『プレバト!!』総合演出が語る、Kis-My-Ft2起用の背景 アイドルの才能を発掘する場にも
Kis-My-Ft2と日向坂46に共通する「グループに還元したい」という思い
――最近は日向坂46のメンバーも出演していますが、キャスティングはどのようなことを意識していますか。
水野:最近はテレビ業界全体が若い人向けの番組を作ろうという流れなんですけど、『プレバト!!』はテレビの前で三世代に見てもらいたいって思ってます。お父さんお母さん、子ども、おじいちゃんおばあちゃんが見てくれているとイメージしたときに、ご年配の方がわからない人ばかりが出演しているのもダメだし、子どもが全く知らない人たちが出ているのもダメ。うまくバランスを取りつつ、それでいて若いゲストが大御所を打ち負かしてくれると気持ちがいいので、そんな可能性がある人たちにオファーしています。
――最初はスプレーアートの金村美玖さんでした。
水野:3時間スペシャルのメイン企画だったので豪華に行こうと思って日向坂46にオファーしたら、金村(美玖)さんがチャレンジしたいという話をもらいました。そしたら、くっきー!さんにも(千原)ジュニアさんにも光宗(薫)さんにも勝って優勝しちゃいましたもんね。黒板アートも色鉛筆もそうでしたけど、金村さんは絶対に準備をしてくるし、爪痕を残そうっていう熱意がひしひしと伝わってきます。俳句で1位を取った佐々木久美さんも、明らかにちゃんと勉強してきた作品でした。「上京の春や深夜のユッケジャン」って五七五の途中に意味の区切りがある“句またがり”という技を駆使してるんですけど、僕、いまだに使いこなせませんし。
――若い人が頑張って結果を残してきているんですね。
水野:これは会議でもよく言ってて、スタッフも感謝していることなんですけど、『プレバト!!』って出演者が頑張ってくれているから成り立つ番組ですよね。どのジャンルの先生も本気だから「最下位でもイジってもらえたらオイシイ」っていう気持ちだと大スベリする。一方で、「負けたくない」っていう気持ちが出ると一番輝くんですよ。キスマイにしても日向坂にしても、どちらかというと遅咲きのグループだから良い結果を残すっていうことにストイックな感じなのかもしれないですよね。ストイックだから番組との相性が良いっていうのはあると思います。あと、もう1つ共通点があって、どっちのグループも「個人で活躍してグループに還元したい」って発言してるんですよね。特に、横尾さんは、俳句で結果を出したことがグループにプラスになって返ってきてほしいってよく言ってます。
――『紅白歌合戦』で、普段俳句を見ていた年齢層が横尾さんのカッコイイ姿に魅了されたという声をたくさん見かけました。
水野:『紅白』といえば、4~5年前の大晦日の昼に買い物をしてたら、たまたま隣で北山さんも買い物をしていて、ちょっと雑談したっていうことがあったんです。「カウントダウンコンサート頑張って」と言いながらも、その年の『紅白歌合戦』には出場してない現実も感じて。だから、『紅白歌合戦』を見て「俳句の横尾くんって踊れるんだ」っていう主婦層の声が多かったって聞いた時は、俳句がファン層を広げた気がして嬉しかったです。
――日向坂46も自分が目立つだけではなくて、ちゃんとグループに還元したいという気持ちがあるんですね。
水野:日向坂の場合は楽曲やダンスの完成度の高さなど、グループ全体の美しさが特徴的ですよね。でも、ファン以外からすると、グループの統一感や完成度が高いほど、みんな同じに見えがちっていう声もありますよね。だからグループアイドルの方が、『プレバト!!』みたいな才能を発揮するタイプの番組で結果を出すことへの思いが強いかもしれないですよね。金村さんのスプレーアートの優勝作品はファンへのメッセージだったし、グループへの還元が成功してますよね。それに、強烈に結果を残してくれると、他の番組でもご一緒したくなります。実際、5月に僕が演出する特番に佐々木さんに出てもらいますけど、これって『プレバト!!』がきっかけですし。
――番組が始まってもうすぐ10年目ですけど、今後はどんな番組を目指していますか。
水野:大きく変えるということは、今のところはないです。っていうのも当初の才能アリナシの企画から、番組のスターがたくさん誕生したことをきっかけに特待生制度が生まれた。僕らスタッフが企画のフレームは作ったけど、番組を面白く育ててくれたのは出演者だし、才能ナシが成長したら才能アリになるっていうのを許容してくれたのは視聴者。だから『プレバト!!』って、出演者と視聴者のものでもあるっていう意識があるんです。“テレビを若い人たちに見てもらおう”という今の風潮に対しても、この番組は出演者や、視聴者のものであるので、僕らだけで方針転換するのは違う。長い期間を一緒に過ごしてきて、番組と視聴者の距離感や関係性は決まっているのに、それを制作側が勝手に捻じ曲げちゃいけないんです。
――番組って生き物みたいですね。
水野:そうかもしれないですね。番組のメインの視聴者層を変えるってすごく大きい話で、生き物に例えるなら「性格を変えろ」ってことじゃないですか。そんなの無理だし、『プレバト!!』の性格を変えるということは極論、俳句をやめるかどうかという話になると思うんですけど、そんなの誰も望んでいません。だから、視聴者の年齢層を若返らせるためにやったのは、コーナーの順番を変えたりとか、日向坂のような若い人たちに出演してもらうといったマイナーチェンジを試みたぐらいです。そうやって視聴者の総数を減らさずに、この1年で年齢層も若返ってきているので、この流れを大切にしたいと思ってます。
ーー最後に、今後アイドルやアーティストではどんな人に出てほしいですか?
水野:やっぱり藤ヶ谷(太輔)さんですかね(笑)。お会いするたびに誘ってるので、いつか来てくれるのでは? と思ってます。あとアーティストだったらCreepy Nutsさん。芸術系では先日、乃木坂46の賀喜(遥香)さんとSKE48の北川(愛乃)さんが特待生になったし、アイドル対決があったら面白いですよね。
■プロフィール
水野雅之(みずの まさゆき)
2000年、毎日放送入社。『プレバト!!』の総合演出。『初耳学』、『教えてもらう前と後』の企画、演出、プロデューサーとしてゴールデン・プライム帯における現在の毎日放送制作の全番組を手掛ける。
■放送情報
『プレバト!!』
毎週木曜よる7時
MBS/TBS系全国ネット放送