『後日改めて伺います』インタビュー
田渕ひさ子、間近で見てきたアユニ・Dの成長 ギタリストとしても刺激的だったPEDROの3年間を振り返る
「『雪の街』は感動しながら弾いていた」
ーーアルバム『後日改めて伺います』の制作はどのように始まったんでしょうか。
田渕:スタートは早かったです。5月か6月くらいだったかな。武道館が終わって、曲が揃っていって、そこから進めていきました。
ーーこのアルバムは全曲アユニさんが作詞作曲しているわけですが、曲の雰囲気や、音の鳴り方も随分と変わりましたね。1stアルバム『THUMB SUCKER』の頃はもっと刺々しくて激しかったけど、まろやかになった感じがあって。サウンドの感触にもアユニさんの音楽的な方向性が表れているように思いました。
田渕:そうですね。アユニさんが「こうしてほしい」と言った部分もあるし、アユニさんが変化していく姿を見て、編曲する側が変わってきているのもあるし。いろんな要素があると思うんですけど、私は「3枚目で化けるバンドだ!」って思いました。デモを聴いたときもそうでしたけど、レコーディングを経て完成したものを聴いて、化けたなって思いました。
ーー覚醒した感じがありますよね。アルバムでは田渕さんのギターの鳴らし方も大きなポイントになっていると思うんですが。そのあたりはどうでしょう?
田渕:前作よりオルタナティブな感じの曲も多くて。直接アユニさんから「こんなギターにしてほしい」と言われた曲も結構あったので、「いいのかな?」と思いながら自分の趣味に走った部分もあったかもしれないです。
ーーtoddleに近いところもあるかもしれないと感じました。
田渕:確かに。コードの鳴らし方や弾き方も変わったかもしれないです。曲自体に、ストレートで力強い部分もあるんですけど、全体としては柔らかくて、広がりがあるので。
ーーアユニさんから「こう弾いてほしい」と提案があった曲は?田渕:「ぶきっちょ」はコードをなぞっているギターと、もう1本はめちゃくちゃ変なギターがいいですと言われて。あと、「雪の街」はぐわっとエモーショナルなソロを最後に弾いてほしいとか。そういうことを言ってもらいました。
ーーラストの「雪の街」はアーミングも使った轟音のギターサウンドで、すごく壮大で感動的ですよね。
田渕:自分の中の“雪の街”のイメージもありますし。アユニさん本人の故郷の歌ということで、歌詞を見ても感動してしまって。めちゃくちゃエモいギターを弾いてしまいました(笑)。その人の育った物語が曲に入っているというのはいいなと思って、感動しながら弾いてましたね。
ーー歌詞の面、言葉の面でアユニさんの曲を聴いて感じることはどうでしょう?
田渕:人間的にどう変わってきたかという話にも重なるんですけど、私はそこまで最初から自信なさげだとは見えていなくて。でも、「あ、すいません……」みたいな部分を持っている人で。そういう部分がなくなったのではなく、そういう自分を認めていこうという自己肯定感が増してきた感じがします。歌詞も、ありのままの自分を肯定していくという内容がより鮮明に確立されてきた。それはすごく好きですね。
ーーそういうことも含めて、3枚目で化けたと。
田渕:そうですね。歌い方も違うし、曲も、歌詞も、そういう部分が確立された。力強くなったように思います。
「PEDROは今までのバンド経験でも飛び込んだことない環境」
ーーわかりました。田渕さんご自身のことも振り返ってみると、様々なバンドで活動してきた中でも、PEDROというのはギタリストとしてどのような想いで取り組んだバンドだと思いますか。
田渕:私自身、3ピースバンドをやるのが初めてだったんですよね。もう1本のギターがいないっていうことはすごく大きかったです。あとは3人でどうライブを作るかっていう点でも、楽しみつつ、すごく勉強になりました。今回のアルバムの曲をライブでやるときに、音源だと3〜4本ギターの音が入っているので、どの音を弾くか悩むんです。そこで今までだったら「コードを弾かなきゃ」と思っていたんですけど、最近はアユニさんのベースがめちゃくちゃしっかりしてきたんで、「ちょっとフレーズを弾いてみようかな」って思えたり、自分の中でのライブアレンジに広がりが出るようになってきて。アユニさんの演奏がしっかりしてきたからこそ、ライブの幅も結構変わってきました。
ーー田渕さんのキャリアをPEDROで活かすだけじゃなくて、ご自身にとっても新しい挑戦になっていたんですね。
田渕:本当に挑戦です。今までバンドをやってきたなかで、自分はしっかりしてなくてもいいっていう意識があったかもしれないから(笑)。2本目のギターって、色づけを鮮やかにして派手に見せたりとか、土台を支えるのとは全然違う役割なんです。だから、やっぱり土台を支えつつ弾くっていうのは難しくて、今まで本当に自由に弾かせてもらってたんだなってしみじみ思いました。
ーーそうなんですね。PEDROが始動してから3年経ちましたが、その間にはNUMBER GIRLの復活もありましたし、田渕さんにとってすごく濃密な期間だったんじゃないかと思うんです。振り返ってみると、ご自身の人生の中ではどんな3年だったと思いますか。
田渕:初めてのPEDROのライブのときに、NUMBER GIRLが復活する話はすでにあったんですよ。そこに翌年コロナもやってきたので、本当に体験したことない出来事ばかり重なっていって。NUMBER GIRLやブッチャーズ(bloodthirsty butchers)、toddleなどをやってきたなかでも、飛び込んだことないような環境だったんで。自分のキャリアにおいても本当に誇りになるようなことをさせてもらっているなって。結構いろいろ経験してきたと思ってたんですけど、まだまだ世界は広いし、経験していないこともたくさんあるから、もっと頑張らなきゃいけないなって思いました。
ーーでは最後に、12月22日の横浜アリーナ公演に向かって、今どんなことを考えていますか。
田渕:寂しいですね。活動休止に向かって1本ずつライブの本数が減っていくわけじゃないですか。毎回セットリストが違うから、曲によっては「人前で演奏するのは今日が最後じゃないかな」って思いながら演奏するものもあったりするので。1本1本をすごく大事にしたいと思っています。
■リリース情報
PEDRO 3rd AL『後日改めて伺います』
2021年11月17日(水)リリース
初回盤(AL+Blu-ray+2LIVE CD+PHOTOBOOK/BOX仕様)¥11,000税込
映像付通常盤(AL+DVD)¥6,600税込
通常盤(CD ONLY)¥3,300税込
<収録内容>
CD1 [後日改めて伺います]
01 人
02 魔法
03 吸って、吐いて
04 ぶきっちょ
05 死ぬ時も笑ってたいのよ
06 安眠
07 いっそ僕の知らない世界の道端でのたれ死んでください
08 万々歳
09 おバカね
10 雪の街
CD2〜3 [LIVE CD]
2021.09.07 『SENTIMENTAL POOLSIDE TOUR』Zepp DiverCity
東京
愛してるベイベー
猫背矯正中
Dickins
GALILEO
無問題
日常
おちこぼれブルース
EDGE OF NINETEEN
SKYFISH GIRL
pistol in my hand
乾杯
夏
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感傷謳歌
-ENCORE-
うた
NIGHT NIGHT