『RAINBOW』インタビュー
DEZERT 千秋が詩人 谷川俊太郎に惹かれる理由 “言葉”との向き合い方を語る
今の僕は谷川俊太郎みたいな詩を書きたい
――ちなみに今回こういうテーマで話をしようと思ったのは、前に「最近詩集ばっかり読んでます」って言っていたのを『RAINBOW』を聴いて思い出したからで。昔から詩集は読むんですか?
千秋:時期によります。読む時はずっと読むし、読まない時は全く。谷川俊太郎、確か4冊ぐらい家にあったんですけど、さっき探したらこれだけ出てきました。
――『自選 谷川俊太郎詩集』、オーソドックスな一冊です。他の詩人はどうですか?
千秋:萩原朔太郎とか中原中也とか、わりと代表的な人の作品は読んでます。今あげた詩人は僕の中でダウナー系って呼んでるんですけど、その人たちの詩って自己満というか、それを読んでる自分がカッコいいみたいなところがあって。
――でも谷川俊太郎は違いますよね。
千秋:たぶんだけど、今の僕は谷川俊太郎みたいな詩を書きたいんですよ。ダウナー系の、オルタナティブな詩じゃなくて、もっと普遍的というか。ラングストン・ヒューズって知ってますか?
――アメリカの詩人ですね。
千秋:その人の「夢の番人」という有名な詩があって。それって哲学的だし、ちょっと宗教チックだと僕は思っていて。でも谷川俊太郎ってもっと人間とか世の中を俯瞰してるというか、世界の縮図みたいな詩で。かと思えば「お金を稼ぐために詩を書いてる」とか発言してたり、すごく人間的な一面あって。
――俗世に生きる人、という印象があります。雲の上とか山の中にいるイメージがない。
千秋:ちなみに前のアルバムの『black hole』で――気付いてる人もいたんですけど、わざと谷川俊太郎をオマージュした曲があるんですよ。「みぎて」って曲なんですけど。
――初耳ですね。
千秋:〈僕が昨日死んだのに〉っていう、自分の死をすごく俯瞰的に見てるフレーズがあって、それは谷川俊太郎の「ふくらはぎ」っていう詩のオマージュなんですよ。で、それに気付いてる人がファンの中にいて、それは嬉しかった反面、「でも俺って谷川俊太郎じゃないしな」って思ったりしたんですけど。それは置いておいて、普段詩を読まない人にも谷川俊太郎はオススメしますよ。僕もああいう歌詞が書きたい。
――具体的にはどういうところがオススメですか?
千秋:さっきも少し話しましたが、俗っぽいというか、生活感があるところ。中原中也ってちょっと儚げというか、アーティストなんですよ。
――ミュージシャンだったら中原中也に憧れる人が多いと思いますけど。
千秋:僕もそうでしたよ。でも、音楽を続けるってことは、これから何十曲も何百曲も作っていかなきゃいけないってことじゃないですか。若い頃は別にいいんですよ。闇が大好きだし、カート・コバーンみたいな感じはカッコいいし、闇の中に小さな光が一瞬だけ見えるようなものに惹かれる。けど、それだけじゃ生きていけないじゃないですか。ずっと続けられないって思っちゃう。そういう点で言うと、谷川俊太郎って僕の中では逆なんですよ。光の中に闇があるというか。生活があって、その中にちょっと闇がある。そこが魅力なんですよ。
――闇の中の光ではなく、光の中の闇だと。
千秋:そう。しかも他の詩人と違って、簡単な言葉使いの詩が多いし。
――全部ひらがなの詩もありますよね。
千秋:「歩くうた」や「死と炎」っていう詩が僕は好きです。音楽が好きで、歌詞をちゃんと読んでる人だったら好きなんじゃないかなって。あ、でも詩ってひとつだけ読んでもピンと来ないんですよ。なんでもいいから詩集を一冊手に入れて、それを読んでみると初めて面白さがわかるんで。みんな詩集を読んでみたらいいのにって思う。
自分の作品に活かそうと思って詩を読んでる感覚はない
――バンドを始めてから詩集を読むようになったんですか?
千秋:あ、ミュージシャンとして読んだことはないです。もともと僕、高校生の時はポエマーだったんですよ。mixiでポエムを書いちゃうような高校生だったので(笑)。
――それも初耳です(笑)。
千秋:憧れがあったんでしょうね、言葉で人の心を動かしたいっていう。小説も書いてみようと思ったことあるし(笑)。でもみんなもポエマーになりたいって思ったことあるでしょ?
――や、ないです(笑)。
千秋:そうなんだ。でも僕、自分の作品に活かそうと思って詩を読んでる感覚ではないです。自分が知らない言葉じゃ歌えない。
――借り物の言葉じゃ何も伝わらないでしょうね。
千秋:自分の人生で出会った言葉でしか書けないと思うから。あと、自分も含めてだけど、誰でも歌いたいことって最終的には同じところに行き着くはずなんですよ。そこにたどり着くまでのルートがそれぞれ違うだけ。だからこそ、自分の言葉で書くのが大事というか。
――その通りですね。
千秋:あと、言葉ってちゃんと自分の手で書くことが大事だなって思う。僕もよくiPhoneのメモに打ち込むんですけど、ノートにペンで文字を書いた方がいいんですよ。むしろノートに書かないと言葉が自分に浸透しないというか。
――じゃあ歌詞は普段からノートに書いてるんですか。
千秋:書いてますよ。この前、銀座の超有名な文具店まで行って、めちゃくちゃいいペンとその道の人なら唸るようないい手帳を買いました。
――そうやって形から入るところはヴィジュアル系っぽいですけど(笑)。
千秋:やっぱり銀座ですよ(笑)。でも、絶対書いた方がいいですよ。原稿ってパソコンで書いてますよね? でも言葉ってフィジカルを駆使して書いた方が絶対いいんですよ。このインタビューも手書きで書いてください(笑)。
――無理です(笑)。
千秋:それぐらい言葉って向き合うことが難しいなって思ってます。だからこれ以上、言葉の奴隷にならないように注意したいですね。
――ちなみに最近は誰かの詩集を読んだりしましたか?
千秋:最近読んで面白かったのは……『進撃の巨人』ですね。
――それは漫画です(笑)。
千秋:何回も離脱してたんですけど、このあいだ完結したんでコンプリートしました。なかなかいい本です(笑)。漫画もそうですけど、最近はスマホで小説とかも読めるじゃないですか。でも僕は未だにアナログ派です。次のページをめくる作業が大事というか。あとは付箋を貼ったり。
――付箋は読書の必須アイテムですね。
千秋:やっぱり貼りますよね。ただ、10代とかの若い人たちってデジタルが当たり前じゃないですか。下手したら、付箋って何? みたいな。ちゃんと言葉を脳みそにぶち込むには本を読んだり手書きしたりが必要な作業だと思いますけどね。
■リリース情報
『RAINBOW』
2021年7月21日(水)発売
<仕様>
初回限定盤【レイ盤】(CD2枚+DVD)DCCL-238〜240 ¥5,500(税込)
通常盤【ンボウ盤】 DCCL-241 ¥2,750(税込)
<収録曲(初回限定盤/通常盤共通)>
1.デザートの楽しいマーチ
2.Your Song
3.カメレオン
4.あなたのそばにいる
5.殺されちゃう
6.ミザリィレインボウ
7.脳みそが腐る
【初回限定盤特典】
特典DVD付
特典CD付:3曲ステム音源(Dr,Ba,Gt,Vo)収録予定
初回盤仕様ジャケットデザイン
トレーディングカードゲーム5枚入り(ランダム封入)
※トレーディングカードゲームの絵柄は選べません。
トレーディングカードゲーム名:DEZERTバトルカードvol.1〜はじまりの虹〜(全20種類)
【通常盤特典】
・トレーディングカードゲーム1枚入り(初回プレスのみ。ランダム封入)
※トレーディングカードゲームの絵柄は選べません。
・7パターンのカラーフィルム入り(初回プレスのみ)
※7パターンのカラーフィルムのうちランダムで1枚入る形で展開されます。
※カラーフィルムの色が異なるだけで、ジャケット絵柄含めその他の仕様はすべて共通です。
※店頭・WEBに関わらず、ご予約時にはフィルムの色指定は出来ませんのでご了承ください。
公式サイト:https://www.dezert.jp/