「テレビが伝える音楽」第14回
『テレ東音楽祭』プロデューサーに聞く、“バラエティ脳”の発想で生まれる企画 MC 国分太一の魅力も
掛け算して見ていて楽しいエンターテインメントに
――国分さんからのアイデアもあると思いますが、そういう攻めた演出や企画はどのように考えているんですか?
星:テレビ東京って他局と比べて人数が少ないので、大きい特番をやるときは色々な番組をやっている人たちが集まるんです。たとえば普段は『ありえへん∞世界』や『じっくり聞いタロウ~スター近況(秘)報告~』などバラエティ番組やドキュメンタリーを担当している人がいたり。僕と一緒にやっているプロデューサーも普段は『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』を担当していて、他のスタッフも、普段は音楽番組とまるで関係ない人がたくさんいるんです。他局みたいに人数がいれば、音楽をやる人、バラエティをやる人、ドキュメンタリーをやる人って細分化されるんでしょうけど、テレビ東京はみんな掛け持ちしているんです。だからこそ、直球の音楽番組をやっている僕だと考えないようなこと、いわゆる“バラエティ脳”の発想が出てくるんですよね。
もちろん歌をちゃんと届けたいというのがまずありますが、掛け算して見ていて楽しいエンターテインメントにしようっていう意識もあります。だから演出会議では色々なアイデアを出して、実現できるのかを考えます。たとえば2017年には華原朋美さんが馬に乗りながら歌ってくれたので、次の年の演出会議では「今年はどんな動物が連れてこれるかな」「象はどうだろう」って話し合ったり、ダジャレも好きなので、「今度銀座にGINZA SIXができるらしいよ」「GINZA SIX、シックス、ブイシックス……V6がGINZA SIXで踊るのはどうかな」とか(笑)。
あと前提として、テレビ東京全体でやるお祭りっていうことからスタートしているので、色々な番組でコラボレーションして、なるべく掛け算した方がいいっていうムードがあるんですよね。たとえば『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』とコラボするという企画では、「TUBEでみんなが盛り上がっているところに出川さんがバイクで登場したら楽しいよね」「じゃあ夏だし、プールを持ってきて最後はみんなで飛び込んじゃえば?」って話になって、最終的にそのプールに出川さんと国分さんも落ちちゃってびしょ濡れ……みたいな(笑)。
――確かにそういうアイデアは、バラエティ番組をやっている方がスタッフにいるからこそですね。
星:普通の音楽番組ならオチをつける必要はないですからね。やっぱり『テレ東音楽祭』に出川さんが来てくれて番組コラボができる、夏っぽくてみんなが好きなTUBEもいるってなったときに、最後どう終わったら一番いいのかなって考えたら、そういうオチの発想が出てきたんですよね。AKB48が水を抜いた池の中でパフォーマンスするってなったときも、ロケハンして『池の水ぜんぶ抜く』チームから「実際にやったら泥まみれでほぼ動けないから踊るどころじゃない」という意見を聞いて、「動けないっていうオチもそれはそれで面白いかも」と、泥まみれで動けないところをそのまま見せる演出になりました。
――そういう尖った企画に対して、アーティスト側からの反応はどうですか?
星:演出陣はマックスで変なことがやりたいんですけど、できませんって言われることも、もちろんあります。でもアーティストも普通の演出より、どうせだったら何かしらプラスアルファあった方がテレビに出る意味があるし、テレビ東京にわざわざ出る意味があると思ってくださっている。ただ、そうはいってもバラエティタレントではなくアーティストなので、最低限守るべきところもあるし、ちゃんと歌を届けたい。そこに関してどう落としどころをつけるか、どう間を取るかっていうのが、僕の一番大事な仕事ですね。
テレビでしか見られないものを見つけていくことが大事
――過去には後藤真希さんがAKB48のセンターを務めて話題になりましたが、そういった企画の実現力も番組の強みだと思います。星さん自身が思う番組の魅力やポイントはなんですか?
星:他局の音楽番組と同じに見えないようにしていることですね。テレビ東京はやっぱり他局と比べて弱いところはあるので、その分どう差別化していくかっていうのがポイントになります。出演アーティストでいうなら、もちろん色々な番組に出ている人気者のアーティストにも来ていただきつつ、話題になるような意外性のあるアーティストもうまく構成に盛り込んでいくのが大事かなと思っています。
たとえば、バブルガム・ブラザーズは最近テレビに出ていなかったんですが、テレビ東京では早めに相談しておいて、2019年の『テレ東音楽祭』に出てもらいましたね。アーティスト側が「久しぶりに動こう」と思っているときにこちらがオファーすると、タイミングがバッと合ってすごく良いんですけど、「今は出るタイミングじゃない」という方々もたくさんいるんですよ。そういう人たちにも何年にもわたってオファーを出し続けて、バチっと合うタイミングで番組に出てもらっています。今はYouTubeを含め、どこでも音楽が手に入りやすい環境になっているからこそ、逆にテレビでしか見られないものを見つけていくのが大事だと思いますね。
――今年の『テレ東音楽祭』の見どころを教えてください。
星:まだ詳しくは言えないですが、今年もオープニングは国分さんがかなり熱を持ってやってくださっているので楽しみにしていただきたいのと、コロナ禍ではありますがテレビ東京でしか見られないコラボも色々と仕込んでいるので、そこにも期待してほしいです。
――最後に、番組として今後挑戦していきたいことはありますか?
星:最近、過去のVTRを参考に観ていて気づいたんですけど、一般のダンサーを100人とか200人を入れてアーティストとコラボしたり、スタジオに水着の女性をたくさん呼んだり、人数をとりあえず集める演出も多かったんですよね。それを今観るとすごく熱量を感じるので、人の数がいると画に熱があるというのを改めて感じました。去年と今年は人数をかなり減らしているので、来年以降で状況が落ち着いたら、お客さんを入れてみんなで盛り上がっている画をまた新しいフェーズでお届けしたいですね。
■番組概要
『テレ東音楽祭2021~思わず歌いたくなる!最強ヒットソング100連発~』
6月30日(水)17:40~22:24分 5時間生放送
※一部事前収録あり
総合MC:国分太一
MC:広末涼子
進行:竹﨑由佳(テレビ東京アナウンサー)、冨田有紀(テレビ東京アナウンサー)
<第1弾 出演アーティスト>
V6、NEWS、関ジャニ∞、KAT-TUN、Kis-My-Ft2、A.B.C-Z、Snow Man、HiHi Jets(ジャニーズJr.)
<第2弾 出演アーティスト>
雨宮天、AKB48、大原櫻子、川崎鷹也、きゃりーぱみゅぱみゅ、Creepy Nuts、CHEMISTRY、倖田來未、小柳ゆき、櫻坂46、鈴木愛理、DA PUMP、Tiki Tiki Tours、德永英明、乃木坂46、日向坂46、マカロニえんぴつ、MAX、mzsrz(ミズシラズ)、MONGOL800、山崎育三郎、緑黄色社会、LUNA SEA(50音順)
<第3弾 出演アーティスト>
3時のヒロイン、JO1、ももいろクローバーZ、WANIMA(50音順)
【同時放送】
TX、TVO、TVA、TSC、TVh、TVQ(テレビ東京系列6局ネット)