Ado「うっせぇわ」ヒットは必然だった? ボカロシーン流行の変遷を整理
2020年年末、突如としてブームを巻き起こした「うっせぇわ」。サビで〈うっせぇ〉と繰り返す耳に残る威勢のいい歌詞と、凄みのあるAdoの歌唱スタイルで注目を集めている。従来のボカロシーンの中心リスナー層であった若者を越え、幅広い世代の間で話題になっている本楽曲は、ネットシーンに新しい空気を吹き込んだと言えるだろう。
一見唐突に姿を現したように見える「うっせぇわ」。しかしこれは、ここ数年のボカロの流行の流れを汲んだ上でのヒット曲だと言える。
「うっせぇわ」に繋がるボカロカルチャーの源流は2017年〜2018年にみることができる。2017年にバルーンの「シャルル」がヒット(発表は2016年)し、カラオケなど二次的な楽しみ方でも人気を呼ぶようになった。カンザキイオリの「命に嫌われている。」や、ぬゆり「フィクサー」など、ときに皮肉めいた言葉遣いがされたり内心を吐露するような楽曲が広く親しまれるようになっている年だと言えるだろう。
この時期には、もう一つ、ボカロ系カルチャーの転機となる動きがあった。ヨルシカやずっと真夜中でいいのに。の活動開始である。ボカロPとして活動しているコンポーザーと女性ボーカルが共に活動するこの形は、2020年に大ヒットしたYOASOBIにまで引き継がれている。
この二つの流れを汲んでいるのが、Adoの「うっせぇわ」なのではないだろうか。「うっせぇわ」の作詞・作曲を手がけたsyudouは、2018年頃からボカロPとして人気を得ており、その歌詞はこれまでも毒を感じる鋭いものであった。そのような作風でAdoとコラボレーションすることによって、よりリアリティを帯びた説得力を感じる作品が完成したのだろう。ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。、YOASOBI以前は、女性ボーカル自身の表現の優先度は高くなく、あくまでも歌詞の内容をフラットに伝えるものが多かった。対してAdoの場合、歌い手としてのキャリアがあることも関係してか、がなりなどを効果的に使用し、歌詞の存在感を際立たせている。その点でYOASOBIの次の世代のネット発シンガーと言うことができるだろう。