細美武士とTOSHI-LOWをつなぐ、深く太い“縁” the LOW-ATUSとして生み出す言葉の先にあるもの

細美武士とTOSHI-LOWを結ぶ“縁”

 細美武士(the HIATUS/MONOEYES/ELLEGARDEN)と TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)による、the LOW-ATUS。2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災地支援活動の中で二人のバンド活動を始動、2021年6月9日に初のアルバムとなる『旅鳥小唄 / Songbirds of Passage』をリリースした。

  細美武士がインタビューでも語っているTOSHI-LOWとの縁。二人の縁がthe LOW-ATUSの音楽と言葉を生み出している。今回のインタビューでは、そのアルバムの楽曲に込められた言葉の先にあるものについて語り合ってもらった。(編集部)

ユーモアとかユニークがないとやってらんない

一一アルバムが出るとは、まさか思っていませんでした。

TOSHI-LOW:ワタクシたちもです(笑)。

一一始動からそろそろ10年ですけど、これまでオリジナル曲を作ろう、アルバムを出そうって話が出たことはなかったんですか?

細美武士(以下、細美):真面目に話したことはなかったね。でも「そろそろオリジナル、あったほうがいいよね」みたいな話はずっとしてた。

TOSHI-LOW:あっては消え、あっては消え。「まぁ老後でいっかぁ」って。

細美:でもある日TOSHI-LOWが、1曲できたよって「通り雨」を作ってきたの。それで、せっかくだからレコーディングしよう、お互い2〜3曲書こうかっていう話から始まったものが、蓋開けてみたらフルアルバムになってた。

一一TOSHI-LOWくんは、なんで今オリジナルを作る気に?

TOSHI-LOW:いや、なんとなく。弾いて歌ってみたらthe LOW-ATUSに合うなって。それだけ。

一一浮かんだ先はOAUではなかったですか。

TOSHI-LOW:うん。なぜか違ったんだよね。これOAUじゃないなと思って。細美武士と歌いたいと思ったの。バンドのハーモニーが欲しいとかじゃなくて、やっぱりその人が浮かぶかどうか、だった。そこは自分の中でなんか振り分けがあるんだろうね。

一一そこから本格的な曲作りが始まって。改めて、どういう曲がthe LOW-ATUSらしいのか、当然考えたと思うんです。

細美武士

細美:The LOW-ATUSでのポイントって、「TOSHI-LOWと一緒にこれ完成させたらまたいっぱい旅できるんだよな」とか「一緒に飯食えて酒飲めて馬鹿やれるんだなぁ」なんてことにワクワクする気持ちで、そこが曲になりやすかった。だからTOSHI-LOWへのラブソングみたいな曲もあるんだけど、ただそれだけじゃなくて。やっぱりthe LOW-ATUSが生まれたきっかけは東北の震災に紐付いているので。ライブも東北でやることがやっぱり多いし、その現場を想像すると、浮かんでくるのはいつもの連中の顔だから、なんとなくそっちに向かって投げたい言葉、みたいなものにはなってる。狙ってやったんじゃなくて、そういう形になったなって今振り返ると思う。

一一二つの気持ちは、どちらも、愛と呼んでいいものですよね。

細美:うん。いろんな形の愛があるけど、間違いなくそうじゃないですかね。

一一TOSHI-LOWくんの考えるthe LOW-ATUSらしさとは?

TOSHI-LOW

TOSHI-LOW:やっぱりみーちゃん(細美)が言った通り、俺たちの10年間って東北で見てきた景色が大きくて。もう散々な景色を一緒に見てきたけど、その散々な景色を見て「やっぱこんなもんだよね」って言うんじゃなく、そこから立ち上がっていく人の背中を、押したり押されたりしてきたからさ。その世界観は大きいよね。the LOW-ATUSだと力でゴリ押していくロックの方法論にはならない。歌詞もそうだし。ただ優しいっていうよりは……そうね、これを愛と言ってしまえば簡単なのかもしれないけど、なんかお互いに引き合ってる中での出会いとか別れみたいな。それをバンドよりもじっくり伝えられる感じはする。

一一あと、全体に昭和臭というか、泥臭さも意識したのかなと。

TOSHI-LOW:俺の曲だけじゃない?

細美:や、なんだろ、パッケージも含めてそういうテイストに向かっていった感はある。タイトルどうしようって早めに話してて、“浪華悲歌(なにわえれじい)”っていう昔の映画のポスター見ながら、こういう感じのタイトル付けたいってTOSHI-LOWが言ってて。ただ、作ってるものは悲歌って感じでもないから、どうすっかなぁって考えてたんだけどさ。the LOW-ATUSのイメージはやっぱり旅だから、“旅”って言葉は入れたいのと、あとは“悲歌”みたいに歌を表す言葉を入れようと思って考えてたら“小唄”があるじゃんって。それで『旅鳥小唄』っていうタイトルになった。ジャケットも戦後のイメージだし、最初からテーマとしてあったわけじゃないけど、俺も途中からはわりとノスタルジックなイメージを持って作ってたよ。

一一「ダンシングクイーン」もまさに昭和の世界観で、これが細美さん作曲であることに驚きましたね。

細美:俺は基本的には、作った曲をストックしておくようなことはしないんだけど、近年はわりと制作やってから、気に入ってるけど録れなかった曲が何曲か残ってたんだよね。「アルバムにもう一曲入れたいよよね?」って話が最後のほうになって出てきたから「何か使えそうなのある?」って感じでTOSHI-LOWに聴かせてみたら気に入ってくれた。そもそも英語の仮詞が乗ってたし、日本語にできるイメージが俺にはまったく湧かなかったから、「じゃあTOSHI-LOWが日本語の歌詞書いて、メインボーカルやってよ」みたいな感じで(笑)。

TOSHI-LOW:みーちゃんがバンドのストックとして書いてたものだから、ロック感もオルタナ感もあって。二人でアコギ弾いてると、やっぱりどっか牧歌的になるというか、このヒリついた感じは出てこないわけ。だからこそこの一曲が入ると他との対比がすごく面白くて。歌詞も東北の景色とかじゃない、架空の物語でやりたい放題やってみた。

細美:他の曲とは生い立ちが違うよね。山椒みたいな、スパイスになる曲。

一一この曲からの「みかん」っていう流れが最高です。

細美:はははは! なんかね、途中からTOSHI-LOWから「いい曲禁止令」っていうのが出てさ。それですんごい適当に作った曲(笑)。

一一ふふふ。いい曲のアルバムというだけじゃダメでした?

TOSHI-LOW:なんつうの? the LOW-ATUSってそもそも成り立ちがそうじゃねぇから。おふざけに近いとこから始めたものじゃん。けど作り出すとやっぱり、お互い音楽家としていいもの作りたいって気持ちは出てくるけど。そうやって真面目になる部分はあっても、同時にどこに行っても面白さは求めてるし。被災地行ったって俺なんか「どうやって笑わそうか」って思ってるところもあるし。

細美:俺もそう。

TOSHI-LOW:楽しさ、あとユーモアとかユニークってことだと思うけど、そういうのがないとやってらんないのよ。単純に、ただ真面目だけを見つめてやるのは違うんじゃないかなって。

一一レコーディング中もめちゃくちゃ飲んでたらしいですね。

細美:飲んでた。飲みたくて飲んでたっていうより、後半からは「このターム中に絶対ウイスキー10本空けよう」って謎の目標設定ができちゃって。今日ちょっとTOSHI-LOW疲れてんなぁって思う日は「わかった、今日は俺が頑張って飲むよ!」みたいな(笑)。

一一その作業、要ります?

細美:要るんじゃない? the LOW-ATUSには。

TOSHI-LOW:要るんだよ。結果11本空いた。はははは。

細美:そもそもthe LOW-ATUSって何か崇高な目的があるわけじゃないから。俺たちが一緒にいて遊ぶ時間を確保するためには、the LOW-ATUSやるのが一番手っ取り早いっていう。

TOSHI-LOW:口実だよね。だからアルバムがなくてもいい、実は(笑)。飲み会だけが活動でも俺はいいと思ってる(笑)。

一一そういうユーモアや遊びがあるほうが、ただ真面目にやるよりメッセージが届く感覚も実はあるんじゃないですか?

細美:や、そんな頭でっかちな話じゃない。一緒にいたら飲み始めちゃうし、フラフラになって歌ったら「いいじゃーん」って盛り上がるし。だいたいそういうのって翌朝聴くと「なんだこれ!」になるけど、the LOW-ATUSはそもそも毎回がそういう活動だから。そういう二人の音になってるなと思う。

TOSHI-LOW:だから酒も必要なんだよ。飲みながらやるのも自然だし、俺ほんとに楽しかったもん。毎日レコーディング行きたくてしょうがなかった。

細美:わかる。「今日は昼から飲める!」って(笑)。

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