ぜんぶ君のせいだ。ソロインタビュー第1弾:征之丞十五時
ぜんぶ君のせいだ。征之丞十五時が自分らしさを手にするまで 「好きなものを好きと言える“大切な居場所”になった」
ぜんぶ君のせいだ。が7人の新体制となり、本格的な再スタートを切った。2020年夏にメンバー脱退や活動休止という大きな節目を経て、一時的にグループは如月愛海と征之丞十五時の2人だけに。そこへ甘福氐喑、もとちか襲、雫ふふの3人が加入し、同年11月には新5人体制でのお披露目ライブを行った。さらに2021年になると、新たにメイユイメイ 、个喆の2人が加入し、現7人体制でのぜんぶ君のせいだ。が誕生した。
編成は大きく様変わりしたわけだが、ぜんぶ君のせいだ。というグループの本質は驚くほど変わっていない。孤独で居場所のなかったメンバー同士で互いに支え合い、患い(ファンの総称)一人ひとりと目を合わせながら全身全霊で前へ進んでいく、その姿勢はますます揺るぎないものになっているのだ。現体制に懸ける意気込みはシングル『堕堕』リリース時のインタビューで語られた通りだが(参照:ぜんぶ君のせいだ。に聞く、新曲「堕堕」で爆発した7人の個性 「孤独になっても頑張れる場所が見つかるよって伝えたい」)、各メンバーの個性的なキャラクターやグループでの役割をさらに深く探るべく、リアルサウンドでは7人へのソロインタビューを行っていく。
第1回目は、征之丞十五時(ゆきのじょう おやつ)が登場。新メンバーから一気に先輩メンバーへ。突然の脱退・加入劇に一時は戸惑いながらも、前向きな性格と、好きなものへの想いを全解放することで、自分らしい活動の在り方を見つけられるようになったのだという。彼女はいかにして“征之丞十五時”となり、ぜんぶ君のせいだ。に欠かせない存在に成長していったのか。心に抱えていた葛藤や憧れ、そして「自分こそがぜん君。なんだ」と強く決意したという瞬間まで、人生初のソロインタビューを通してたっぷり語ってもらった。(編集部)
ぜん君。に入って爆発した“抑え込んでいた気持ち”
ーー『堕堕』がリリースされてMVも公開されましたけど、感触はいかがですか。
征之丞十五時(以下、征之丞):MVではゲームの世界に入り込んでキャラクターみたいになってるんですけど、自分の体をスキャンするような撮影に初めて挑戦しました。普通に歌ったりダンスするシーンも撮ったので、「どういうふうにMVに反映されるんだろう」と思って見てみたら、「こうなるんだ!」っていう驚きがすごくて。ストーリー性もあって面白いMVだし、これはぜん君。ならではだなって思いました。
ーー遊び心のレベルがますます上がっていて素晴らしいMVだったんですけど、十五時さんとしてはどんなこだわりがあったんでしょう?
征之丞:今回は可愛い感じの衣装を着させていただいて、髪型も普段は下ろしているんですけど、MVではツインテールにしているんです。でも、表情とかダンスはキレッキレにしたいなって。ぜん君。ってちぐはぐなところがあって、可愛いし面白いけどカッコいいところがいっぱいあるので、そういう表現ができたらいいなと思っていました。
ーー可愛い髪型や服装っていうのは、ぜん君。に入る前からお好きだったんですか。
征之丞:そうですね。可愛いものがもともとすごく好きなんですけど、子供の頃はあまりうまく表に出せなくて、それがいつからか爆発したんです。お洋服もスカートしか持っていないし、ピンクのものをいっぱい持っているので、今は可愛いもの好きな自分を出せるようになりました。でも、ライブではやっぱりギャップを見せたいから、ヘドバンとか結構するんですけど(笑)。「十五時って可愛いのに、ステージ上ではめっちゃイケメンになるよね」みたいに言ってもらえると、狙い通りだなと思いますね。
ーーその抑えていた気持ちが爆発したきっかけとしては、何が大きかったんでしょうか。
征之丞:もともと少女漫画も好きだったんですけど、周りにそういう子があまりいなかったんです。『カードキャプターさくら』が大好きで憧れていて、主人公の桜ちゃんの「絶対大丈夫だよ」というセリフに今でもすごく助けられていて。でも、目立つのも得意じゃなかったので、そういう自分をあまり外に出せなかったんです。スカート履きたいし、フリルのものや少女漫画が好きな自分を押さえ込んでいたんですけど、ぜん君。に入って征之丞十五時になってからは、好きなものを堂々と好きと言えば、みんなが受け入れてくれるんですよ。メンバーもスタッフも患いさんも。そういう居場所ができたのは大きいと思います。
ーーなるほど。客席からステージ上のぜん君。を見ていた頃は、どういう人たちに見えていたんですか。
征之丞:すごくキラキラして見えていたので、自分が生きている世界とは全然違うなと思っていたんですよね。でも、ぜん君。はすごい熱量をライブにぶつけているのを感じてたので、自分も変わりたいなと思うようになりました。
ーーいわゆるアイドルらしからぬパフォーマンスに衝撃を受けたと話していましたもんね。でも、衝撃を受けても、オーディションまで受けるというのは、よほど心が揺さぶられたからだと思うんですけど、そこまで駆り立てられたのはどうしてだったんでしょう?
征之丞:うーん......朝起きて、出かけて、帰ってきて寝るみたいな、毎日の淡々とした生活に嫌気がさして、刺激が欲しくなったんですよね。もともとダンスが好きで、学校のお昼休みとか、友達と一緒にAKB48さんのダンス動画を真似して踊ったりしていたんです。なので自分もステージに立って踊りたい、みんなに見てもらいたいという気持ちも心の奥にはあったんですけど、なかなか言えなくて。そんな時にコドモメンタルのオーディションを偶然見かけて、応募の締め切りかなりギリギリだったんですけど、「今しかない。どうにでもなれ!」みたいな気持ちで応募しました。
ーーダンスを好きだったことが、応募の後押しになったと。
征之丞:はい。でもダンスは好きだけど、歌は得意じゃなかったんです。小さい時、お風呂場で気持ちよく合唱曲を練習していたら、お姉ちゃんに「下手だね」って言われて(笑)。それから「自分は歌が下手なんだ」と思うようになって、友達とカラオケに行っても一人では歌えなかったんですけど、今こうして歌うことが仕事になったら、みんな「十五時の声が好き」と言ってくれるので、自信がついて歌えるようになりました。
ーー歌を好きと言ってくれる人が増えたことで、歌い方にも影響した部分はあるんでしょうか。
征之丞:ありますね。とにかく嬉しいのが一番だったので、「めっちゃ聴いて、私の歌!」という気持ちで歌えるようになりました(笑)。ただ、最初の頃のレコーディングは「下手じゃないし音程も合っているんだけど、感情を入れるのが下手だから、歌も下手に聴こえてしまうよ」みたいなことはよく言われていましたね。でも、それは自分の努力で直せるなと思ったので頑張りました。
ーーどんなふうに取り組んだんですか。
征之丞:めーちゃん(如月愛海)が歌詞をどういう気持ちで歌うのがいいか、考える練習を教えてくれて。1曲の中でも、最初はこういう気持ちだけど、Bメロでこういう気持ちに変わって、その後はこういう気持ちで歌っている......というのをメモ書きしながら練習していたので、十五時も一緒にやるようになりました。そしたら、ぜん君。にいろいろあったことへの気持ちとか、患いさんやメンバーに対する気持ちを歌に込めやすくなった気がします。ぜん君。への想いが「好き」から「大切な自分の居場所」に変わっているので、心境の変化が歌にも反映されたのかなって。
「楽しいだけじゃなくて真剣」
ーーぜん君。が自分の居場所になったことで、具体的にどんな気持ちを込められるようになったんでしょうか。
征之丞:「今は私がぜん君。だぞ!」という強い気持ちですね。自分が入ってからのぜんぶ君のせいだ。は、以前とは違うものだっていう不思議な感覚ももちろんあるんですけど、いつでもその時のぜんぶ君のせいだ。が一番カッコいいと思っています。
ーー激動の変化があったとは思えないほど、毎回堂々とした新曲がリリースされているのは、現体制が一番カッコいいんだという自信の表れですよね。ただ、グループの編成が変わったことで、十五時さん自身の役割も変わってきたんじゃないでしょうか。
征之丞:今までは、めーちゃん含め先輩がいて、十五時たちが新人として入ってきた感じだったので、なんとなく甘えていたんですよね。そこから、メンバーが脱退して新しい3人が入ってきて、ずっと新人じゃいられないという責任感は芽生えました。でも、メンバーの先輩・後輩感は全然ないし、役割は変わったけど、日頃強く感じているわけじゃないんです。
ーーあくまでメンバー同士のフラットな関係性の中で、自然に発揮されると。
征之丞:でも、頼りないくせに頼られるのは嬉しいので、ダンスで「ここはどうなっているの?」とか聞かれると、「ここはね!」ってちょっと先輩ヅラして張り切っちゃう時もあります(笑)。
ーーはははは。そうやって教える立場になったことで、十五時さん自身もパフォーマンスへの向き合い方が変わったんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。
征之丞:はい。楽曲の振り付けってちゃんと決まっているのに、踊っているうちにアレンジして、自分が踊りやすいようにどんどん変わっていっちゃうことがあるんです。みんなに教えることでそれを再確認できましたね。最初こうやって踊っていたのに、今ちょっと自分流に変えちゃってるなとか(笑)。めーちゃんは「そのクセが曲に合っていればいいよ」って言ってくれるんですけど、やっぱりみんなで揃えるところは揃えたいので、そういう基本的なところを再確認できたのは良かったなと思います。
ーーその振り付け本来の意味を思い出したりとか?
征之丞:それもあります。十五時が入った時はまっそん(ましろ)が教えてくれたんですけど、その時の言葉を思い出して、「この振りはこういう意味だから、手がパーじゃなくてちょっと掴んでいる感じなんだな」とか。中学校で友達と踊っていた時は楽しければいいやっていう感じだったんですけど、今は人に見てもらうことを意識しているので、楽しいだけじゃなくて真剣にやれています。とにかく「見て!」という気持ちが強いですね。
ーーこれからメンバー全員にインタビューしていく中で、きっと7人とも同じことを言うんじゃないかと思ってるんですけど、「私はここにいるぞ」とか「私の歌を聴いて!」という気持ちが、ぜん君。は人一倍強いですよね。どんなに自信がないところからスタートしても、このグループに入るとみんな不思議とその感情が漲っているように感じます。
征之丞:その通りですね。もともと歌は得意じゃなかったけど、自分で選んでこの道に来て、歌っているうちに褒めていただけるようになったので、どんどん聴いてほしいという気持ちが強くなりました。
ーーその要因は何が一番大きいんでしょうか。患いさんの声援なのか、メンバーとの関係性があるからなのか。
征之丞:その全部ですね。患いさんの声も大切だし、メンバー全員が同じ気持ちで活動しているからお互い信頼できているのも大きいです。安心してパフォーマンスできるし、それを患いさんに見てもらって、好きと言ってもらえたら自信につながっていく。幸せなサイクルができているんじゃないかなって。