YUI、自然体な歌声で包み込む“あの頃” セルフカバー作に感じた進化

 2月24日、YUIのメジャーデビュー15周年を記念したセルフカバーミニアルバム『NATURAL』がリリースされた。デビュー曲「feel my soul」や代表曲の一つ「CHE.R.RY」など全6曲が収録されている。

YUI『NATURAL』

 2012年12月31日に活動休止して以降、ロックバンド・FLOWER FLOWERのボーカルとしての活動が主軸だった彼女がYUI名義で活動再開したのは昨年の11月。YouTube上の配信ライブ『THE FIRST TAKE FES vol.2』に登場し、8年ぶりに歌ったと言われる「TOKYO」、サポーターに佐藤嘉風を迎えた「CHE.R.R.Y」2曲を披露した。当時と変わらない胡座をかいた歌唱スタイルは懐かしさを醸成し、YUIと共に青春期を過ごしたリスナーは自身の日々を重ねながら胸を震わせたに違いない。

YUI - TOKYO , CHE.R.RY / THE FIRST TAKE FES vol.2 supported by BRAVIA

 今作『NATURAL』に収録された楽曲は、FLOWER FLOWERのメンバーと共に新たなアレンジが施され、現在のYUIが歌う形で制作された。

 全体を通して印象的なのが、YUIの存在自体を支えるかのような落ち着いたリズム隊の存在だ。バンド形態ではそれぞれの個が溶け合うことで音楽性を高めている一方、同作では歌声を引き出す土台としての役割に徹している。安心感があるからだろうか、音の上にのせられた歌声は一段と柔らかさと包容力が増幅した。

 一曲目にあたる「feel my soul」のイントロは出色の一言。ピアノの音とハミングのシンプルな構成ながら、まるでスタジアムライブのオープニングかの如く豊かな創造性を含む。1分18秒かけてようやくたどり着いた歌い出しは女神降臨を彷彿とさせるほど。ずば抜けた透明感ある声質は今も健在で、さらに成熟した美しさが加わっている。

 今回リアレンジされたのはYUI名義の中で代表的とも言える6曲だが、改めて聴いていると〈君がくれた笑顔 落とした涙は 僕の胸の 深い傷に 触れて消えた〉(「feel my soul」)、〈ポケットの この曲を 君に聴かせたい〉(「Good by days」)、〈青空にいま 叫びたいほど 君を想ってる〉(「SUMMER SONG」)など、ほとんどの楽曲に「君」が居るのに気付く。

 時には心を寄せる誰かを、時には冷静に自分自身を。一定の距離感で見つめる静かな孤独は、彼女の音楽性を語る上で欠かせない要素だ。それは聴く者に安らぎと少しの希望を与えてくれる。人との関係に躓くのも、さみしさに戸惑うのも、自分だけじゃないと。

 〈I feel my soul〉そう歌う少女は、17歳だった。儚げな佇まいと凛と鳴る声、芯の強さを感じさせる眼差し。葛藤や戸惑いを率直に綴り、自らの意志で未来を切り開いていく様。歌詞にのせられた大人と子どもの狭間で揺れる心境は、等身大のYUIそのものだったと記憶している。

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