眉村ちあき、配信ライブで各国への旅を擬似体験 “一度しかない”ステージに賭ける熱い思い

 眉村ちあきの配信ライブ『飛び出せ!日本元気女歌手ツアー ~ニューヨーク・パリ・ロンドン編~』が4月17日に行われた。配信なのにライブタイトルには「ツアー」という言葉が含まれている。それに違和感を覚えたが、ライブを観て全て理解した。ライブの演出やパフォーマンスによって、旅を擬似体験する内容だったからだ。

 ライブは「ピッコロ虫」から始まった。バックのビジョンにはニューヨークの景色が映され、眉村は自由の女神のコスプレをしている。歌い終わってから「Ladies and Gentlemen! This is Mayumura Chiaki from Japan! よろしくね!」と英語と日本語を交えて挨拶をした。まるでニューヨークの会場でライブをやっている様子を再現しているようだ。「冒険隊 ~森の勇者~」は英語バージョンで歌ったことも、海外ライブの再現を意識しているのだろう。

 しかし彼女の個性的なパフォーマンスはいつもと変わらない。ライブ定番曲の「ナックルセンス」ではステージを縦横無尽に動き回りながら歌う。そして「みんなこの絵文字を書いて!」と手で絵文字を再現してファンにコメントで絵文字を投稿するように求める。続く「壁みてる」では「コールを先読みしてコメントを書いて!」とファンに無茶振りをする。破天荒で自由でありながらも、配信であることを利用してファンとの距離感を縮めるパフォーマンス。これが彼女の魅力であり、最高のライブを構築する要素だ。

 眉村が和太鼓を叩く映像を挟み、ワンピースへ衣装をチェンジして「偏差値2ダンス」へ。玉屋2060%とコラボレーションした楽曲だが、今回は眉村のアメリカ在住の友人が歌うリモート映像が流れる演出になっていた。パフォーマンスだけでなく演出も破天荒で自由だ。

 そんなパフォーマンスは、彼女の高い歌唱力が軸にあるからこそ成立していることは忘れてはならない。「夏のラーメンワルツ」では途中でカップヌードルを取り出したりとシュールな演出があったものの、彼女の高い表現力の歌唱で魅了する。曲展開が目まぐるしく変わる「昼なんです!」からの「昼だがな! ~逆襲ver.~」を見事に歌いこなしていることも、技術があるからこそだ。

 舞台をパリに移してからの1曲目は荒井由実「ルージュの伝言」のカバー。フレンチポップの影響を感じる編曲になっていることも、パリを意識してのことだろうか。「ジュビデュバ・オブ・クラティー」を歌う前には「ヘイ!ロンドン!」と叫んでいたが、舞台はパリである(画面の下には「※パリです」と字幕で注釈が書かれていた)。彼女のこうした奔放さに笑ってしまうが、歌には感動してしまうし、エレキギターとキーボードを1曲の中で両方演奏する姿には凄みを感じる。

 配信ライブはステージセットのチェンジが容易であることが強みだ。次はラジオブースをイメージしたセットに移りパフォーマンスを行った。そしてラジオリスナーからのリクエストという設定で「クリスマスソング」「フリフリスイスイニッコニコ」の2曲を歌った。ラジオで話しているという設定のMCでは「ボーカルスクールに1年間通っていた頃があって、この1年間で生粋のボーカリストにならなくてはと思って、責任と覚悟が渦を巻き始めてしまって入学式で1人だけ嗚咽してしまった」と語る。いつも笑顔でいるが、その背景には音楽への強すぎる想いがあるのだ。

 ファンへの想いも同じぐらいに強いのだろう。「ブラボー」では中盤の歌詞を〈聞こえてる?わたしには聞こえてる あなたの声がさ いつでも会いにきてよね 待ってる〉と、ファンへの想いを語る歌詞へと変更していた。「顔面ファラウェイ」では「コメント欄でコールして!」とファンに訴えかけたり、手でハートを作りながら「大好き!」と叫んでいた。音楽的な技術や才能だけでなく、音楽やファンへの想いにも感動してしまう。本編の最後にアコースティックギターの弾き語りで歌われた「私についてこいよ」はファンへのラブソングに聴こえる。〈君のこと大好きだよ 大好きだよ 届いてたらいいのに〉という真っ直ぐな言葉は、眉村ちあきが歌うからこそ胸に沁みる。

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