登坂広臣、ØMIとして表現する二面性 楽曲から浮かび上がる新たな“問い”

 「ANSWER…SHADOW」と「Can You See The Light」の2作は趣こそ異なるものの、内包する思想やメッセージは概ね共通している。たとえば前者で聖書の“禁断の果実”をモチーフとした表現を絡め、後者で〈穢れていく心と身体は/綺麗なままじゃいられないのさ〉と歌われる点などは「“生きること”とは“罪や穢れを引き受けること”である」と解釈できる。その他にも〈愛〉と〈痛み〉、〈偽りと真実〉、〈闇〉と〈一筋の光〉などの表現は全編を通して登場するほか、「ANSWER…SHADOW」のサビ〈光の影〉などはまさしく「光があることで影が生まれる」という表裏一体性そのものを表したフレーズにもなっている。

 そして「ANSWER…SHADOW」の〈愛してるのは誰?/俺のこの影?/君が照らすほどに濃くなるんだ〉から続く詞の中で、今作の表裏一体性の表現と前作『Who Are You?』における“問い”が掛け合わさっていく。そこから「愛の根源や存在の本質とは“光”と“影”のどちらの部分にあるのか?」という“問い”がまた新たに提示されるのだ。

ØMI - ANSWER... SHADOW (Official Music Video)

 ただし同曲でも繰り返し歌われているように、これは〈答えのない〉問いだ。一度だけ、他者からの愛が注がれた瞬間を指して〈答えはここに〉と歌う一節があるが、それも確信というよりは儚い祈りのように感じられる。そういったソリッドな視点は「Can You See The Light」においてもまた同様で、力強い覚悟を示す言葉が躍る中で〈終わりの始まりかもしれない〉という、およそLDHのパブリックイメージからは結び付かないような絶望を覗かせるフレーズが印象的に歌われる。

ØMI - Can You See The Light (Official Music Video)

 ただ、昨年にも「LDHが太陽であれば、僕は月という、相反するエンタテインメントが、同じLDHという大きな傘の中に存在して、全く全然違う毛色のアーティストがいてもおもしろいんじゃないかなと僕は思っています」(※1)と語られていた通り、これらのリリース自体がまさしく“表裏一体の二面性”の表現にもなり得ているのだ。そこもまた、彼のソロ作品の魅力と面白さである。

 ここまで記した通り、すでに語られるべき魅力の多い作品ではあるが、何よりもこの“問い”に対する意志や希望を見出す祈りのような思いは、最終的に何処へと辿り着くのか。EPの発売を心待ちにし、いち受け手としての“答え”を見つけていきたいと思う。

※1:https://realsound.jp/2020/02/post-503883_2.html

■日高 愛
1989年生まれの会社員。

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