Siip、愛と失望のアンビバレントな感情を描く8篇の物語 1stアルバムで投げかける“未来を見据えたヒント”とは？
また、すでにネット上で様々な考察が飛び交う中、YouTubeのコメント上で時折語られる「Siipとは何者か？」という実在論にも触れなければならないだろう。
Spotifyなどで「この曲を聴いている人はこの曲も好き」という楽曲提案アルゴリズム（ビッグデータから個々へカスタマイズされたリコメンド機能）から、「Mrs. GREEN APPLE」「大森元貴」などのアーティスト名が推察され、SNSなどでも書き込まれている。しかし、Siip本人からは一切コメントを出すことはない。その姿勢から、あくまでSiipは作品主義であることが伝わってくる。
そこでふと思った。平野啓一郎による書籍『私とは何か 「個人」から「分人」へ』にて、対人関係ごとの様々なコミュニケーションを通じて、自分の中に形成されてゆくパターンとしての人格を“分人”と定義したことだ。
“唯一無二の本当の自分”を求められてきた昭和～平成という時代性。しかし、インターネット上に生まれた様々なSNSというコミュニティや、昨今拡がりつつあるバーチャルな拡張世界であるメタバース（仮想空間サービスを指す言葉で宇宙や世界を意味するuniverseと、超越したといった意味を持つ接頭語metaを組み合わせた造語）において、令和時代、表現者が複数の顔を持ち、表現ごとに顔を変えることの先駆けとなるかもしれないアプローチだ。
しかしながら、それはすべて本当の自分による表現であることには間違いなく、インターネットが普及した社会の変化が、Siipという人格＝“分人”という在り方を生み出したのだろう。
そんななか、YouTubeでのSiip公式アカウントにて『Siip - The first saga ～Cuz I & 2〜』とタイトルされた映像が、ハロウィン前夜である本日10月30日22時から、プレミア公開される。渋谷にペイントされた羊アイコンのストリート・グラフィティアート横にあるQRコードを読み込むと、「I’M WAITING HERE THE PLACE ONLY YOU KNOW.」とだけメッセージが残されていたが、もしかするとSiip初の限定ライブが、現在のメタバースであるYouTube上で一期一会で観られるのかもしれない。
神話の世界に生きるSiipが、なぜ現世に降り立ちメッセージを問うのか。その答えを導くには、音源作品はもちろん、完全生産限定BOXに特典として収録された8枚の謎めいたタロットカード、BOX SETに納められた作品とリンクするキャンドルやステンシル、ファッションアイテム、加えてMVなどの立体的なアプローチによって、ヒントが得られるかもしれない。
いずれにしても、まずはストリーミングで気軽にアクセスできる1stアルバム『Siip』を聴いてみてほしい。人類への失望と、それでも諦めきれない愛と期待というアンビバレントな感情ーーその両面がSiipの本質であることは間違いない。
人はどこへ向かっていくのか。これまでの歴史を振り返ってもその答えは見つかるはずもない。いつの時代であったとしても、まるで試されているかのような人生の無常観。ゆえに人は救いを求め続けるが、物質主義の行きついた現代における救いとは何なのか。相反する感情を、Siipは音楽を原動力に問いかけ続ける。
時代を写し出す優れたポップミュージックには、未来を見据えたヒントが紛れている。パンデミックにより混沌が続く2021年、音楽というアートフォームによって、羅針盤のごとく預言者のように誘う謎めいた音楽革命家・Siipの表現に注目すべきだ。
■リリース情報
Siip 1st アルバム『Siip』
2021年10月27日(水)発売
・完全生産限定BOX＜LPサイズ＞ ¥13,200（税込）
（CD＋Blu-ray＋タロットカード8枚セット＋GOODS）
※GOODS内容
①Large size Siip stencil sheet ②Candle & holder by “Cuz I” ③Siip style long sleeves wear
・通常盤（CD＋Blu-ray＋タロットカード8枚セット）¥3,850（税込）
＜CD収録内容＞
1. saga
2. πανσπερμία
3. Cuz I
4. 2
5. Walhalla
6. 来世でも
7. オドレテル
8. scenario
＜Blu-ray収録内容＞
「Cuz I」「2」「πανσπερμία」 MUSIC VIDEO
