『毅の“カタリタガリ”』第1回

SUPER★DRAGON 古川毅、音楽を語りまくる新連載『カタリタガリ』スタート! シーンを動かした4人のボーカリスト

■清水翔太「現行のR&Bを引っ張っている唯一の存在」

 次は清水翔太さんです。清水さんも美空ひばりさんから影響を受けていると聞いたことがあります。そういった古き良き歌謡曲や、海外のオーセンティックなソウルやファンクなどをルーツに持ち、それらの味わい深いビンテージ感を、今の時代に響くオリジナルな表現に昇華することで、現行のR&Bを引っ張っている唯一の存在だと思うんです。そして同時に、いわゆる“J-POP”のアーティストとしても強く立っておられます。J-POPってサウンドスタイルじゃないから、ある意味なんでもあり。そんななかで、ただ売れたいからこれがだめなら次はあれってやっていても、なかなかハマる形は見つからないし、散漫になるだけだと思います。音楽や思想的な部分でルーツがしっかりないと、生き抜くのは難しい。メッキだけを貼り替えていると、声の奥行きとか幅とか、わかる人にはばれてしまうし、無自覚な人にも薄さが伝わってしまう気がします。

 そこで清水さんの歌を聴けば聴くほど、参考にすればするほど、フェイクや抑揚、声により豊かな響きを持たせている鼻にかける感じとか、どこに目を向けても、小手先で真似してできることじゃないし、理論上はやれているはずでもそうはならないことがわかってくるんです。だから僕は、清水さんや尊敬しているアーティストがどんな音楽を聴いて育ったのか、どんなことを考えて歩んできたのか、できる限りみなさんのルーツから探るようにしています。

Feel Good

■アイナ・ジ・エンド「あらゆる要素があって成せる離れ業」

 最後はアイナ・ジ・エンドさんです。日本には独自のアイドル文化があってすごくおもしろい。でも、ときに“アイドル”という言葉は、音楽的な乏しさを表す意味で使われることもあります。そして、そことは一線を引きたい気持ちや、卓越したスキルを持つK-POPの台頭からの影響もあって、“脱アイドル”みたいな話も出てくる。でも僕は自分のことをアイドルだと思っているし、そこから逃げたくないんです。そこで、BiSHのみなさんのアイドル論はわからないんですけど、僕はすごく影響を受けています。

 アイナさんが振付を担当したり、メンバーそれぞれが歌詞を書いたり、ある部分でしっかりと自分たちがイニシアチブを持って活動することで、アイドルの概念を塗り替え、新しいムーブメントを起こしている。そして、あれだけ個性の強い6人が、同じ方向を向いたときの爆発力、奇跡的なまとまり方ですよね。曲のメッセージや物語が目に浮かぶように伝わってくるんです。SUPER★DRAGONも9人組で、年齢も個性もバラバラだからこその強みはあると思っていて、でもその部分を表面化させるのは簡単ではないので、BiSHから学ぶことは多いです。

 そのなかで、アイナさんはバンドで言うところフロントマン然としたパワーがある。僕もSUPER★DRAGONではマイクを持っている一人である以上、メッセンジャーとしての責任感を強く意識していますが、アイナさんの存在感、感情をダイレクトに刺激する無駄のなさと聴き手の想像力を掻き立てる奥行き、お馴染みのハスキーボイスや、まるで寿命を削っているような、エモーショナルでスリリングな儚さや迫力など、あらゆる要素に驚くばかり。等身大の自分をさらけだすメンタリティと、玉置さんのところで話したような歌の基礎、そしてフランク・オーシャンが好きだという話も聞いたことがあるんですけど、R&Bやロックなど確かな音楽的背景などがあって成せる離れ業だと思います。アイナさんはきっとこれからも、シーンに影響を与え続ける方なんじゃないでしょうか。

BiSH / LETTERS [REBOOT BiSH] @ 国立代々木競技場 第一体育館

■これからの自分

 国内外問わず、僕が影響を受けたボーカリストはたくさんいるんですけど、今回はあえて世代別に4人の方をピックアップしました。みなさん、狙っていたのか無意識なのか、いずれにせよ、その登場でシーンは大きく動きました。SUPER★DRAGONもそのくらいの存在になるべく、9人で突き詰めたいことを探してブラッシュアップしていきたいですし、アイドルや男性ダンスボーカルグループに対するステレオタイプと戦っていきたいという意識もあります。そんな反骨精神も含めて奢らず謙虚に、まあ、まだそんなことを言う段階でもないんですけど。まずは今僕らについてきてくれているファンの方々のことを第一に、そこから輪が広がって、いろんな趣味嗜好の方々に知ってもらえたら、それ以上に嬉しいことはないので、この連載も頑張って更新していきます。

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