『大豆田とわ子と三人の元夫』ドラマとともに毎週心待ちにしていた音楽 主題歌や劇伴に周到に練り込まれた“意味”

 最終回に先駆けた去る6月9日、全28曲入りのアルバム『Towako's Diary – from “大豆田とわ子と三人の元夫”』としてリリースされることによって、各楽曲のタイトルや参加ミュージシャンも含めて、その全容がようやく明らかとなった坂東祐大の「音楽」。けれども、そこで重要なのは、それがゼロから生み出されたものではなく、その中心にはあくまでも坂元裕二が生み出した登場人物たちや会話、そして彼らが織りなす「物語」があるということだろう。役者たちがそうであるように、その脚本を踏まえた上で――その脚本に引き出されるようにして生み出された珠玉の音楽たち。ドラマファンのあいだでは、もはや絶対的な信頼を獲得している坂元脚本だけど、それはミュージシャンたちにとっても同じであり、その脚本は、これほどまで音楽的なクリエイティブをも喚起させるということなのか。否、そんな単純な話ではないのだろう。

 『Towako's Diary』のリリースに合わせてSpotifyで公開された、坂東、STUTS、そしてこのドラマのプロデューサーを務める佐野亜裕美の3人のボイスコメントつき公式プレイリストでも語られていたように、そもそも今回のドラマの音楽にオーケストラの起用を希望したのが坂元自身であること、音楽担当の坂東に対しても、坂元自身が細かな希望を逐一伝えていたこと、逆に坂東のほうからも「歌もの」の「原詞」を坂元に依頼したことなど、完全な「分業」ではなく、ある種の「協業」的な体制で生まれていったという本作の音楽たち。そういった形をとることによって「音楽」は、これほどまで豊かに「ドラマ世界」を彩ることができるのか……その「音楽」に出会うことを、毎週心待ちにしてしまうほどに。正直、それが今回のドラマの最大の「驚き」であり「発見」だったかもしれない。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

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