センチミリメンタル、情感豊かな楽曲が生み出す“想いを伝える力” 初のツアー締めくくったファイナル公演をレポート
ライブもそろそろ終盤、ここで最新シングル曲「青春の演舞」を歌い始め、一気にアクセル全開。ラストスパートへ向けて、ステージのボルテージが高まっていく。すると曲中で温詞が「拍手!」とオーディエンスを煽り始めた。感染防止対策のため観客は声を出せない状況だが、この瞬間は会場一体となって大合唱が起きたような気がした。
畳みかけるようにして「キヅアト」へなだれ込む。演奏からスリリングな緊張感が伝わる。驚くべきは、終盤にかけて演奏のボリュームは大きくなってるはずだが、それに彼のボーカルがまったく負けていないところだ。歌詞の一言一句がすべて耳に届いてくる。
曲を終えると、温詞はしみじみと「やっぱりライブっていいね」とつぶやいた。実はこのツアーの前に喉を壊していたという。ライブ直前まで咳き込んでいて、声が出なくなることもあったのだとか。そして温詞はこう続けた。
「ツアー直前に喉を壊して声が出せなくなって、本当にギリギリまで『ボーカルなんてやらなきゃ良かった』とか『歌なんてやめたい』なんて追い詰められるんですけど、みんなの顔を見てたら『ああ、やっていて良かった』と思ったんです。『ボーカルやっていて良かったな、音楽やっていて良かったな』って。みんなにはそれだけの力があります、いつもありがとうございます」
「いろんな気持ちがぐるぐるしています。それは、これから先もずっとそうだと思います。みんなと同じように小さいことに悩んで生きています。でもだからこそ、みんなの悲しみや苦しみ、未練や後悔に寄り添って、たまには眩しい未来ではなく後ろを振り返りながら、でも気が向いたら前を向いてみんなと一緒に歩いて行けるような、そんなアーティストでありたいと思ってます」
そして本編ラストは、本人曰く“後ろ向きな、でも前向きな1曲”だという「僕らだけの主題歌」。そしてアンコールでは「nag」と「結言」を歌唱した。力を振り絞るようにして歌う温詞。そして、彼を後ろからサポートするバンドメンバーたちが、この日一番の生き生きとした表情を見せていたように思う。
センチミリメンタルが歌う、後ろ向きな、でも前向きな世界。そんな彼の音楽に、会場からは最後まで惜しみない拍手が送られていた。