FANTASTICSがレトロな80年代サウンドをプレイバック 今、当時のカルチャーを学ぶ理由

FANTASTICS from EXILE TRIBE「Play Back」

 ただ、こうして大胆なまでにレトロに徹した音色の中でも、そこに2人のボーカルが乗ってくると瞬時に彼らの志向する“スタイリッシュ”さが感じ取れるようになるのが面白い。恐らくそこには、跳ねたリズムの中でグルーブを作り出す詞の小気味よい語感と譜割り、そしてやはり2人のボーカリングが大いに貢献している。展開ごとに表情を変える八木勇征の歌声が全体の手綱を取っている中で、時には初のラップパートにも挑戦しながらボーカルラインを心地良い到達点まで連れていく中島颯太の澄んだ歌声。この安定したコンビネーションは、FANTASTICSのパフォーマンスの機軸を作り上げる大きな武器の一つである。さらに言えば、ここに彼らの真髄と言える独創的なダンスパフォーマンスが加わることで、楽曲自体の印象もまた変わってくるだろう。この点は今後の情報解禁が待たれるところだ。

 この曲や『FUN!FUN!FANTASTICS』、それに連動した舞台『BACK TO THE MEMORIES』での表現を通じて、華やかだった80年代に時を巻き戻すーーそれは、ただ単に一夜の熱狂に酔いしれるためではなく、あくまで “温故知新”。つまりその先の未来を作り出すためなのだと「Play Back」は歌う。ボーカル2人の歌声をドラマチックに交差させながら〈こうやって僕らの今を/心に刻もう/いつか振り返った時に/鮮やかに/蘇るように〉と歌うCメロは特に顕著な部分だ。つまりこの“今”もまた、いつかどこかの未来における“古き良きあの時代”を成し得る歴史の一部分なのだと、この曲は宣言している。高いパフォーマンス力を有しながら同時にドラマ、冠番組、舞台演劇と一つひとつ柔軟にこなしていくFANTASTICSがそれを示してくれるのは、実に頼もしいことでもある。

 今月のホールツアー、4月の舞台、またその後の動きに関しても様々な展開が期待されるところではあるが、まずはこの懐かしいサウンドの中で、FANTASTICSならではの世界観を堪能しよう。

■日高 愛
1989年生まれの会社員。

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