ONE OK ROCK、主題歌務める映画『るろうに剣心』シリーズとの深い共鳴
日本が世界に誇る映画シリーズ『るろうに剣心』(大友啓史監督)。佐藤健を主演に迎え、2012年から幕を開けた同シリーズは、2014年の2作品を経て、ついに今年、『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』の公開をもって完結に至る。矛盾と不条理に満ちた世界を変えるために、壮絶な覚悟を胸に戦い続ける主人公・剣心。自らを支配する悲哀を受け入れながら、新しい時代のために剣を振るう「侍」の精神性などといった剣心の生き様が、制作陣による誠実な努力と果敢な挑戦心によって実現した完全世界水準のアクションと結び付いたという意味で、このシリーズが持つ意義は日本映画界にとってあまりにも深い。
そして、『るろうに剣心』シリーズにとって切っても切り離せない重要な要素が、ONE OK ROCKが手掛ける主題歌だ。過去3作品の主題歌「The Beginning」、「Mighty Long Fall」、および「Heartache」は、どれも彼らにとって大きなブレイクスルーのきっかけとなった楽曲であり、その意味で、約10年間にわたる同シリーズとのコラボレーションはONE OK ROCKにとってもかけがえのない意義があるのだ。今回は、これまでONE OK ROCKが手掛けてきた映画『るろうに剣心』シリーズの主題歌、そして、4月公開の『るろうに剣心 最終章 The Final』の予告編にて一部聴くことができる新曲「Renegades」について書いていきたい。
まず、2012年に公開されたシリーズ1作目『るろうに剣心』の主題歌「The Beginning」。ミュージックビデオの再生回数は1.7億回超え(2021年3月22日現在)。今でも彼らのライブにおける重要な局面で披露され続けている代表曲の一つだ。そして、この楽曲を収録したアルバム『人生×僕=』、および、同作を携えたツアーを終えてから、ONE OK ROCKは明確な意志をもってして次のフェーズへと突入する。その意志とは、「日本から世界を目指す」という鮮烈な「志」である。
その幕開けを飾ったのが、『るろうに剣心 京都大火編』の主題歌「Mighty Long Fall」だ。緻密なエンジニアリングによって実現した音響空間は、それまでのバンドサウンドを基調としたフォーマットから鳴らされる音像とは全く異なる奥行きと深みを感じさせる。後方に重点を置いたリズムは、かつてないほどの緊張感をもたらし、そして、まるで大きく翼を広げるようにして一気に空高く飛翔するサビのメロディは、全く新しいロックのカタルシスを共有してくれた。アメリカの地で、制作の初期段階からジョン・フェルドマンをプロデューサーに迎えて制作された同曲をもってして、ONE OK ROCKは本格的に世界進出の口火を切ったのだ。
続けて公開された『るろうに剣心 伝説の最期編』の主題歌には、深い温かみを秘めた壮大なロックバラード「Heartache」が起用された。当時から、「Wherever You Are」がテレビCMソングに起用されるなど、Takaのメロディメイカーとしてのセンスは定評があったが、この曲ではそれだけではなく、彼のシンガーとしての卓越したスキルを再確認できる。なお、同じくアメリカで制作された同曲は、アーノルド・ラニをプロデューサーとして迎えている。完全世界水準の表現を追求しながら、同時に「ロック」の可能性を押し広げていく。彼らの果敢なトライアルは、この2曲を収録した『35xxxv』を一つのステップとして、2017年にリリースされた『Ambitions』において一つの結実を見せる(なお、『Ambitions』のリードトラック「Taking Off」は、2016年に公開された大友啓史監督の『ミュージアム』の主題歌に起用された。ここから、大友啓史監督とONE OK ROCKが深い信頼関係で結ばれていることが分かる)。