『僕等はまだ美しい夢を見てる ロストエイジ20年史』クロスレビューVol.6:後藤正文「答えなき時代、正解のない荒野を歩む」

 音楽で飯を食うことについての悩みは尽きない。

 良いものさえ作っていれば、いつか誰かが見つけてくれるだろうという希望を捨てることはできないが、世界中で生み出され続ける無数の楽曲が日々ネット上に積み上げられて、そのなかで突き抜けることの難しさを思う。それならばと世間の風穴を探すように、好きでもないことをしてバズっても仕方がない。もっとも、世間でバズるような何かを考え出すアイデアや技術があるのかと言われたら、「YES」とはとても言えない。

 こうした考えのなかには、目的が音楽そのものではなく、音楽で食うことになっているという倒錯が含まれている。だから苦しい。しかし、目的が音楽そのものだとしても、誰かの耳に届いて賞賛されたいという欲望を消すことは難しい。この楽曲が作れただけで大成功、だなんて心の底から思える人はほとんどいないだろう。

 最適解はない。それぞれが、ぞれぞれの欲望と向き合い、生活と向き合い、自分たちらしく活動をしていくしかない。そういう時代なのだと思う。

 LOSTAGEは答えなき時代、正解のない荒野を歩む。ひとつのロールモデルと呼びたいが、誰もが真似できることではないと思う。真似ることができるとすれば、彼らの目つきと姿勢くらいかもしれない。

 絶妙な距離感で彼らの歴史を書き留めた石井恵梨子の筆致。普段からベタつかない両者だからこそ、感傷に浸るでもなく、無闇に嘆くのでもなく、何かの自慢話でもなく、ことさらに夢と希望を歌うでもなく、「人生、案外クソでもないな」と平熱のまま思わせてくれる。泣き叫ぶような激情ではないが、何かを志す人の傍に立つようなエモーションとバイブスがある。

 人生は続く。生活も続く。音楽はいつまで続けられるだろうか。

 むしろ、死ぬまで音楽を続けることを、夢と呼んでいいのかもしれない。

 とても素敵な本だと思った。

■書籍情報
タイトル:『僕等はまだ美しい夢を見てる ロストエイジ20年史』
著者:石井恵梨子
ISBN:978-4-909852-15-1
発売日:2021年2月25日(木)
価格:2,500円(税抜)
発売元:株式会社blueprint
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■リリース情報
後藤正文『Lives By The Sea』
Vinyl/CD:2021年3月3日(水)リリース
配信:https://lnk.to/Hc4Y0QrV

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