橘慶太の「composer’s session」:TRILL DYNASTY

w-inds. 橘慶太×TRILL DYNASTY対談【前編】 ヒップホップ文化への憧れから始まった“全米1位”トラックメイカーの歩み

1日18時間のトラック制作の裏には不安な思いも

橘:すごい……。インスタのDMで自分のトラックを送りまくったという話も以前の記事で読んだのですが、それもすごいエピソードですよね。

TRILL DYNASTY:でもそれはその時代に合ったただの手段でしかなくて。根本にあるのは10年前も20年前も変わらない熱いハートを持っているかだと思うんです。がんばっていても結果が出ないという人もいるかもしれないけど、その人は多分本気じゃないんだと思うんですよね。

橘:DMでトラックを送り始めたのって作り始めてどれぐらいの話ですか?

TRILL DYNASTY:半年くらいじゃないですか。

橘:自分の話で言うと、半年のレベルではなかなかトラックに自信が持てていなかった印象があって。当時はどうだったんですか?

TRILL DYNASTY:何なら今も僕は自信ないですよ。毎日作曲しているけど、今も音楽理論のおの字もわかっていないし、キーボードにドレミのシールを貼ってやっているくらいなので。海外からはかなりオファーもきてるんですけど、日本の中ではまだ肩書きが一人歩きしている感覚。スキルがまだ追いついてない。恐怖と不安の中で毎日作曲していますね。

橘:一緒に制作している海外の方々の中にコードがわからない人はいたりするんですか?

TRILL DYNASTY:いや、多分いないと思います。チャーチでオルガンをやっていたり、もともとピアノが弾けたり、そういう人たちの中に入りたいと言って仲間に入れてもらっているので。技術に対しての今までの自分の雑さは自分が悪いことなのでそれはそれとしてやっていかないといけない部分ですけど、高いところにいると意識も高くなってそこに追いつこうとする向上心が出ています。

橘:環境は大切ですよね。素晴らしい人たちが周囲にいると自分も引っ張られていくというのはありますよね。

TRILL DYNASTY:ありますね。EST Geeというラッパーに提供した「In Town」という曲でもまた盾が1枚もらえるみたいですけど、そういうのも結局1人でできることじゃなくて。いろんな支えがあって、そういったアーティストまで僕のビート、みんなで作ったビートが届く。僕の力で何か成し遂げたわけではなくて。1位に対しての嬉しさがないっていうのはそういったことなんですよね。

EST Gee - In Town (feat. Lil Durk) [Official Music Video]

橘:そうなると逆にどういったところで喜びを感じられるんですかね?

TRILL DYNASTY:そもそも自分がまだ完璧じゃないからなんですよ。本当にピアノが弾けるようになって全て理解した上で作曲ができるようになって、その上で成果を出せたら嬉しくなるのかもしれない。今僕がやっているやり方は行き当たりばったりなので。他に予定がなければ1日18時間くらい音楽をやっていて。その中でも3曲くらいしかできない日もある。一端の作曲家として作曲をできるようになった上での結果だったら非常に喜ばしいことだと思います。ただ僕は奇跡の連続なので。

橘:そういう自己分析なんですね。

TRILL DYNASTY:はい。だからこれは実力ではないんですよ。

橘:かっこいいです。すごく地に足ついてるというか。1日18時間トラックを作ってるというのも衝撃なんですけど。

TRILL DYNASTY:少し前まで働きながら二足のわらじで制作してきましたけど、正直音楽に携われる時間が8時間だとしたら他の仕事をやっていても8時間は時間を確保できるんですよ。でも今は仕事も辞めて音楽に専念することになった。もともと始めたのが遅い上に行き当たりばったりでやっている以上、ここからは時間で解決するしかないから時間を増やしている感じですね。

橘:寝る以外の時間、音楽を作っていることになりません?

TRILL DYNASTY:そうですね。もちろん外出する日もありますけど、それ以外は猫と遊ぶ以外はずっと音楽をやってたいというか。外出したとしても移動中や滞在先でも作ってますね。

橘:ノートパソコン1つで。

TRILL DYNASTY:そう。あと遠征は小さいミディキーボードを持っていきます。

橘:ステップ打ち(ステップレコーディング: MIDIキーボードなど演奏せずマウスを使ってMIDIノートを書き込んでいく方法)はあまりやらないんですか?

TRILL DYNASTY:頭の中に音楽のイメージが一切ないんです。頭の中にこういう音楽を作りたいというイメージがあればクリックだけでも制作できると思うんですけど、僕はキーボードと交わって初めて音楽ができるから。

橘:鳴っている音を実際に聞きたいということなんですね。

TRILL DYNASTY:そうなんです。今はまだ非効率な作り方しかできないんですよ。

橘:今後は打ち込みながら作れるようになりたいという思いもあるんですか?

TRILL DYNASTY:いや、それはやろうとも思っていないですね。作曲を始めたのは兄弟たちからの後押しもあったけど、これまであまり音楽に関わってこなかった人間が鍵盤を弾いている姿がすごく渋くて、それに憧れたというのもあって。僕はそこを目指しているので、マウスと画面だけあればできるという音楽制作に魅力は感じていないです。もちろんミディキーボードで作曲できないからクリックで作るということもしたくなくて。どちらもできるようになってから使うというのはアリだと思います。

橘:サウンドからもピアノ、鍵盤にこだわっているなというのは感じていました。クオンタイズ(ある音符のタイミングに揃える機能)もあまり使わないですよね?

TRILL DYNASTY:何もしないです。その場で鍵盤に触った音だけをいかします。

橘:ですよね。ちょっとヨレが気になりすぎる時とかは撮り直すんですか?

TRILL DYNASTY:撮り直します。

橘:トラックを聴いたときにグルーヴにもすごく強いこだわりを感じていて。やっぱりそういうことなんですね。

TRILL DYNASTY:他の音楽家の方に対して失礼なのもわかってるんですけど、クリックで制作するのは僕の環境だと逃げになるので、それだったら作曲もやめます。鍵盤を弾ける人に対しての憧れとリスペクトがあるから鍵盤で作りたいし、もっと弾けるようになりたいんです。

橘:コード感は、弾いて気持ちいい音を使っているということなんですか?

TRILL DYNASTY:そうです。いずれはジャズピアニストみたいにおしゃれでかっこいいコードも弾いてみたいと思っています。

後編へ続く)

連載バックナンバー

・【第7回】Hiroki
・【第6回】Night Tempo
・【第5回】岡崎体育
・【第4回】NONA REEVES 西寺郷太
・【第3回】Yaffle(小島裕規)
・【第2回】KREVA
・【第1回】m-flo ☆Taku Takahashi

■w-inds.リリース情報
「Little」
2021年10月22日(金)配信
https://lnk.to/Little

アルバム先行配信曲「Strip」
配信:https://lnk.to/_Strip
MV:https://youtu.be/nYZKoSEhy40

2021年11月24日(水)発売
ニューアルバム
『20XX “We are”』
初回限定盤【CD+Blu-ray】¥4,400(税込)
初回限定盤【CD+DVD】¥4,000(税込)
通常盤【CD only】¥2,750(税込)
Special Box盤【CD+Blu-ray+PHOTOBOOK+『20XX "THE BEST"INSTRUMENTAL』CD】¥8,800(税込)
※ポニーキャニオン特設販売サイト限定商品(受付終了)
Special Box盤【CD+DVD+PHOTOBOOK+『20XX "THE BEST"INSTRUMENTAL』CD】¥7,700(税込)
※ポニーキャニオン特設販売サイト限定商品(受付終了)
ポニーキャニオン特設販売サイト https://ps.ponycanyon.co.jp/w-inds/20xxweare/

【収録内容】
<CD>
01. Strip
02. EXIT
03. With You
04. Show Me Your Love
05. Little
06. Beautiful Now
07. The Christmas Song
08. Distance
09. Get Down(20XX version) 
10. DoU(20XX version) 

All songs produced by Keita Tachibana

<Blu-ray, DVD>
01.Strip Music Video
02.Document of 20XX ”We are”

予約はこちら:lnk.to/20xxweare
ポニーキャニオン特設サイト:https://ps.ponycanyon.co.jp/w-inds/20xxweare/

■w-inds.ライブ情報
『w-inds. Online Show「20XX”We are”」』
2021年12月29日(水)19:30開場/20:00開演
※アーカイブ(見逃し)配信:あり

▼チケット代金
●ファンクラブ限定チケット(ライブ&アフタートーク&画像特典)¥3,500(税込)
※ファンクラブ限定チケットはFanStream/StreamPassのみでの取扱。「w-inds.day」会員のみ購入可能。

●一般チケット(ライブのみ) ¥3,500(税込)
※購入にあたりシステム利用料・決済手数料あり。

▼アーカイブ配信
2021年12月30日(木)〜2022年1月10日(月)予定

▼配信メディア・チケット購入先
・FanStream/StreamPass(※ファンクラブ限定チケット)
・ローチケ LIVE STREAMING
・PIA LIVE STREAM
・LINE LIVE VIEWING

▼チケット販売期間
2021年11月上旬予定。詳細決まり次第発表。

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