TOMORROW X TOGETHER、破竹の勢いでチャート首位に 不安定な時代の“夢”を描く、ティーンエイジャーの新たな希望

 ローティーンの頃から仮想空間と現実を行き来し、絶えず情報の波をくぐり抜け、さらには悪化する米中関係や北朝鮮の動向に不安を覚えてきた。そんなアジアの少年少女たちが、コロナでめちゃくちゃになったこの世界をどう思うのか。「大丈夫」を連呼するポップスに惹かれなくなったとしても不思議もない、というかむしろ自然なことでしょう。BTSが『LOVE YOURSELF』シリーズのコンセプトで個人の尊厳を謳っているならば、若きTXTは、初めて「個人」として自立しようとしているティーンエイジャーを支える存在。まさに時代に則した、生まれるべくして生まれたグループのようにも思えます。

TOMORROW X TOGETHER '9と4分の3番線で君を待つ (Run Away) [Japanese Ver.]' Official MV

 アルバムのラストは「Can’t You See Me?(世界が燃えてしまった夜、僕たちは…)」。昨年8月のシングル『DRAMA』に収録された曲です。変わってしまった世の中を示唆するタイトルもそうですが、哀しげなメロディに乗せて〈聞こえる? 君を探す声〉と切々と歌われるところなど、ちょっと涙腺も崩壊寸前。この1曲に救われた人、どれだけ多いかわからないと思います。

TOMORROW X TOGETHER「Can’t You See Me?(世界が燃えてしまった夜、僕たちは…)」

 現実を見つめ、自分たちの非力さに戸惑いながら、それでもタイトルには『STILL DREAMING』と掲げること。こういう提示の仕方が、とても2021年っぽいなと納得しました。TXT、将来がますます楽しみです。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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