9mm Parabellum Bulletは人間の生命力を叩き起こす 無駄なものを徹底的にそぎ落とした熱狂のステージ

 「ここまで4曲、アルバムの9曲目ってわかった人いるかな」と菅原。9にちなんだセットリストという言っちゃ悪いが荒唐無稽なアイデアを今の表現力と力技で成立させてしまう。と、なると続きもアルバムの9曲目で構成されていくのだが、彼らのオリジナルアルバムはまだ8枚。そこで9thシングル曲「サクリファイス」を挟む。速度とインダストリアル感を増して爆走し、途中にはポップさのある「Starlight」や、ファンクからクラシカルなテイストまで盛り込んだ「悪いクスリ」まで違和感なく繋いでいくことにも驚愕した。かみじょうちひろ(Dr)の裏打ちのハイハットからスタートした「Butterfly Effect」の本編はマスロック調の精緻な構成力、一転、ギターオーケストレーションの極地とも言える『BABEL』収録曲「ホワイトアウト」の極寒の地や暴風を思わせる壮絶なアンサンブルを披露。千変万化な映画の世界を疾走しているようで、心地よい疲れに包まれる。

 いい意味で無茶なセットリストなのだが、ここからさらに挑戦的な展開へ。去年、今年開催できなかった夏フェスを疑似体験してもらおうという、入門編的な9曲のメドレー。ここまでの選曲が幾分マニアックだったからという理由もあるのだが、9曲のサビやAメロ、時に間奏のおいしいところを11分に凝縮するという、異様な集中力。「太陽が欲しいだけ」に始まり、比較的近いテンション、勇壮なニュアンスで繋ぎながら、最後の「Living Dying Message」に至るタイミングでは、距離と速さの限界まで走った車のエンジンが爆発寸前まで燃焼するような迫力を見せつけた。ここまでくると漫画の世界である。

 フロアもモニターの向こうも大いに笑顔になれたあとはコロナ禍における重苦しさを水の底にいるような体感と言葉で表現した新曲「泡沫」を披露。高速BPMから途中で半分以下にテンポダウンする構成が新鮮だ。終盤、ギリギリまでステージ両袖にせり出した花道でソロを弾き、時にギターから手を離し踊る滝に釘付けになった「Mantra」では古来からの祭りーー厄疫や穢れを神輿に吸収させて練り歩く熱狂や、神聖な火の光で魂を浄化する花火など、生きるための人間の祝祭を想起せずにいられなかった。ラストこそ、それが言語化された「生命のワルツ」ではあったが、いまの9mmは以前にも増して、人間の生命力を叩き起こすライブを体現している。思わず受け手も限界に挑戦したくなる最高のブースター。しばらく彼らのライブを体感していない人、まだ見たことのない人に試してほしい日常の起爆剤がそこにあった。

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