adieu、初ワンマン『adieu First Live 2021 -à plus- 』レポ 新たな一歩への充実感溢れるステージに
adieuの初ワンマンライブ『adieu First Live 2021 -à plus- 』が、8月25日にZepp DiverCity (TOKYO)を会場に行われた。感染対策により言葉を発する人こそいなかったが、会場にはそんなadieuの晴れ姿を目撃しようとするファンの静かな熱気が満ちていた。
ステージ上では、BGMをバックに映像が映し出され(『Voyage to the Planet of Prehistoric Women: Comic』という映画だったよう)、さながらおしゃれなカフェやバーのような雰囲気。開演前のアナウンスもadieu本人が行うなど工夫が凝らされ、この日のために細やかな準備をしてきたことが伝わる。
オープニングは「私から世界へ宛てた手紙(This is my letter to the World)」という詩の朗読から始まった。子犬や花や木々に「LOVE」「MESSAGE」などの単語が散りばめられたコラージュ映像とともに静かな言葉が紡ぎ出される。暗転ののち、ひとりステージに登場すると1曲目に選んだのは「春の羅針」。次第に明るくなるスポットライトの下、たゆたうようなメロディと透明感のある歌声が空間を満たしていく。この日の衣装はたっぷりとしたフリルの付いたブラウスにドレッシーなパンツスタイル。スタンドマイクに手を添え、まっすぐに立つ姿は凛として艶やかだ。
2曲目の「花は揺れる」でバンドが登場。これまで共に楽曲制作を行ってきたキーボードのYaffleをはじめとした布陣が、adieuの歌を背後からそっと支える。続いてハイトーンボイスが美しく響く「天気」へ。シューゲイザーサウンドめいた音の重なりの中、時折、音楽に身をまかせるように体を揺らしながら歌う様は、気負いなくリラックスして見えた。
MCでは、「こんばんは、adieuです!」と、少しはにかんだ表情で挨拶をすると、集まった観客へ向け思いを伝えた。
「今こんな大変な毎日が続いて、ここに足を運ぶのもためらいや不安があったと思いますが、それぞれの思いを抱えて来てくださったこと、本当にうれしく思っています。その気持ちに歌で応えて、みんなと心を繋げていけたらいいなと思います。いい時間にしましょう!」
そして、軽快なギターのイントロで始まったのは「天使」。adieuの楽曲の中でも、とりわけ心が浮き立つようなお茶目な1曲で、会場の空気を一変させる。〈頑張ろうぜ〉〈もう大丈夫〉とポジティブな歌詞を発するたびに、こちらの心もふわりと軽くなるようだ。群青のライトの中で伸びやかに声を響かせた「蒼」、リリカルなサウンドが胸に迫る「強がり」と続き、アコースティックな調べにのせて始まる「愛って」へ。一つひとつの言葉を愛おしそうに紡ぐadieuの表情に、当たり前の日常がある幸せを改めて感じる。
「楽しいですか?」と手を振って客席に問いながら、弾ける笑顔を見せるadieu。自身が最も楽しそうだが、今日を迎えるまで不安だったと明かす。だからこそ「ここにいる幸せをかみしめている」と話した後、始まったのは「シンクロナイズ」。「ライブで一番やってみたかった曲」という紹介も納得のバンドサウンドが会場を支配する。歌い終えたadieuは「ライブやってるなと感じた」と満足そうだ。
adieuとしての始まりの1曲「ナラタージュ」の歌唱前には、楽曲との出会いを振り返る場面も。同名映画の主題歌として野田洋次郎が作詞・作曲した本作に歌を吹き込むことになった時、彼女はまだ16歳だったという。初めて聴いた瞬間から衝撃を受け、涙で頬がびしょびしょになったそうだ。盟友のYaffleが奏でるピアノが先導するシンプルなメロディに、優しく丁寧に声をのせていくadieu。その表情にはこれまでの約4年の月日への思いがあふれていた。本編最後は失恋の痛みを歌った「ダリア」。背後に色とりどりの花の写真が映し出される中、切々と歌いあげる姿に胸が締め付けられた。