【特集】10代アーティストのリアル ~Teenage Dream~

崎山蒼志による寄稿文 幼少期の記憶から遡る「創作すること、表現すること、音楽をする喜び」

 2018年、弱冠15歳という若さで多くの音楽ファン、アーティストたちから羨望の眼差しを集めたシンガーソングライター・崎山蒼志。静岡県浜松市を中心にバンドで活動をしていた彼が、ギターの弾き語りでインターネット番組に出演。すでに成熟しているようにも感じられるオリジナリティ溢れる歌声やギターの演奏力、シンガーソングライターとしての作詞・作曲力といずれも高く評価され、時代を代表する表現者の一人となった。

 リアルサウンドの特集企画「10代アーティストのリアル ~Teenage Dream~」では、崎山蒼志による「創作すること、表現すること、音楽をする喜び」をテーマにした寄稿文を掲載。幼少期の記憶を遡りながら、彼の中に絶えず存在してきた“創作すること”や“表現すること”について改めて向き合ってもらった。(編集部)

幼少期から変わらぬ創作に対する喜び

 私は幼い頃から何かものを作ること、音楽を聴くこと、また音を鳴らすことが好きでした。順に具体的に記していきますと、何かものを作るというのは工作などです。小学校に上がると存在しないミュージシャンのジャケットを描いたり、後に自分が曲を作り出した時も、その曲たちのあたかも初回生産限定盤であるようなスペシャルボックス的なものを空箱から作り、そこにさらに自分なりに細かな装飾をしたり付随品をまた作ったりして遊んでいました。漫画を描いたりするのも好きでした。創作することが幼い頃から変わらない、ひとつの喜びなのだと思います。

 次に音楽を聴くこと、これは両親からの影響が大きいのですが、テレビで流れていた音楽にも敏感に反応していました。4歳の時、母と見ていたミュージックビデオの影響でギターを始めたので、今の私の原点はその幼少期の音楽体験にあるでしょう。最後に音を鳴らすというのは、ものを叩いて打楽器的に鳴らすことで、ボウルやダンボールなんかを打楽器に見立て、よく叩いていました。“リズム”に関心があり、また魅せられているのだと思います。それも今も変わりません。

 何かものを作ること、音楽を聴くこと、また音を鳴らすこと、幼少期から続く3つの好きに通底するのはやはり音楽で、今はその音楽に絞られましたが、幼少期からやっていることはさほど変わっていない気もします。作曲自体は、作曲とは言えない程度でしたが10歳ほどからなんとなく始めました。理由としては、やはり創作が好きなので、自分も作ってみたいと思ったことと、私自身ギター教室に通っていたのですがそこであらゆる人の曲をコピーする中で、よく出てくる和音進行の上でなんとなく自分でメロディをつけ始めたことにあります。でもそれはまだ即興的なものでした。

 歌詞を書き、いつもオリジナルに近い形で演奏できる曲を作り始めたのは12歳の頃でした。ギター教室の先生が「詞も書いてみたらいい」と助言をくれたことがきっかけでした。その時ちょうどギター教室内でバンドを組んでいたのですが、そのバンドで初めて自分が作詞作曲した楽曲を人前で演奏した時の喜びが忘れられなくて、今もこうして曲を作り続け、演奏し続けている部分があると思います。教室近くの神社のお祭りでの発表会兼演奏だったのですが、コピーした曲を演奏するのとまた明らかに違う喜びや感触がありました。今もはっきりと覚えています。

日記であり、発散であり、拠り所となった音楽

 その後同じバンドのオリジナル曲で駄目元で応募した10代限定オーディションで、バンド3次審査までいけたことがモチベーションの向上に繋がりました。今まで好きでやってきたことが評価していただけたことで、自信がついたと言いますか、もしかしたら音楽を制作して暮らせる将来があるのではと希望が芽生えました。ですがそう上手くはいかず、挫折も感じながら学校生活の傍ら音楽活動をしていました。そんな中でも当時、中学時代の私にとって作曲という行為は音楽活動という感じではなくて、むしろ日記のような感覚でした。ギターを持ち口ずさんでいると、その時思っていたこと、感じていたこと、中学での常日頃の閉塞感や不安などが言葉として、メロディになってするすると出てきました。上手く言い表せない感覚すら、音楽となって出切るような気がしました。日記であり、発散であり、拠り所だったのだと思います。読んでいた小説などにも影響を受け、歌詞内での空想と現実が入り混じったような風景描写にもハマっていました。作詞や作曲は、自分の色んなアイデアを出すフィールドでもあったのだと思います。勿論今も作曲時の変わらない部分は多々あるのですが、実際に聴いてくださる方がたくさん増えたことや、今聴いている音楽の影響や、自己分析によって今の方が曲について深く考えるようになったり、まずこういう音楽をやりたいと頭の中で一旦提示して作ることも増えました。

関連記事