なお、「napori」、「YOKAZE」はともにリリースから1年数カ月でストリーミング累計再生数1億回を突破（※2、3）。「不可幸力」のヒットにより収録されているアルバム自体に注目が集まったことから“見つかった”形となり、1億回突破後にはテレビCMにも起用された「napori」、「THE FIRST TAKE」出演で話題になったあと、地上派音楽番組でも披露したことで一層注目を集めた「YOKAZE」と経路は異なるが、いずれも楽曲自体のクオリティが認められさらに広がった形となる。

　ダンス動画に使われるようなアップテンポな曲だけでなく、こうしたミディアムテンポの楽曲が続けてヒットしているのはなぜか。それは、チルな曲調による穏やかで心地よくも生活感漂う空気が、自身の作成した動画をおしゃれに見せたいというTikTokユーザーの需要と噛み合ったからとも考えられるだろうし、コロナ禍以降の人々の心象とマッチしたからとも考えられるだろう。しかしこうして後から考察することはできても、どこから火がついて何がヒットするのかは分からないのが実際のところ。その辺りを楽しみながら、TikTok起点の“独自のヒットソング”が独自どころか普遍といえるまでに広がっていく過程を引き続き見ていきたい。

※1　https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/104196/2
※2　https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/101946
※3　https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/102163