アルバム『Between The World And Me』インタビュー
INORANが考える、流れに身を委ねることの大切さ 「気持ちに余裕を持っていないと乗り越えていけない」
曲作りにはロマンも感じながら向き合っている
ーーまた、2作品のアートワークにも関連性が感じられますよね。
INORAN:『Libertine Dreams』と『Between The World And Me』はともに同じデザインチーム、同じカメラマン、同じアートデザインの方なんですけど、『Between The World And Me』のアートワークは上がってきたとき、最初は「ん、どうなのかな?」と思ったんですよ。僕はだいたい直感でいいかダメかを決めちゃうんですけど、ちょっと違和感を感じるものって自分の中にないものを啓示しているわけなので、一晩寝かせることで「すごくいいな」という視点に変わって。それで一発OKでしたね。
ーーデザイナーさんからはどういう説明を?
INORAN:メールには書いてありましたけど、それを言っちゃうと種明かしになっちゃいますしね(笑)。イマジンしてもらえればと。
ーーわかりました。では、『Between The World And Me』というタイトルはどこから生まれたものなんでしょう?
INORAN:『Libertine Dreams』が出るちょっと前に、このワードがたまたま自分の目に入ってきて、次に続くアルバムタイトルはこれだなと決めました。本のタイトルなんですよね。それがすごく響いて、絶対にアルバムタイトルにしようと。
ーーでは、アルバムに収録されている同タイトルの楽曲名もそこから?
INORAN:そうです。実はこの「Between The World And Me」という曲だけが、この2作品の一連の流れで作ったものではないんですよ。
ーーえっ、ステイホーム期間に日々作った曲とは別なんですか?
INORAN:はい。アルバムの曲ができたあとに趣味として書いた曲で、最初はピアノだけ、次はリズムレスになってと、遊びながら作ったものがある日、ピアノのメロディをボーカルのメロディラインに置き換えたらとても素晴らしい曲になるなと、ビビッときて。じゃあこれを「Between The World And Me」という曲にしようかなと、あとから決めました。ずっと気づいていなかったけど、実はすぐそばにいたものが一番大事だったことを発見し、アルバムのど真ん中(※5曲目)にどんと置いたわけです。
ーーそうだったんですね。でも、ひとつ前の「Dawn of Tomorrow」から「Between The World And Me」へと続き、さらに「Heart of Gold」へと流れていく構成といい、前後の楽曲含めてとても綺麗な形に収まりましたね。
INORAN:そうなるために生まれてきたというか、もともとそういう意思を持って生まれた曲なんだろうなと。僕は曲作りにはそういうロマンも感じながら向き合っています。
常に覚悟を持ってプレイをしていきたい
ーーINORANさんは昨年9月に50歳の誕生日を迎えたばかりですが、今もなお新たなチャレンジに対して貪欲。そのモチベーションの源泉はどこにあるのでしょう?
INORAN:僕はただ、流れに身を委ねているだけというか。この先も何があるのかわからないけど、恐怖だけは感じないように生きていきたくて。物事が突然悪い方向に進んでしまうこともあるじゃないですか。RYU(※RYUICHI/河村隆一)が病気になったときもそうだなと思って。でも、何があろうとそれを蹴飛ばすんじゃなくて、そこに委ねてその中で泳いでいくことがすごく大事なんだなと。そういう意味では、常に気持ちに余裕を持っていないと乗り越えていけないなと思いました。いっぱいいっぱいだと、人への思いやりもなくなってしまう。それこそ、いつ親や友達に何があるかわからないですし、そのときのための自分に余裕を残しておく。それは時間もそうだし、気持ちの部分でもそう。「いやあ俺、今は無理だよ」じゃダメ。それを2020年がみんなに教えてくれたわけですしね。
ーー世の中が殺伐とすればするほど、心の余裕が欠けて自分を見失ってしまいがちですしね。
INORAN:そうですね。ともすれば、自分を信じてあげることもそう。当たり前のことなんですけど、なかなか難しいんですよね。
ーー先ほどの話じゃないですけど、この2枚のアルバムは今聴くことでリアリティも増すし、時間が経ってから聴いても「あのときの自分はこうだった」と過去を振り返るためのアルバム代わりにもなる、まさに人生のサウンドという言葉がぴったりな作品だと思いました。
INORAN:そういう作品をこのタイミングに作れたことは、すごく幸せなことだと思います。
ーーここから先、INORANさんからどんな作品が生まれてくるんでしょうね。
INORAN:それも突然何が起こるかわからないですし、常に覚悟を持ってプレイをしていきたいです。エリック・クラプトンが「これを毎回最後だと思ってプレイしている」と言っていますけど、本当にそうですよね。僕、「自分が死んだときに流してくれ」っていうバラードを、アルバムごとにアップデートしているんです。今作での「Leap of Faith」の前が「Starlight」(『2019』収録曲)、「Starlight」の前が「Wherever I Go」(『Thank you』収録曲)と、そんな心意気でやっているような気がします。
ーーそれが1stソロアルバム『想』(1997年)から続いていると。
INORAN:『想』といえば、昨日この新作2枚を聴いたあとに、久しぶりに『想』を聴いたんですけど、新作とまったく一緒でしたね。
ーーああ、それはわかります。僕も今回の2枚を聴いたとき、真っ先に『想』を思い浮かべたので。
INORAN:僕が覚えていないのか一周回ったのかわからないですけど、一緒じゃんと。自分は自分なんだと思いましたね。僕を支えてくれる人がいるから、こんなにアルバムを出せるし、みんなと時間を共有するために作り続けているので。LUNA SEAとか全部含めると、今のところアルバムを35枚作ったのかな。現役30年で35枚ですから、まあいいペースだなと(笑)。いつ終わるかわからないけどそれを恐怖と感じず、クサい表現ですけど、魂を焦がしていきたいと思います。
■リリース情報
『Between The World And Me』
発売:2021年2月17日(水)
【完全生産限定盤 -LP SIZE BOX-】¥12,000+税/CD+Blu-ray+写真集/LP SIZE BOX仕様
[CD]
01. Hard Right
02. Adrenaline Rush
03. Falling
04. Dawn of Tomorrow
05. Between The World And Me
06. Heart of Gold
07. 63′
08. Sinners on the Run
09. Minutes to Midnight
10. You’re Not Alone
11. Leap of Faith
[Blu-ray]
Leap of Faith(Music Video)
INORAN 50TH ANNIVERSARY SPECIAL 〜VISION〜
[写真集] 全28ページ予定
KING e-SHOP限定販売
KING e-SHOPオリジナル特典:サイン入りアナザージャケット色紙、ボーナス映像視聴カード
【通常盤】¥3,000+税/CD
[CD] 全11曲収録(完全生産限定盤-LP SIZE BOX-と同内容)
メーカー特典:A5サイズクリアファイル(通常盤対象)