BTS RMはJUNG KOOKにとってのヒーロー 新曲「Film out」にも繋がるイズム

 BTSの新曲「Film out」が、4月2日0時より配信がスタートした。この曲は、同日に公開された坂口健太郎主演映画『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』の主題歌で、YouTubeにて公開されたMVは早速急上昇ランキング1位に輝いた。

BTS (방탄소년단) 'Film out' Official MV
BTS「Film out」

 さらに、公開から12時間足らずで1700万回視聴を突破し、日本語歌詞にも関わらず各国の言語で117万件以上のコメントが届くなど、改めて「世界のBTS」と呼ばれるにふさわしい人気ぶりを見せつけている(いずれも4月2日11時30分現在)。

 「Film out」は、back numberのボーカル、ギター・清水依与吏が初めて楽曲提供をした曲であり、BTSメンバーのJUNG KOOKがコラボレーション制作したことでも注目を集めている。back numberの得意とする人を想う切ない歌詞とメロディ、そしてBTSの表現力豊かな歌唱が見事にマッチした1曲となった。

 JUNG KOOKの歌い出し〈浮かび上がる君は あまりに鮮やかで〉は、“浮かび”や“あまりに”のタメが叙情的で、MVのカメラアングルのようにグッと聴く者の意識が引き寄せられていく感覚だ。JIMINの繊細なシルキーボイスと、Vの厚みを感じる温かな声が交差し、次第にカメラが映し出す世界はJINの眼差しと重なっていく。

 JINが見つめるのは、RMを中心とした7人のいる部屋。どっしりとした安定感のあるRMの低音ラップが、心の中で停止してしまった時間の記憶を静かに打ち明けているようだ。シルバーボイスと讃えられるJINのまっすぐに届く歌声で〈淡々と降り積もった記憶の中で 君だけを拾い集めて繋げて〉と綴られると、切なさはさらに加速していくようだ。

 さらに、SUGAがいつもよりもグッと優しい声で〈正しくなくていいからさ〉と語りかけ、背中合わせで座りながらJ-HOPEが〈やっと今君のとなりまで 追い付いて〉と応える様子に、思わず胸が熱くなる。

 もちろん、歌っているのは楽曲の世界観だ。だが、彼らのたどってきた昨今の歩みを見ていると、肩の療養で活動を休止していたSUGAが今こうして新曲を一緒に発表できている喜びとも、今なかなか会うことができずそれぞれのドアの先にいるARMY(ファン)を恋しく想っている気持ちともリンクしているように聴こえてくるのだ。そんな感情の高まりを、Vのパワフルな歌声と、JIMINの高音で突き抜けるように歌い上げる流れは圧巻だ。

 back numberの清水が、楽曲提供に際して寄せたコメント「JUNG KOOKさんとの刺激的なやり取り、そしてBTSメンバーそれぞれの持つ個性や表現力のおかげでとても叙情的でいてパワフルな楽曲が完成した事を嬉しく思います」とは、このことだったのかと静かに頷くことができるMVに仕上がっている。

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