山下達郎サウンドらしさは“音の陰影”にある? スージー鈴木×マキタスポーツが「RIDE ON TIME」コード進行を分析

 続いて、左手で「ソ」を、右手でBマイナー「シ・レ・ファ」を押すと、簡単にできるという。両手で弾いたマキタスポーツが「ああー!」と唸り、さかっちも「全然ラク」と余裕の表情。「ソ+BmでGmaj7」という公式を覚えた。

 「この演奏法ってよく使いまして、こっち(左手)でG弾いているから、こっち側(右手)はBマイナーでいいじゃないか。そうなってくると押すときに幅も出ますし」と解説。左手で「ソ」をオクターブでおさえ、右手でマイナーコードをおさえ、リズムに合わせてみせた。「泳ぎすぎだって!」とマキタスポーツが止める。ゆっくりと練習を重ねたマキタスポーツとさかっち。最後は3人で「♪青い水平線を」の一節を弾いてみることに。コードは、Cmaj7→A→Cmaj7。2つのコードを交互におさえただけで、かなり“弾ける人”にみえてきた。

 最後にマキタスポーツが質問を。「ということはですよ、ド・ミ・ソ・シだったら、ドの真横(左隣)のシ・ド・ミ・ソはいいんですか?」。「アリですね! 弾く場合多いです」「ちょっと普通のグランドピアノとかだと違う風になりますけど、この辺のぶつかり合い(ミ・ファ)とか、Fメジャー7(ド・ミ・ファ・ラ)を使うことがあります」「一応理論上はド・ミ・ソにシを上に乗せるって説明されますけど、シを下に下げても構わない。それがスージー鈴木の精神世界!」。

 「半音のぶつかりって…これは汚いですけど、全部並べると意外と響くんですよ」と、Fメジャー7(ド・ミ・ファ・ラ)を弾いて聞かせる。一般的に和音は隣合う音を組み合わせることはしないものかと思いきや、「音楽的な響きになる」とスージー鈴木。

 「Cメジャー7とFメジャー7を延々繰り返すと、ニセ、バート・バカラックができます」とニヤリ。名曲「雨に濡れても」をさかっちが鍵盤を、マキタスポーツが管楽器風の音を口で鳴らして即興でセッション。まさか「RIDE ON TIME」から「雨に濡れても」につながるとは。思わぬ展開に視界が開けた。

 最後にまとめを。「メジャー7はメジャーとマイナーの混合である」とスージー鈴木。「スカッと明るくない、グワッと暗くもない、ふわっとした感じっていうのがシティポップな感じで、山下達郎だっていう話は、大事なポイントかもしれませんね」と締めた。

 この後も「白い鍵盤一個飛ばしだったら……」とマキタスポーツ。探求はまだまだ続いた。ここまで約20分の放送だが、とにかくやさしくて深くて、わかりやすい。

 音を構成するコードの基礎を踏まえて、構造を分解していく。音楽……それも冒頭の一節をピックアップし、ここまでかみ砕いて解説する番組は『ザ・カセットテープ・ミュージック』が唯一の存在と言ってもいいのではないか。しかも、分からないことは分からないと、自分の代わりに先生の進行を止めてくれる人がいて、視聴者を置いてけぼりにしないのもありがたい。

 まるで、いま書店でじわじわと流行している大人の学び直しシリーズのようであり、学生時代の音楽の授業がこんな風だったら、もっと音楽が楽しめていただろうと少々後悔した。

■柚月裕実
Web編集者/ライター。企画、担当編集、取材・執筆してます。
日本の男性アイドルの頑張りを見ては涙する30代。
始まりはSMAP中居さん。 KAT-TUN、NEWS中心の事務所担。年中HDDの整理と原稿書きに追われています。

■番組情報
『ザ・カセットテープ・ミュージック』
2021年5月23日(日)放送
第74回「~スージー鈴木の精神世界2~」(再放送)
【出演】マキタスポーツ、スージー鈴木、酒井瞳
2021年6月6日(日)放送
第89回「ずっと80年代でいいのに」
【出演】マキタスポーツ、スージー鈴木、酒井瞳
2021年6月13日(日)
第90回「第一回!不幸歌合戦」
【出演】マキタスポーツ、スージー鈴木、酒井瞳

公式サイト
https://www.twellv.co.jp/program/music/cassettetapemusic/

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