アニメ『約束のネバーランド』の世界にスリルを与える劇伴 小畑貴裕が生み出す音楽の魅力

緊張をより活かす、豊かな“遊び心”から生まれた劇伴たち

『約束のネバーランド Season 1&2 (Original Soundtrack) 』

 さらにSeason 2の劇伴には、小畑のルーツであるジャズのテイストもより明確に取り入れられている。特に注目したいのが、シェルターでナットが演奏した楽曲だろう。楽曲自体ジャズそのものだし、そのタイトルも名ジャズピアニストでありシンガーでもあるナット・キング・コールになぞらえた「ナットキングクール」。ここには小畑の遊び心が、顕著ににじむ。

 ちなみに遊び心という点では、Season 1のクローネ絡みの曲も忘れてはならない。ワルさを含みながらも、アコーディオンの音色がどこか憎めなくさせる彼女のテーマ的存在「クローネの企み」はもちろん、タイトル・サウンドともに「G線上のアリア」のオマージュである、クローネの最期を飾った「GF線上のクローネ」といった特徴的な楽曲にも改めて注目してみてほしい。

 物語の軸になるシビアさや緊張感を生み出す楽曲を中心に、ときとして遊び心をより強く出した楽曲も交えることで、小畑の音楽はサウンドの面から物語に緩急を与えている。そして、それをあえて用いない静寂のシーンも交えられることで視聴者へより強いスリルを与え、アニメーション作品としてのクオリティをさらに高めてくれたと言っても過言ではないだろう。

 Season2の放送も終盤。物語の続きを見届けながら、サントラを通じてそれぞれの楽曲に込められたこだわりを紐解いてみてはいかがだろうか。

■須永兼次(すなが・けんじ)
アニメソング・声優アーティスト関係を中心に活動するフリーライター。大学の卒論でアニソンの歌詞をテーマにするほど、昔からのアニソン好き。現在は『リスアニ!』『月刊ニュータイプ』や『TV Bros.』等に寄稿。

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