安室奈美恵やきゃりーにも愛されたSOPHIE、バイラルチャート首位に 実験性とポピュラリティを繋ぎ合わせた“若き奇才”の功績
参照:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest
Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(2月4日公開:1月28日~2月3日集計分)のTOP10は以下の通り。
1位:SOPHIE「Immaterial」
2位:Ado「うっせぇわ」
3位:Olivia Rodrigo「drivers license」
4位:えぬ「想無」
5位:SugLawd Familiar,OHZKEY,Vanity.K「Longiness」
6位:Myuk「魔法 - Anime Size」
7位:KyoungSeo「Shiny Star(2020) 」
8位:Jagwar Twin「Loser」
9位:JESSIA「I'm not Pretty」
10位:Chinozo「グッバイ宣言」
今回はバイラルチャート1位にランクインしたSOPHIE「Immaterial」を取り上げる。1月30日に急逝したSOPHIEは、スコットランド・グラスゴー生まれのアーティストである。30日の午前4時頃、ギリシャ・アテネの自宅付近で満月を観るために手すりに登った際、バルコニーから転落したのだと言う。34歳だった。
SOPHIEは、2013年に設立されたロンドンのインディーレーベル<PC Music>に所属し、以降、積極的にネット上で楽曲を発表していく。その音楽性は、かなり強引にまとめてしまえば、アバンギャルドでポップ。楽器としてPCを扱うという意味でのラップトップミュージックの可能性を大きく広げた功績は大きい。2013年にリリースされたシングル「Bipp」は、当時流行していたバブルガム・ベースという新たなダンスミュージックの台頭もあり、アンダーグラウンドシーンで注目を集めた。“すでにネタが出尽くした”と言われて久しい音楽シーンにおいて、彼女はアンダーグラウンドシーンとオーバーグラウンドシーンのハブの役割はもちろん、実験音楽と大衆音楽という異なる次元で成立しているカルチャーを、同じキャンバスに大胆に描くことに成功し、そのクオリティを世間に評価された奇才でもあった。久々に登場した、これからの音楽シーンに確実に影響を与える、新たなパイオニアになり得る存在だったのである。
また、私生活では、2017年に自身がトランスジェンダーであることをカミングアウトしている。その翌年に発売された1stアルバム『Oil of Every Pearl's Un-Insides』は、トランスジェンダーのアイデンティティをテーマにした作品で、第61回グラミー賞の最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム賞にノミネートされた。