1st EP『TERMINAL』インタビュー
HALLCA・仮谷せいら・AmamiyaMaakoによる新プロジェクト、はるかりまあこ 『TERMINAL』で表した個性
ソロのシンガーソングライターとしてそれぞれ活躍中のHALLCA、仮谷せいら、AmamiyaMaakoによる新プロジェクト、はるかりまあこの1st EP『TERMINAL』が、3月17日にリリースされる。(配信開始は3月3日)
はるかりまあこは、昨年行われた彼女たちのスリーマンライブを経て結成。EPには、すでにライブでも披露されている「Glitter」を始め、はるかりまあこのテーマソングともいえる表題曲、さらにはメンバーそれぞれの“テーマソング”が収録され、異なるルーツ、表現方法を持つ3人の個性が時に混じり合い、時に弾けあいながらキラキラとしたサウンドスケープを展開している。コロナ禍に制作されたこともあり、聴き手への(時には自分自身への)エールが散りばめられた歌詞も感動的だ。
今回リアルサウンドでは、メンバー3人による鼎談インタビューを行い、『TERMINAL』の制作秘話をはじめ、結成の経緯やこれまでの道のり、影響された音楽について和気藹々と語り合ってもらった。(黒田隆憲)
ターミナルのような存在にしたい
ーーまずは、それぞれソロで活動している3人が新たなグループを結成した経緯から教えてもらえますか?
AmamiyaMaako(以下、Amamiya):去年、私がリリースツアーで名古屋と大阪へ行くときに、(仮谷)せいらちゃんとハルちゃん(HALLCA)に「もしよかったら一緒に出てくれませんか?」みたいな感じで声をかけさせていただいて。その前から何度かお会いしたことはあったんですけど、一緒にインストアライブを回るなど、過ごす時間が長くなってどんどん仲良くなっていって。
仮谷せいら(以下、仮谷):私とMaakoちゃんは、どちらかというと奥手な方で、あんまり自分から話しかけられないタイプなんですけど、それをハルちゃんが引っ張ってくれたのも、仲良くなった大きな要素の一つでした。
ーーお互いのことは、皆さんどんなふうに思っているのですか?
Amamiya:えー(笑)。まずハルちゃんは、明朗快活で元気なイメージ。
仮谷:確かに! 喜怒哀楽が結構しっかりしているかも。
Amamiya:すごく大らかなんだよね。
HALLCA:そうかな(笑)。元々私はEspeciaというガールズグループのリーダーをやらせてもらって、解散してソロになった時に、寂しくて人が大好きになっちゃったんです(笑)。しかもせいらちゃんとMaakoちゃんは、同じソロという境遇で頑張っている人たちだし、思い切って話しかけたら優しくしてくれるから……。
仮谷:あははは!
HALLCA:それで嬉しくて、自分から懐いていっちゃいました。
Amamiya:せいらちゃんは元気いっぱいだよね。犬みたい(笑)。どこに行っても、せいらちゃんがいるところでは誰かが絶対に笑っているイメージ。
仮谷:ええーほんと?(笑)でも、心を開かないとなかなかそこまではいかない。
HALLCA:そう、それがすごく意外なんだよね。
仮谷:Maakoちゃんは、しっかり者のようで天然なところもあるよね。興味あることとか、ツボなところが面白い(笑)。第一印象はクールビューティーだったので、突然テンション上がったりしているのを見るとびっくりする。
HALLCA:Maakoちゃんは、動物でいうと猫だなと思います(笑)。
Amamiya:じゃあ、ハルちゃんはウサギかな。
HALLCA:そうかも、寂しがり屋だし(笑)。
Amamiya:そんな3人で回ったリリースツアーの締めくくりとして、東京でもスリーマンをやろうと動いていたんですけど、結局コロナでなくなってしまったんですね。それで「離れれば離れるほど……」じゃないですけど、逆に絆のようなものが深まった気がして。「ちょっと1曲作ってみようか」という話になりました。
ーー結成するにあたって、どんなグループにしようと思いましたか?
Amamiya:最初は1曲の予定だったので、とにかく踊れる曲にしようと。それが、本作にも収録されている「Glitter」。評判が良くて「EPを出そう」という話に発展したので、そのときに慌ててコンセプトを考えました(笑)。3人それぞれソロをやりつつ、はるかりまあこで一つに交わるから、それを「駅」に例えてみて。そこから3つの路線が伸びていて、「私たちはそれぞれの道を歩んでいるんだけど、いつでもこの駅で会えるし、その時は一緒に歌っていこうよ」みたいな。そういうターミナルのような存在にしたいなと思いましたね。
ーー表題曲「TERMINAL」は、3人のテーマ曲ともいえる歌詞だったのですね。音楽的には、それぞれどんなルーツを持っているのですか?
Amamiya:うちは両親が音楽好きで、父親はロック、母親はR&Bみたいな感じで家の中で四六時中音楽が流れているのを幼少期から聴いていました。私自身はTLCやジャネット・ジャクソン、シェリル・クロウなどが好きだったんですけど、思春期になってバンドを結成してからは日本のロック、ポップスをカバーしていましたね。ーーバンドでは、何の楽器を担当していたのですか?
Amamiya:最初はアコギを弾いていたんですけど、そのあとドラムをやってました。でも、曲によって担当楽器が替わるという特殊な部活で、鍵盤もやったしギターもベースも弾いたことがあります。
仮谷:えー、すごい!(笑)
ーーそこでいろんな楽器を演奏したことが、現在の活動にも生きているのですね。
Amamiya:そうだと思います。そんなに詳しいわけじゃないけど、アンサンブルの中での楽器の役割みたいなものを学ぶことができたのは良かったなと。
ーー2019年にリリースしたミニアルバム『WEAR』は、渋谷系っぽい曲や、ジャズファンクっぽい曲などが収録されていますよね。その辺の音楽性はどこから来ているのですか?
Amamiya:私、『pop'n music』というゲームが大好きだったんですけど(笑)、その中で使われていた音楽がすごく渋谷系っぽくて。そこからの影響はかなり大きいと思います。
ーーなるほど。仮谷さんは?
仮谷:私は、5歳の頃にお母さんが離婚して母子家庭になったんです。そのときに「何かひとつ夢中にさせることを与えておけば、絶対にまっすぐ育つ」という考えがあったみたいで(笑)、それで「沖縄アクターズスクール」の大阪校に入れてもらったんですけど、まんまとハマってしまって。ダンスと歌に明け暮れる日々になり、「音楽を体で表現するアイドルになりたい!」という気持ちになったんです。そのあと別の芸能スクールに入ってもう少し本格的に活動を始めたのですが、当時は歌よりもダンスの方が好きでした。ーーそれはどうして?
仮谷:私よりも歌が上手い子たちがたくさん集まっていたんですよ。ピッチが的確で、肺活量もすごくて。この中にいて歌で勝負するのは無理だし、「私はダンスかな……」と。でも、のちに音楽事務所に入ることになって、そこで「ダンスか歌か演技か、どれか一つ選びなさい」と言われて。その時は、ダンスでご飯を食べることがあまり想像できず、歌か演技か、どっちにしようかで迷ったんです。
HALLCA:そうだったんだ!
仮谷:当時、家にはピアノがあったので、「だったら家で曲が作れるし、歌にしてみれば?」と言われて、そこから曲を作ったり歌詞を書いたりすることを、高校生の頃からやり始めました。
ーー「水星 feat.オノマトペ大臣」のMVに出演したのは?
仮谷:音楽事務所を辞めるか辞めないかくらいの頃ですね。で、辞めてからは1年くらいフリーで活動をしていて、その時はDTMなんて機械オンチだし絶対できないと思ってたんですけど、どうにかライブをしなければと思ってピアノで弾き語りのライブを大阪でやっていたときに、今のマネージャーさんに声をかけてもらって、PUMP!に所属することになりました。でも、私はCDをリリースしたくなかったんですよ(笑)。
ーーというのは?
仮谷:今までは「仮谷せいら」ってどんな人か分からないままでいたのが、CDというものが出来たら「これが仮谷せいらだ」みたいなことになるのが怖かったというか。「水星 feat.オノマトペ大臣」のあと、結局何も起こらなかったことで「自分は音楽があんまり向いてないのかもしれない」と思って一度挫折したのも大きかったと思います。このままのらりくらりやっていた方がいいのかな、知っている人が知ってるくらいでいいやと思っていたんですけど、そうもいかず(笑)。1年くらい時間をもらって、ようやく1枚目の『Nobi Nobi No Style』を2015年にリリースしました。
ーー音楽的には、どんな人に影響を受けていますか?
仮谷:ダンスをしていたので、私もTLCやマイケルやジャネット・ジャクソンが好きでした。自分で曲を作るとなってからは、倉木麻衣さんや光永良太さん、宇多田ヒカルさんなど日本のソロアーティストをよく聴いていましたね。日本語をうまくメロディに乗せている人が好きです。
ーーHALLCAさんは?
HALLCA:私は小さい頃から歌うことが好きで、2歳か3歳くらいの頃から永遠に終わらない「アンパンマンマーチ」を歌うような子でした(笑)。いつか歌手になりたいなと思っていたんですけど、小学生くらいの頃に一番好きだったのは大塚愛さんで、それからずっと「大塚愛さんみたいなシンガーソングライターになりたいな」と思っていました。それで、縁あってEspeciaのメンバーとしてデビューしたのですが、歌わせてもらった楽曲がシティポップや80'sディスコ、ヴェイパーウェイヴ、AORなど、とにかくカッコ良かったんです。
私、よく考えてみると昔からお父さんが山下達郎さんや竹内まりやさん、具島直子さんの曲を聴いていたので、どこか通じるところがあるんだなと後々分かってきて。そこが繋がったときに、「私が好きなサウンドはこれだ!」と思えるようになったんですよね。今はそこを意識しつつ、歌モノが好きなのは変わらないので歌謡曲のようなメロディを意識しています。アレンジャーさんに発注する時も、リファレンスとして今挙げたようなジャンルの音楽をお渡ししていますね。
ーー2019年のフルアルバム『VILLA』にも、そういう要素は散りばめられていますよね。
HALLCA:ありがとうございます。シティポップにもいろんな要素があって、正統派のシティポップももちろん好きだけど、どちらかというと私はヴェイパーウェイブ寄りの「虚無感」があるサウンドが好きで。そこはEspeciaのサウンドでも意識していただいてたなと思ったので、自分のソロでもEspeciaのサウンドを作っていたアレンジャー、プロデューサーの方にアレンジをお願いしたり、新たな刺激を受けたりしつつ作品作りをしています。