小泉今日子、筒美京平楽曲から教わったこと 『唄うコイズミさん』第2回を前に聞く

小泉今日子が語る、筒美京平へのリスペクト

猫がすっと何気に隣で座ってくれる、みたいな感覚のことがやりたかった

ーー前回の『唄うコイズミさん』で素晴らしいアコースティックなアレンジでバックアップしてくださったピアノとギターのお二人(オオニシユウスケ、真藤敬利)に、今回はコーラス(加藤いづみ)とパーカッション(中北裕子)が加わって。どういうふうに曲が変化するのか楽しみです。

小泉:あとは、Instagramのストーリーとかで、ファンの方が写真や動画に私の曲をくっつけてアップしてくれてるんですけど、わりと通な人が選んでる曲をリサーチしたりしながら。もちろん、もっとゴージャスなアレンジの曲もあるから、そういう曲はいつかビッグバンドでもやってみたいですよね、大人な感じで。それはまた考え中です。

ーー筒美さんの提供曲だけのライブを自分のオリジナル曲だけでやれる人はそんなにいないと思いますし、この機会にシングル曲だけでなくあまり知られていない名曲も、もっと聴いて欲しいです。

小泉:そうですよね。『Betty』からの曲もやりますし、B面の曲もあるかも。お楽しみに(笑)。

ーーそれに、その歌っている時間は、筒美京平楽曲への愛着を小泉さんがあらためて感じる時間でもあると思います。

小泉:シングルのB面用に作ってもらった曲でも、次の可能性みたいなものを感じさせてもらったりしてましたね。「この子、バラード歌ったらどうなんだろう?」とか、「シングルにはなかなかできないけど、実は声にはミディアムテンポが合ってるよね」みたいなことを、B面の曲やアルバムの曲で私もいろいろ教えてもらってた感じなんです。自分でも「こういうのも歌えるんだ」とか「こういう声が出るんだ」って驚いていたし、コンサートでそういう曲を歌えることをすごく楽しんでました。歌手として出会うずっと前から筒美京平ソングを見てたし聴いてたし、子どもの頃からきっと筒美さんの曲だと知らずに歌ってたんですよね。いつもいつも歌を楽しむことを教えてもらってたんだって、今でも自分が好きな筒美さんの曲を歌うと思います。

ーーお話を聞いていると、歌いたい気持ちが小泉さんのなかで高まってきてるのがわかってうれしいです。

小泉:「歌いたくなってきた」というよりは、それまでしばらくは歌う意味を自分のなかで失くしてたんです。だけど、コロナ禍になって、また小さな意味が見つかったというか、思い出したような気がしていたので、今回の筒美さんの曲を歌うという試みもそうだと思うんです。何のために歌うのかという理由が自分のなかにあれば歌えるんだなという感覚があるんです。

ーー今回はビクタースタジオからの配信が予定されています。さきほどおっしゃってたビッグバンドで歌うアイデアもおもしろそうだし、いろんなロケーションで歌っていくのもおもしろそうですよね。

小泉:なんか今、すごくいろんな友だちから煽られてるんです。来年が私のデビュー40周年になるらしくて。「40周年こういうのやったらどうですか?」みたいな企画をいろいろ持ちかけられてて(笑)。でも、これは前々から思ってるんですけど、いつもは無理でも節目節目では責任を取っておかないと、という感じはしてます。SNSを通じて「中学生からずっと好きです」とか書いてあるのを見つけると「ありがてえなあ」みたいな感じにもなるんです。そういう皆さんは私が映画やドラマに出たりするのも楽しんでくださってるんでしょうけど、そういう人たちがあげるストーリーには必ず曲がついていたりするので、彼らの青春に対して責任は取らないとなという気持ちはずっとありますね。

ーーそういう思いも受け取り、今は40周年に向けて助走をしているという感じですね。

小泉:そうですね。急にやるのも恥ずかしいので(笑)。でも、本当にコロナ禍のなか、別のアーティストの方に呼ばれることも多かったんですよ。岩井俊二監督の映画(『8日で死んだ怪獣の12日の物語』)で「連れてってファンタァジェン」をセルフカバーしたり、豊田利晃監督の映画『破壊の日』でテーマ曲「日本列島やり直し音頭二〇二〇」や、のんとも。Mでの「明日があるさ」(アルバム『ショーがはじまるョ!』)への参加とか。

ーー「日本列島やり直し音頭二〇二〇」は向井秀徳 、マヒトゥ・ザ・ピーポー、ILL-BOSSTINO、伊藤雄和というすごい面々との参加でしたし、「明日があるさ」は『あまちゃん』で一緒だったみなさん(のん、大友良英、Sachiko M、渡辺えり、尾美としのり)も参加された楽しさがありましたよね。『TOKYO DANCE MUSIC WEEK 2020』での無観客配信ライブ(9月13日)や、明後日で企画された下北沢本多劇場でのシリーズイベント「asatte FORCE」の『こころ踊らナイト』(10月15日/出演:高木 完、スチャダラパー、川辺ヒロシ、Chieko Beauty、Ed TSUWAKI、小泉今日子)でも歌う機会がありましたもんね。

小泉:そういういろいろなことも助走になった感じですね。みんな世の中にメッセージを送りたいときに私のことを思い出してくれるんだなと思いました。だから私も、仲間が「力を貸して」って言ったときにいつでもパッと行ける人でありたい。

ーー行きたいところにパッと行ける感じは前回の『唄うコイズミさん』にもありましたよね。ひさびさのソロライブで特別なイベントではあったけど、「何年かぶりに降臨されました」みたいな大仰な感じではなく、ふらっとカジュアルに歌っている感じ。

小泉:そうですね。配信を見た周りの人からも「さっと来て、さっと歌って去る」みたいな感じが良かったよ、って言われました(笑)。「泣いてた」みたいな人も多かったですけどね。みんな心がすごく弱ってたんだと思う。でも、そういうときに「元気出しましょー!」って感じは私はできないんですね。なんか、猫がすっと何気に隣で座ってくれる、みたいな感覚のことがやりたかった。猫ってそういうところあるじゃないですか。「ここにいたの? あったかいと思った」みたいなね。そういう感じでこれからもやっていきたいです(笑)。

■『唄うコイズミさん 筒美京平リスペクト編』
【視聴期間】
番組配信:2021年3月21日(日) 18:00~
見逃し配信:2021年3月22日(月)10:00~3月28日(日)23:59
【視聴料金】
3000円(税込)約50分のアコースティックライブ
【配信サイト】
イープラス https://eplus.jp/utaukoizumisan/st/
2021年2月20日(土)10:00~3月28日(日)18:00まで

ぴあ https://w.pia.jp/t/utau-koizumi/
2021年3月6日(土)10:00~3月28日(日)18:00まで

「唄うコイズミさん」スペシャルサイト

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