ReNが考える、失敗と成功を重ねることの大切さ 「その繰り返しの中で人は少しずつ進んでいく」

ReN、もがきながら進んでいく大切さ

 シンガーソングライターのReNが、今年1月にニューシングル「Running Forward」をリリースした。

 前作「We'll be fine」からおよそ8カ月ぶりとなるこの曲は、テレビ東京 金曜8時のドラマ『今野敏サスペンス 警視庁強行犯係樋口顕』の主題歌として書き下ろされたもの。まず耳に飛び込んでくるのはアコギをフィーチャーしたオーガニックなサウンドだが、力強く疾走感あふれるリズムはEDMからの影響をも感じさせる。どんな苦境に立たされても諦めず、前を向いてひたむきにチャレンジする人々の背中を押すような歌詞は、コロナ禍で生きる我々へのエールでもあるかのようだ。

 前回のインタビューでは、第1回目の緊急事態宣言が解除された直後の心境について、率直に語ってくれたReN。それからまたさらに半年以上が過ぎ、現在はどんな気持ちでいるのだろうか。楽曲の制作エピソードや、歌詞に込めた思い、プロ山岳ランナー上田瑠偉と共に絶景の中で撮影されたミュージックビデオの裏話など、じっくりと聞いた。(黒田隆憲)

出来ることは100パーセントやっていこうというモードに切り替えた

ーー前作「We'll be fine」以来のインタビューとなりますが、この約8カ月をReNさんはどのような思いで過ごしてきたのか、まずは聞かせてもらえますか?

ReN:前回のインタビューの時にも話したと思うのですが、コロナ禍でライブがほとんど出来なくなってしまったことに、最初はものすごく落ち込みましたね。制作をするための時間はたくさんあったのですが、なかなかポジティブな気持ちにはなれなくて。そんな中で曲作りにトライしてみても、思うようにいかない時期が続きました。

 ただ、今年に入ってすぐに2回目の緊急事態宣言が発出されたことに関しては、自分の中ではある程度覚悟はしていたんです。去年までは「コロナがあったから」ということが、ある意味では言い訳にもなったけど、そろそろちゃんと前を向かなきゃという気持ちでいます。みんな、この状況の中でなんとか工夫して生きているわけですから、僕も出来ることは100パーセントやっていこうというモードに切り替えたので、今の気分は割とポジティブですね。

ーーインスタライブやツイートなどでも、常にReNさんはポジティブなメッセージを発信している印象があります。

ReN:例えばライブなどでは、たとえステージ上で弱音を吐いてしまったとしても、その分パフォーマンスで盛り上げるというか。「やっぱりReNのライブはパワーをもらえるよね」と言ってもらえたと思うんです。でも、今このライブが出来ない状況で、例えばSNS上で弱音をもし吐いたとしたら、それだけが記録に残ってしまうじゃないですか。SNSの使い方は人それぞれだと思うし、他の人のことをあれこれ言うつもりは全然ないんですけど、僕自身はあまりネガティブな気持ちを書き散らかしたくないんですよね(笑)。

 もちろんコロナ禍という、誰1人経験したことのない世界的なパンデミックの中、どうしても落ち込んでしまう時はあります。「気づき」もたくさんあるけど、生活が一変してしまった時に「自分の生きる意味は?」とかまで考えてしまう人もいると思うんですよね。普段、慌ただしく生きている時には考えないことまで考えてしまうというか。自分を無力だと感じてしまったりすることもあるのかなと。同じシチュエーションでも感じ方、悩み方は十人十色なのだけど、それでもやはり、こういう時こそ自分を強く持つ必要があるのかなと思います。生きていればいつか必ずいいことがあるって僕は信じているんですよね。

ーーそういう強い気持ちを持つため、気持ちをポジティブに切り替えるために、ReNさんはどんなことをしていますか?

ReN:まずはやっぱり、誰かと話をすること。1人で悶々と考えてしまいがちですけど、人と話すことで気持ちが落ち着いたり、少しでも希望を見出したりすることってあると思うんですよ。なので、僕は仲の良い友人と、普段は話さないような話題についてもゆっくりと話す機会を作るようにしていました。そうすることで「自分だけが辛いわけじゃないんだな」と思えたのは大きな力になりました。

 それと、僕自身はファンとのコミュニケーションにも救われましたね。今までライブをやることで、オーディエンスとの「つながり」を感じていたのがすごく大きな力になっていたのですが、コロナ禍では例えばインスタライブなどを開催して、そこでみんなに話しかけたり、逆にみんなからの声を聞いてみたり、そういうところで「繋がっている」という感覚を味わえたのはすごく嬉しかったです。

ーー今回リリースされたシングル「Running Forward」は、ドラマ『警視庁強行犯係樋口顕』の主題歌として書き下ろされた曲だそうですね。

ReN:メインキャストの内藤剛志さんは、以前から僕のライブに遊びに来てくださっていて。それがご縁となって、今回のお話に繋がりました。まずは内藤さん、ドラマの制作チームの方たちと1時間くらい色んな話をさせてもらいました。ドラマの内容がこうで、それに合わせて楽曲はどんなイメージで……みたいな具体的な話というよりは、内藤さんが今までどういう思いで俳優をやってきたか、僕がどんな思いで曲を書いてきたかなど、同じ表現者としての深い話をさせてもらいました。そんな中で、徐々に書くべきテーマが決まっていった感じでしたね。

 内藤さんからいただいたテーマは、「疾走感があり、熱い中にも涼しさを感じさせる曲」というもの。僕の曲からいつもそういうイメージを持ってくださっていたみたいです。なかなかの難題でしたが(笑)、とりあえずあまり深いことを考えず自分が納得する曲を作ればいいんだなと。それで曲に取り掛かりましたね。

ーー歌詞は、新しいことに挑戦している人たち、苦境に立たされている人たちへのメッセージであると同時に、「We'll be fine」からさらに一歩踏み込んだ内容というか。コロナ禍で生きる我々へのエールでもあるのかなと。

ReN:まさにそうです。自分で選んだ道を、妥協せずもがきながら進んでいく。失敗や挫折を経験しながらもそこから這い上がり、何か一つのことを達成したら、さらにその先の高みを目指す……。それって、僕自身がライブをやったり曲を作ったりしている中で常に繰り返してきたことでもあって。自分は不器用な人間なので、置かれている状況に全く影響を受けずに曲を作ることができなくて(笑)。自分がその時に感じていること、今まで経験してきたことを歌詞の中に注ぎ込んでいきました。

ーー〈ここまで歩んできた過去を振り返れば 簡単なことばかりじゃなかったから〉というラインを、歌詞の最初と最後に持ってきたのも、人生の「繰り返し」を意識しているように思いました。

ReN:僕がこの曲で、最も強く訴えたかったのがこのラインだったんです。この1年間は、コロナ禍でみんながもがきながら生きてきて。辛いことや苦しいこともたくさんあったし、今もまだ大変な状況は続いているけど、それでも僕らはここまで何とか進むことができたのだから、この先どんなことがあっても絶対に負けない、このまま走り切ろうというメッセージを込めたくて。人生を俯瞰で見た時、人は一生をかけて山を登っているようなものだと思うんですよね。

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