会場でもモニター越しでも多くの人が涙と共に抑えていた感情を溢れ出したであろうブロックの後は冒頭の木村の発言からの新曲「追い風」のライブ初披露。井上の曲紹介、「初披露『追い風』インストゥルメンタル、聴いてください」には声を出すことを抑えている会場でも笑いが生まれている様子が伝わってきた。肝心の演奏はエレクトロニックな部分とプリミティブさが1曲の中で棲み分けられた明快なピアノロック。そもそもの曲の骨格もアレンジもこれぞSHE’S。ドラマの内容に呼応した作品だが、追い風は彼ら自身に吹いている。再びグランドピアノで1番を弾き語りで歌った「Home」がラストナンバーだったのは地元でのキックオフだけが理由とは思えない。リスナーにとって心の拠りどころでもあり居場所でもあるSHE’S。貪欲に新しい試行錯誤をしつつ、同時に誰も排除しない息の長いバンドーー日本の音楽シーンにおいて新しい姿を想像させるに足る90分だったのだ。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

■ライブ情報
『SHE’S 10th Anniversary「From 19」』
2月22日（月）吹田市文化会館 メイシアター 大ホール
開場18:00／開演18:30 
※2月28日（日）23:59までアーカイブ配信あり
配信：https://eplus.jp/shes/st/