AKB48の軌跡を辿る 第4回:指原莉乃の覚醒、グループを去っていく1~2期生……世代交代が求められた転換期

総監督に就任・横山由依の「第2章が始まる」発言にびっくり

 2014年6月の『総選挙』では渡辺麻友が、指原莉乃をおさえて初めて1位を獲得。8月にはAKB48お得意の自虐ネタをまじえたイベント『AKB48グループ 東京ドームコンサート〜するなよ?するなよ?絶対卒業発表するなよ?〜』を開催。9月の『じゃんけん大会』では渡辺美優紀が優勝。ショッキングなことが続いたなかで、これらはどこか安心できる出来事だった。ところが2014年末、高橋みなみが「2015年12月の卒業」を発表して衝撃を与えた。

 2015年、3月リリースの39枚目シングル『Green Flash』が100万枚以上を売り上げて20作連続ミリオンの快挙を達成。5月発売の40枚目シングル『僕たちは戦わない』は、初日売り上げが147万2000枚を記録し、AKB48自身が持っていた当時のオリコンの初日売り上げ歴代最高記録を更新。AKB48の数字的な飛躍はこの年の『総選挙』にもあらわれ、指原が前年の渡辺麻友の得票数を4万票も上回り、過去最高となる19万4049票で戴冠。9月からは「365日の紙飛行機」がNHK連続ドラマ小説『あさが来た』の主題歌に起用。1、2期生の多くが卒業したダメージを伺わせず突っ走った。

【MV】365日の紙飛行機 Short ver. / AKB48[公式]

 高橋みなみの卒業公演は結局、翌年3月におこなわれることが正式決定。総監督は横山由依へ引き継がれることになった。そして2016年3月27日、横浜スタジアムで開催された高橋の卒業公演。横山は「AKB48の第2章が始まる」と宣言。しかしメンバー、ファンは一同に「え、まだ第1章だったの?」「もう何章目かにきているかと思った!」と驚きを禁じ得なかった。

 同年3月31日には、当時劇場公演回数がトップだった最後の2期生・小林香菜が卒業。どんなときも劇場に出続け、グループを支えてきた彼女を多くのファンが讃えた。また同じく2期生としてAKB48入りし、その後、姉妹グループへ移籍した宮澤佐江、梅田彩佳もそろって卒業。この日はまさにひとつの時代が幕を閉じた瞬間となった。

 『総選挙』では、指原莉乃が2015年に続いて2016年、2017年も制して3連覇。2年連続で24万票を超え、会場中がざわついた。一方で『総選挙』を賑わせてきた人気メンバーの島崎遥香が2016年12月、小嶋陽菜が2017年4月、そして指原と毎年接戦を繰り広げた渡辺麻友も同年12月31日の『第68回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)をもって卒業した。

向井地美音、岡田奈々、チーム8の飛躍もあるが……

 人気メンバーや功労者たちがグループから去っていくなか、ニューウェーブも押し寄せていた。15期生の向井地美音は2016年6月発売のシングル『翼はいらない』で初めてセンターの座を獲得。同年の『総選挙』でも13位で初選抜入り。翌年は選抜入りを逃したが、それでも17位にランクインするなど新世代の旗手のひとりとして意地をみせた。14期生・岡田奈々は体調不良による休養も経験するなど苦難がありながらもステップアップ。2014年の『総選挙』では51位に入り、2017年には9位にまで人気を押し上げるなど活躍をみせはじめた。本来であればここに15期生・大和田南那の名前も連ねたいところだったが、2017年3月に卒業。「もしグループに健在だったら……」と言いたくなる逸材だった。

 2014年に発足したチーム8も勢いがつき、AKB48本隊とはまた違う独自の熱狂を生むようになっていた。47都道府県から1人ずつ代表が選ばれる形で構成された同チームには企業のスポンサーもつき、チーム単独の公式サイトも開設。「エイター」と呼ばれるファンとともに快進撃をみせた。

【MV】47の素敵な街へ (Team 8) Short ver. / AKB48[公式]

 2013年から2017年は1、2期生の相次ぐ卒業の影響により、世代交代の期間となった。ただ『総選挙』ではHKT48所属の指原莉乃が2017年まで3連覇を果たすなど、絶対王者として君臨。2018年にはSKE48所属の松井珠理奈と須田亜香里、HKT48所属の宮脇咲良らが上位を独占。AKB48勢は高橋みなみ、渡辺麻友、柏木由紀ら初期メンバーが根強い人気と実力を誇っていたが、その代償があらわれてきた。ニューフェイスは登場したがグループを象徴する人材とまではいかず、本体の存在感は間違いなく薄れていった。

AKB48の軌跡を辿る バックナンバー

第3回:震災、スキャンダル、前田敦子らの卒業……戸惑いながらも駆け抜けた迷走期
第2回:商法問題、『選抜総選挙』による混乱……涙を流し駆け抜けたグループの変革期
第1回:第1回:結成から初の『紅白』出場まで、秋葉原で生まれたアイドルの黎明期

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter:https://twitter.com/tanabe_yuuki/

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