flumpool 独立を機に振り返る ドラスティックなバンドの歩みとこれからの活動への期待

 このように華々しくデビューした一方、そもそも上京が決まる直前まではバンドを諦める選択も考えていたこと、デビュー後怒涛の日々を送るも、「自分たちの足で一歩一歩進んでこられた感覚がなかった」ことが数年後のインタビューでは語られている(※2)。その後、「君に届け」(映画『君に届け』主題歌)、「証」(『第78回NHK全国学校音楽コンクール』中学校の部課題曲)、「夜は眠れるかい?」(映画&TVシリーズ『亜人』主題歌)など、後の代表曲といえる曲を発表していったflumpool。そうして活動を重ねるにつれて、4人それぞれが主体的にバンドに関わるようになり、ソングライティングの筆致にリアリティが滲み、バンドとしての結束力は増していった。特に演者のテンションがダイレクトに音に出るライブには、そういった変化が分かりやすく表れていたように思う。

 しかし、2017年12月のライブ終演後、山村が歌唱時機能性発声障害であることが判明。治療に専念するため、バンドは活動休止した。結果的に2019年1月には活動再開しているが、山村が一時歌えない状況になったということは、flumpoolがこのまま活動できなくなってしまう可能性も有り得たということ。そして今回の発表を踏まえると、彼らが独立を考え始めたのは活動再開後の2019年付近だ。これは推測に過ぎないが、もしかすると、“音楽を続けられなくなるかもしれない”という究極の状況にぶち当たったことが、今後の活動について改めて考えるきっかけになったのかもしれない。

 デビュー10周年直前の2017年、ファンへの感謝を込めた「とうとい」という曲が、リリースより先に全国ツアーで披露されたように、あるいは山村療養明けの活動再開が、バンドゆかりの地・天王寺公園でのゲリラライブからだったように、思えば、自分たちの音楽を丁寧に届けるためにはどんな方法がいいのかと考え、実行してきたバンドだった。

flumpool 「とうとい」MUSIC VIDEO

 また、2017年に俳優デビューし、現在はコメンテーターとして『めざまし8』(フジテレビ)にレギュラー出演するなど音楽以外にも活動の場を広げる山村、2019年7月にヤマモトシンタロウ(LEGO BIG MORL)とオンラインサロン「おとなり」を立ち上げた阪井、2018年3月以降はCho_Nansのメンバーとしても活動している尼川、SNSを通じて保護猫にまつわる情報を発信する小倉……と、それぞれがそれぞれに考え、積極的に動いている印象もある。その辺りを踏まえると、(大きな事務所には大きな事務所なりのメリットがもちろんあるが)急速な変化に柔軟に対応するため、決裁権を自分たちにより近い場所に置けるような、小回りの利く体制を彼らが望む気持ちも理解できる。新たなスタートを切ったflumpoolは私たちにどんな音楽を届けてくれるのだろうか。今後の活動に期待したい。

※1 https://www.oricon.co.jp/news/60411/full/
※2 https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/56575

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