FIVE NEW OLD、巧みなステージングで表現するバンドの現在地 未来への期待を滲ませたオンラインライブ

 息を飲む展開がさらに続く。ファンの間では常に待望されていたボーカルとピアノのみの「Set Me Free(Piano ver.)」。素直さがエモーショナルな表現に直接結びついているようなHIROSHIの表現が胸を打つ。さらに最近は折坂悠太や髙城晶平(cero)のソロプロジェクトParallela Botanicaなどでも活躍するサックス奏者・ハラナツコを迎え入れての「In/Out」。ボーカルとコーラスとサックスの息があった有機的なアンサンブルに聴き入ってしまった。さらにゴスペルのムードが心を動かす「By Your Side」で、メンバー同士が顔を見合わせて笑顔になる場面も増えて行く。自分たちが作り出すグルーヴに突き動かされているのだろう。見ているこちらも思わずこのライブが録画されたものであることを忘れるぐらいの臨場感。

 初の日本語詞による「Vent」は耳に飛び込んでくるリリックがダイレクトに気持ちを上げて行くのがわかる。ギターリフと並行してサックスで彩りを加えるハラのプレイもパワーを送り込む。オンラインライブを見ている各々の部屋で踊り、クラップしているオーディエンスが見えそうな演奏に続き、ニューアルバムとそれに伴う全国ツアー開催の発表。「早くみんなのもとに会いに行きたいです。今日は音楽で会いに行くことを証明できたので。また音の鳴る場所でお会いしましょう」と、未来の約束ができたことに喜びを滲ませるHIROSHI、そしてメンバーの表情はライブが進むにつれて明確に明るくなっていた。ラストはまさに今生きているあらゆることへの祝福のような「Hallelujah」。音の抜き差しも絶妙な、モータウンソウルを想起させる躍動的なこの曲で70分のショーは完結。バンドの元来の骨太さと、繊細な表現を活かすアレンジ力を存分に味わうことができた。

 ちなみにニューアルバムのタイトルは『MUSIC WARDROBE』。「FIVE NEW OLDの音楽で、なりたい自分に変われるお手伝いをしたいと思って、バラエティ豊かなアルバムになっています」とHIROSHIがコメントしていたが、今回のライブによって期待値が上がったのは間違いない。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

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