フィロソフィーのダンス、お風呂歌唱での“あるがままの姿” メンバーの表現力の進化を紐解く
好きな曲を、お風呂で歌う。観客のいない、日常のささいなコンサート。あるがままの音楽をのぞいていきませんかーー。そんなコンセプトで制作したフィロソフィーのダンスの『お風呂でうたってみた Tiny Bath Concert』がYouTubeで公開された。J-POPの名曲をアンプラグドで届ける今回のシリーズは、短い収録時間ながら各メンバーのボーカリストとしての成長ぶりがはっきりとわかる内容で非常に興味深い。それぞれの歌唱スタイルの特徴や魅力を本作から探ってみたいと思う。
奥津マリリ「RIDE ON TIME」
グループに加入する前はソロで弾き語りをしていた奥津マリリ。「人間性が売りで、恋愛の曲をメインで歌っていた」(オフィシャルブック『U Got The Look』より。以下のメンバーのコメントはすべて同書から抜粋)というが、山下達郎 「RIDE ON TIME」はポジティブな気分をパワフルに歌い上げたものであり、すこし意外な印象を受けた。
おそらく現時点では曲のテーマ設定よりも歌そのものに関心が向いているのだろう。実は2月にリリースされたソロ曲「ネイビーブルー」でも同じことを思っている。彼女が得意とするラブソングではあるものの、シンプルな言葉をボーカルの力でより味わい深くした仕上がりで、主役はあくまでも「歌」だ。
以前、メジャーデビューを機に「ちょっと楽しい無理をしたい」と言っていたのは記憶に新しい。もしかすると今回の動画はそれを知るためのヒントのひとつなのかもしれない。
佐藤まりあ「私がオバさんになっても」
続いて動画が公開された佐藤まりあが歌うのは「私がオバさんになっても」。奥津と同じく意外なセレクトだと一瞬思ったが、いざ聴いてみると森高千里のまっすぐな歌い方は佐藤まりあにぴったりであり、自身のスタイルや魅力をしっかり把握した上で選んだことがわかる。本曲は以前佐藤がライブにて披露したことがあり、本人にとって大切な一曲だという。
彼女が歌手としての存在感を増したのは、『ライブ・ライフ/イッツマイ・ターン』を出した2018年あたりだろうか。〈ミラーボールで交差する日常、非日常〉と軽やかに歌うパートは、この曲が持つ高揚感を的確に伝えてくれた。続いて発表された本人歌唱バージョンの「はじめまして未来」も、アイドル担当としての立ち位置で表現できるものをすべて出し切っていてインパクトがあった。
近年はバンドセットでライブする機会が増えたおかげで「これだけやったからという自信がついた」そうだが、それは「私がオバさんになっても」の歌唱でも十分に伝わってくる。アイドルらしく、自分らしく。そう自覚した彼女の新しい展開が楽しみでならない。