『海と真珠』特別対談

JUNNA×梶浦由記「海と真珠」対談 “新しい歌の表情”にチャレンジした刺激的な制作を語り合う

 JUNNAが約2年ぶり、5枚目となるシングル『海と真珠』を10月6日にリリースした。TVアニメ『海賊王女』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマである、この表題曲のプロデュースを務めたのは、梶浦由記。2人にとって初のタッグ制作となっており、眼前に広がる大海原のような雄大なメロディの上を、JUNNAの力強く大らかな歌声が泳いでいく。梶浦の手腕で、ソロシンガーとしてのJUNNAの新しい表情が存分に引き出されているが、この楽曲アイデアはどのようなところから浮かび、どのようにレコーディングが進んでいったのだろうか。今回は、そんなJUNNAと梶浦の対談が実現。お互いの印象から、様々なシナジーを生み出した制作過程、そして21歳を目前に控えるJUNNAの素直な心境まで、たっぷりと語り合った。(編集部)

「挑戦したことないような曲が歌えたらと期待していた」(JUNNA)

ーー梶浦さんとJUNNAさんはもともと面識はあったんですか?

梶浦由記(以下、梶浦):今回のお話をいただくまではほとんどなくて。確か、『犬フェス!』(2019年10月開催の『フライングドッグ10周年記念LIVE‐犬フェス!‐』)のときにちょっとだけ……。

JUNNA:そうですね。そこで一度ご挨拶させていただいて。

梶浦:JUNNAさんはね、やっぱりワルキューレ(TVアニメ『マクロスΔ』の劇中音楽ユニット。JUNNAはエースボーカルである美雲・ギンヌメールの歌唱を担当)さんの印象が強くて。今回のお話をいただいてから改めてソロの音源を聴かせてもらったんですけど、正直すごくマニアックで(笑)、「こんな曲も歌っているんだ!」とびっくりしたんですよ。音楽的に非常に凝った、一筋縄ではいかない曲がたくさんありますよね。

JUNNA:あははは。確かに一筋縄ではいかない曲が多いです。

梶浦:しかも、そういった楽曲をめちゃくちゃしっかり歌いこなしているのが、かなり衝撃的だったんです。だから私が曲を書かせていただくにあたっては、あまり明るすぎる曲はいかんのではないかと、初めに考えてこんでしまったくらいで。

ーーJUNNAさんは梶浦さんに対してどんな印象を持っていましたか?

JUNNA:ワルキューレに参加したことをきっかけにアニメを観ることが多くなったんです。いろんな作品で梶浦さんのお名前を目にすることが多くて。梶浦さんの楽曲はどれもパッと聴いただけで「あ、梶浦さんだ!」ってわかる強烈な個性があって、どこか異国感に溢れた感じがあったり、今までの私があまり触れたことのないような音楽ばかりなので、いつかご一緒できたらいいなと思っていたんです。

ーーその念願が今回叶ったわけですね。

JUNNA:はい! 『海賊王女』のオープニングテーマを歌わせていただけることになったのと同時に、今回は梶浦さんに曲を書いていただけると知ったときは本当に嬉しかったです。海をテーマにした冒険に出るような作品なので、明るい希望に溢れた曲が歌えるのかなってワクワクする気持ちもありました。私は今まで、その作品の業を背負うような歌を多く歌ってきているので(笑)。

ーー(笑)。梶浦さんに新しい表情を引き出してもらえるかもしれないという期待が膨らんだんでしょうね。

JUNNA:まさにそうですね。パーッと開けた曲、今まで挑戦したことないような曲が歌えたらいいなって、ものすごく期待していました。

梶浦:実を言うと、この「海と真珠」の前に、もうちょっと暗めの曲を書いていたんですよ。さっきも言った通り、これまでのJUNNAさんのイメージからすると、「スコーンと抜けた明るい曲を歌ってもらうのはどうなんだろう?」と思ってしまったところがあって。『海賊王女』は海の上を進んでいく冒険作品ですけど、必ずしも明るいだけの作品でもないので、最初はいろんな可能性を探っていましたね。結果的にはプロデューサーから「明るくていいですよ」と言っていただいて今の形になったんですけど。

ーー楽曲を聴いたときはどんな印象を持ちましたか?

JUNNA:めちゃめちゃ壮大だし、2、3回聴いたら全部歌えるくらい強いメロディを持っている曲だなってすごく感動しました。同時に、「これを私が歌うんだな……」「歌えるかな……」っていう不安も大きくなっていったんですけど(笑)。

JUNNA 「海と真珠」Music Video (short ver.)

「グルーヴがいい人はそれだけで音楽を作り出せる」(梶浦)

ーー歌に乗せる表現としてはどんなイメージがありました?

JUNNA:明るさはもちろんありますけど、その中に力強さもしっかり伝えたいと思っていたので、イメージを膨らませてレコーディングに臨みました。実際に現場で梶浦さんからいろいろディレクションをいただいたことで、さらに変化していったんです。

梶浦:私も曲を作りながら、ある程度ボーカルのイメージを思い浮かべてはいましたけど、JUNNAさんとは今回が初めてのお仕事でしたし、やっぱり現場で歌ってもらわないとわからないこともありますからね。そのあたりはやり取りしながら録っていった感じです。ただ、技量的にはもう想像通り、何も問題なかったです。歌録りもびっくりするくらい速かったですし。

JUNNA:ありがとうございます!

梶浦:JUNNAさんはリズム感がとにかくいい。結局のところ、歌で大事なのはリズム感みたいなところがあると思うんですよ。バラードであっても、テンポの速い曲であっても、グルーヴがいい人はそれだけでひとつの音楽を作り出せてしまうもの。JUNNAさんはそこが本当にお上手なんですよね。バックのバンドの音をしっかり聴きながら、最初からいいグルーヴで攻めてきたので、私としてはもう「キタキタキター!」みたいな感じで(笑)。歌い始めの瞬間から、ちゃんとJUNNAさんの曲になったなって思いました。

JUNNA:私はレコーディングのとき、クリックを聴きながら歌うのではなく、後ろのサウンドをしっかり感じながら歌うほうが好きなんです。今回もすごくやりやすい環境で歌わせていただけたと思います。

ーー梶浦さんがディレクションしたのはどのあたりなんですか?

梶浦:そもそも私はあまりディレクションするタイプではないんです。今回も「ここをもうちょっとゆっくり歌ってみませんか?」とか、「この言葉がより聴こえるように歌ってみませんか?」とか、少し提案させていただいただけでした。それに対してJUNNAさんは「はい、わかりました」って、すぐ反応してくださる。打てば響く感じがすごかったですよ。こちらからの提案に対して、すぐにはできない方もいらっしゃいますからね。

ーー素人感覚ですけど、梶浦さんの曲を歌いこなすのって決して簡単ではないと思うんです。

梶浦:私からするとそんなに難しい曲ではないつもりなんですけど、聴いた人からは難しいと言われることは確かに多いですね。

JUNNA:私はそこまで難しいとは感じませんでした。それよりも表現の仕方について、すごく新鮮さを感じながら歌うことができた気がします。私が今まで歌ってきたアップテンポな曲は、言葉一つひとつを切って強さを出していくことが多かったんです。今作は言葉を繋げるようにフレーズを大切に歌うことを意識しました。その違いに最初は少し戸惑いもありましたけど、すごく気持ちよく歌えるようになったんです。梶浦さんはディレクションをしてくださるとき、実際にちょっと歌ってくださることがあって、それがすごくわかりやすかったです。

梶浦:(恥ずかしそうに)ふふふ。自分ではあまり歌ってる記憶がないんですけどね(笑)。

JUNNA:言葉だけでは私がすぐに理解できないことも、歌っていただくとすぐ理解できるからとても有り難かったです。具体的に言うと、冒頭の〈始まりの海は広く眩しくて〉のところは最初、言葉を切ってちょっと暗めなトーンで歌っていたんです。でも、梶浦さんが実際に歌ってくださったことで、明るい世界観がパッと広がっていく歌い方ができたと思います。

梶浦:確かにそういう箇所はいくつかあったかもしれないですね。私の曲の場合、アップテンポではあってもメロディ的にはレガート(高さの異なる連続する2つの音を途切れさせず滑らかに続けて演奏すること)で、ロングトーンになるものが多いんですよ。そこは言葉を繋げるように歌いつつ、より響かせたい言葉にちょっと“泣き”を入れるようにしたりとか、そういうことも必要になるかなって。でも、基本的にはJUNNAさんが持ってきてくれた歌い方がしっかりハマっていましたからね。私が口を出して大改編したということではなく、ところどころで少しフォローアップしたっていうことだと思いますよ。

JUNNA:本当にすごく刺激的なレコーディングでした。この「海と真珠」はすでにライブで披露させていただいたんですけど、ファンの方からの反応もすごくいいので嬉しいです。

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