiziUが1stアルバム『U』からの先行シングルとしてリリースした「Chopstick」。振り切ったキャッチーさがインパクトを残すこの曲の元ネタは、ユーフェミア・アレンが1877年に書いた「The Celebrated Chop Waltz」、通称「チョップスティックス(Chopsticks)」というピアノ曲だ。

※「The Celebrated Chop Waltz」参照音源

 「チョップスティックス」はふたつの旋律が軽快なワルツのリズムにのせてハーモニーを奏でる小品で、聞き覚えのある人は少なくないだろう。弾いたことがある、という人も結構いるはず。個人的には、トム・ハンクス主演の映画『ビッグ』で、巨大なピアノの上を飛び跳ねながら両脚で演奏しているシーンが頭に焼き付いている(映画の内容はあまり覚えていないのだが……)。実際「脚で演奏する」というショットは「Chopstick」のMVにも何度か出てきていて、件の作品が直接の参照源かは定かではないが、少なくとも旋律がもつ軽やかな身体性はこういうイマジネーションを刺激するのだなと思う。

 ところでこの曲、一聴した印象では3分足らずの尺にいろんな展開が詰め込まれている賑やかな曲、と思われるかもしれない。しかし実際にはめちゃくちゃシンプルな展開で、トラックに着目してみると、最初のAメロとサビはウワモノのメロディに細かい差異がある(高い旋律が少し加わっている)以外はほぼ同じ。構成としてはAメロ-Bメロ-サビの繰り返し(そこにラップパートが挿入されてイレギュラーになる)なのだけれど、Aとサビはほとんど同じで、音の抜き差しがダイナミックな展開をつくっている。こうしたミニマムな構成自体は(物語的な構成を重視する傾向にあるJ-POPはともかく)珍しいわけではないが、「Chopstick」は頭一つ抜けている。

 「エモさ」の源がコード進行やメロディにあるとすると、「Chopstick」はちょっと変わった曲だ。歌詞の内容には「君」への思いがぎゅうぎゅうにつまっている一方で、エモーショナルな心の動きを表現していると思えるのは、強いて言えばコード進行が変わってビルドアップ的に機能するBメロだけで、あとはふたつのコードをひたすら行き来する。高いロングトーンのように歌い上げて感情の高ぶりを誘うメロディも控えめだ。音楽的なドラマは、ほとんどこのBメロ=ビルドアップにかかっている。サビのサビらしさは、サビそのものではなく、ビルドアップが作り出している。

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