愛はズボーン、正解がないからこそ辿り着けた新境地 “ぼくらのため”にロックバンドでかき鳴らす理由とは?

愛はズボーン、正解がないからこそ辿り着けた新境地 “ぼくらのため”にロックバンドでかき鳴らす理由とは?

 大阪アメリカ村を中心に活動するバンド、愛はズボーンが結成10周年を迎えた。オルタナ好きのツボをつく楽曲と、観客をクスッと笑わせながらも心の奥底に突き刺さるライブパフォーマンスで、確かなファンを獲得してきた彼ら。5月19日に3年半ぶりにリリースした2ndアルバム『TECHNO BLUES』は、これまでになかったテクノという要素を取り入れながらも、大胆な合わせ技をさらりとやってのけてしまう、愛はズボーンらしさが貫かれた作品になっている。そうしたサウンド面での変化もさることながら、自分たちの生活や足元を見つめ直し、4人の未来へとつなげるような楽曲が揃っているのも聴きどころだ。ここに至るまでの変遷やメンバー間での様々な出来事、そして愛はズボーンというロックバンドの核について、フロントマンの金城昌秀、GIMA☆KENTAと語り合った。(編集部)

「テクノの音は自由で暴力的」(金城)

ーー久々の東京公演となった先日のライブ(『愛はズボーン presents MAGICAL EAST 〜MEMORY OF BASEMENTBAR RENEWAL OPEN〜』)では、「ぼくらのために part1」MVの衣装も着ていましたけど、GIMAさんの衣装からはボビー・ギレスピーっぽさを感じました。

GIMA☆KENTA(以下、GIMA):はははは。バンドやりたてで洋楽もあんまり聴いていなかった時に、初めて出演したライブハウスの人から、「ボビー・ギレスピーにすごい似てるね」って言われて。「誰それ?」と思って調べたら、確かに似てるなと。それ以来ずっとシンパシーを感じていますし、大好きなロックシンガーですね。今回のピンクの衣装は、ボビー・ギレスピーがGUCCIとコラボしているのをデザイナーに見せて作ってもらったので、完全にボビーです。金城くんなんて、ポケモンのジャケット着てなかった?

金城昌秀(以下、金城):着てた(笑)。

GIMA:富ちゃん(富永遼右)に至ってはLimp BizkitのTシャツ着てたし。

ーーいい意味で統一感のない4人が集まっている、愛はズボーンらしさを感じました。『TECHNO BLUES』にもそういう要素が含まれていますけど、タイトル通りテクノの要素が多く入った作品で。1stアルバム『どれじんてえぜ』はサイケやローファイの印象が強かったですけど、今作に対してはどんな意識で取り組んでいったんでしょうか。

金城:サイケとかガレージ、ローファイをやっていた頃は、ライブハウスで演奏している音楽を意識しながら作っていたんですけど、いざフェスとかも出させてもらうようになって共演者のライブを見ていると、「広いステージには広いステージなりの音楽があるな」と3年前くらいから感じていたんです。野外フェスの大きなステージに立って演奏できる音楽はどんなものなのか。自分たちが表現したらどうなるのか。最初はそういうことを想像しながら作り始めた気がします。

ーー次なるステップアップとして、広いステージを見据えた曲作りに挑んだと。

金城:そうですね。ただ、そのためにやり出したんですけど、いつの間にか制作すること自体が楽しくなったのも大きかったです。テクノって、やってないことばかりだったので。

GIMA:いきなりバキッと変わったわけではないもんな。「ゆ〜らめりか」とか「Psycho Western」あたりからシーケンスが入ってきて、金城くんが徐々にそっちに変わったところで「えねるげいあ」ができた感じですね。

愛はズボーン “えねるげいあ” (Official Music Video)

ーー金城さんがテクノに興味が持ったのはどうしてなんでしょう?

金城:人が演奏するよりも、機械が演奏した方が意外とランダム性があるなと思ったからなんです。一瞬一瞬で適当に音を変えながら流していったんですけど、それが気持ちいいんですよ。人と人が合わせた時のグルーブももちろん好きだけど、それはひと通り楽しんだので、今は機材やソフトウェアと向き合うほうが楽しくて。人の演奏だと指先でコントロールできるけど、意外と機械の方が言うこと聞かないんですよね。便利になるために作られているはずやのに(笑)。あとは、生音やったら出されへん“無音”という音が出せる面白さもあります。生身の人間やと、呼吸しているから無音を作り出すのって難しいじゃないですか。でも機械やと、一番小さい0から一番大きい100の音まで、1秒間に自由に行ったり来たりできる。そういう意味でテクノの音は暴力的やなと思って聴いていますね。

ーー面白いですね。GIMAさんは、金城さんの思考を聞いた時にどう思ったんですか。

GIMA:『どれじんてえぜ』を出した時はテクノとか全く聴いてなかったけど、この3年半でテクノ好きな友達が増えたりしていて、教えてもらいながらクラブにも行ってみたら、「あれ、意外に踊れるぞ」と思って。今までロックンロールでは踊れていたけど、クラブミュージックでも踊れるんやと思った時に、ガンガンに入ってくるテクノの瞑想感みたいなものが好きになっていきました。ニューウェーブの4つ打ちとかはもともと好きだったので、スッとテクノにもハマっていけたのかもしれないです。生きたグルーブじゃない、死にドラムみたいな。

金城:死にドラム(笑)。

ーーでも、今作には当然ロックバンドとしての生身の熱量が込められていて。機械的で無機質なものの上で感情を爆発させるところが、前作にはなかった面白みだなと思いました。

金城:それはありますね。テクノというカチっとしたものを通して人間味を出すというか。だからこそギター弾くのも楽しいんですよね。生ドラムもほぼ全曲入れていますし、肉声で歌うメッセージにも意味が出てくる。僕がテクノっていうワードを出して、GIMAちゃんがブルースを出したんですけど、「俺めっちゃテクノ聴いてるけど、GIMAちゃん最近何聴いてんの?」「めっちゃブルースにハマってる」「じゃあテクノブルースでええんちゃう?」っていう流れやったんです(笑)。

GIMA:なんかしっくりきたよね。「この人、普段何を考えてるんやろう?」っていう血を通わせる作業をテクノにやっていったら、自分たちの音楽はテクノブルースなのかもしれないなって。

金城:かと言って俺がテクノ担当で、GIMAちゃんがブルース担当というわけでもない。4人それぞれが“テクノブルース”っていう解釈を持ちながら作ってる感じはあるかな。

「“正解はない”っていう正解だけがある」(GIMA)

ーー『どれじんてえぜ』の時は、自分たちの音楽を「ポジティブパンク」と例えていましたよね。3年半経って「テクノブルース」になったわけですが。

金城:ホンマや。確かにそう言ってたわ(笑)。

ーーポジティブとパンク、あるいはテクノとブルースもそうですけど、相反するものを1つにしてしまう力って、愛はズボーンの魅力ですよね。『どれじんてえぜ』はパンクの反骨精神を使って思い切りポジティブになっていたわけですし、今回もテクノの無機質なビートに人間味であるブルースを乗せているわけで。

金城:まさにそうですね。僕らってそういうヤツらなんでしょうね。例えば「元気に行こう」みたいにポジティブな言葉で当たり前なことだけ言っても、パワーが弱いと思うんですよ。でも、一見ネガティブなものってめちゃくちゃパワーが強いと思うから、そういうものをくっ付けるという考え方なんです。

GIMA:そもそも反対だとすら思ってないのかもしれないよね。

ーーというと?

GIMA:「正解はない」っていう正解だけがあると思ってる。間違いなんてないし、何事も自分次第で決められると思うから、ジャンルで分けたりすることがそもそもなかったですね。そのほうがワクワクするし。

ーーそれはバンドに根付いていると思うんですけど、それゆえに伝わり切らないもどかしさも、きっとありましたよね。

金城:もちろんあります。だから、めちゃくちゃカッコいいことをやれてるなって自分で確認しないと、心が折れそうになる時はありますね。けど、僕はやりたいことだけやって、「ついてこられへんならもうええわ!」というタイプではなくて、作ってる時も人からどう見られるのかを考えてしまうんです。アーティストとして自分が好きなものを作るのか、人が喜んでくれるものを作るのか。GIMAちゃんが言ったように正解なんてないので、そのバランスをどう取るか、『TECHNO BLUES』を作ってからはますます意識していますね。

ーーGIMAさんは、ステージでセンターに立ってズドンと言える役割を担っていますよね。見られ方を考えながら全体のバランスを取る金城さんとの、フロントマン同士のコンビネーションがあるんじゃないかなと思ったんですけど、そこはどうですか。

GIMA:まあ、俺は基本バカやらせてもらっているので。

金城:そういうけど、逆に俺はそういうこと言えへんから。

GIMA:俺は言いたいことが1つしかないんやと思います。「正解も間違いもない」っていうことしか思ってないから、それをいつ言うか考えているだけ(笑)。至ってシンプルです。

金城:コマンドで波動拳を打てるようになった小学生みたいな(笑)。GIMAちゃんは、ひたすら一撃必殺を打つタイミングを探しているんですよね。俺は勝ち確のコンボを考えて、組み合わせて繰り出すのが好きやから。

GIMA:そうやってギミックを解明したりするのが好きよな。

ーーそこはお互いの個性の違いですね。

金城:GIMAちゃんがそういう大きな発言をした時って、横にいてハラハラすることが多かったんですよ。前に放つだけ放って帰るみたいな感じやったから、「俺がカバーしないとあかんやん!」って困ってた時期もあったんですけど、今思うとそれは勘違いだったなと。GIMAちゃんは言うタイミングをちゃんと見計らっているので、ベストな時にしか言っていないはずなんです。そう思うと信頼できるようになったから、俺がフォローしなきゃいけないとか考えなくなりました。むしろもっと言って欲しいです。

GIMA:そういう信頼をメンバー間で持てるようになった時に、今の自分じゃまだ届けきれていないなって余計に思ったりもしますね。頭で考えて発言しているうちは、まだ本物のブルースになりきれていないのかなと。

金城:けど変にカッコつけなくなったよね。ピンク色のスーツも着ているわけやし(笑)。

GIMA:そうそう。カッコつけなくなって、どんどん素直な人間になっている感じはする。

金城:俺もそうやな。人から見られている自分を気にしなくなったから、ポケモンのジャケットを着ている(笑)。そしたら前より服を着ることが好きになってるんですよ。人からお洒落に見られたいとか思ってた時は、服とか適当に扱ってしわくちゃなものばかり着ていたんです。それはたぶん、好きじゃない服を着ていたからで。けど今はちゃんと自分が好きなものを着ているから、できるだけ長く着たい。綺麗にたたんだりしてね。別に人からお洒落と言われようがダサいと言われようが、どっちでもいいと思えるようになってきたな。

GIMA:「ぼくらのために」やん。

ーーまさにそうですね。「ぼくらのために part1」を聴いた時、「どれじんてえぜ」の〈僕らの時代だ〉という歌詞を思い出したんですよ。あの時は世代を代弁する声として歌っていたと思いますけど、今回は地に足のついた“自分自身の声”として歌っていますよね。そういう意識の変化はありましたか。

金城:そう言われてみてハッとしました。さっきの衣装の話じゃないけど、〈僕らの時代だ〉と言っていた時は、身の丈に合っていない服を着ていましたよね。言霊というか、そうやって歌うことで大きくなりたいという想いが少なからずあったと思うんです。成長なのか子供還りなのかわからないですけど、「ぼくらのために」っていう気持ちに変わりました。

愛はズボーン- “ぼくらのために part 1″(Official Music Video)

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