HUNTR/X、WOODZ、PLAVE、Cup of Joe、Silet Open Up……『MAJ 2026』最優秀アジア楽曲賞ノミネートに注目
土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.23
国際音楽賞『MUSIC AWARDS JAPAN』(MAJ)が2年目を迎えました。
昨年、このコラムで「最優秀アジア楽曲賞」のノミネート曲を紹介した時、「主要6部門の中にアジア楽曲賞があることが嬉しい!」と書きましたが、1年経ってもその気持ちは変わりません。むしろ強くなっています。なぜなら、この賞のおかげで私自身が新しい音楽と出会えるからです。アジアのフェスに行くたびに知らないアーティストに出会いますし、このMAJでも「知っていた名前」と「初めて出会った名前」が混在していました。開催直前になりましたが、今年ノミネートされたのは、インドネシアから1組、フィリピンから1組、韓国から3組、今年の「最優秀アジア楽曲賞」ノミネート曲を見ていきましょう。個性豊かですよ。
「Tabola Bale」Silet Open Up
インドネシア東部フローレス島出身のシンガー/ラッパー、Siprianus Bhukaのプロジェクト・Silet Open Upが、Jacson Zeran、Juan Reza、Diva Aurelらと共に制作したコラボレーション楽曲「Tabola Bale」です。ポップスでもありダンスミュージックでもあり、そこはかとなく土着的な空気も感じるし、陽気でいい気分にさせてくれます。
私はMAJのYouTubeチャンネルの番組で、インドネシアのアワードの代表にインタビューする機会があったのですが、最近インドネシアではジャカルタのような大都市発ではなく、インドネシア東部発の音楽がアツいんだそうです。実際、インドネシア国内でも「東部インドネシアの音楽がここまで大きな舞台に届いた」と話題になっていて、現地メディアは「インドネシア東部の誇り」として報じています(※1)。MAJのノミネート発表時には、インドネシアから最終ノミネートに残った唯一の楽曲として取り上げられていました。ローカルから海外に届く時代を象徴している1曲かもしれません。
「Multo」Cup of Joe
フィリピンの5人組バンド、Cup of Joeの「Multo」。実は圧倒的な数字を叩き出している曲なんです。2025年、Spotifyフィリピンで年間最も再生された楽曲となり、Cup of Joeも国内で最もストリーミングされたフィリピン人アーティストになりました(※2)。さらにSpotifyによると、2026年2月にはSpotifyで5億1300万回再生を突破。Spotify史上最も再生されたフィリピン楽曲になったといいます。この曲、日本人が聴いても、繰り返すうちにどんどん馴染んでくる美しい「スルメ曲」だなと思いますし、実は「Multo」はタガログ語で「亡霊、幻影」という意味で、終わってしまった恋愛の記憶から抜け出せない切ないラブソングなので、フィリピンでは“No1.失恋ソング”として国民的な共感を得たということなのだと想像します。一時はSpotify Globalチャートにもランクインし、フィリピン音楽(OPM)の歴史を塗り替えた1曲と言われています。
先のMAJのYouTubeチャンネルの番組では、フィリピンのアワードの代表にもインタビューできました。OPMについてなど理解度が高くなるお話を聞けたので、ぜひご覧ください。
「Dash」PLAVE
昨年は「WAY 4 LUV」でノミネートされたPLAVEが、今年も登場です。もう「バーチャルアイドルって何?」と言っている場合ではありません。もはや「バーチャルだから珍しい」という段階を超えているんですね。「Dash」は韓国最大の音楽配信サービスMelonでリリース当日に1位を獲得。収録曲5曲が上位を独占し、リリース24時間で1000万ストリームを突破。バーチャルアイドルとして初めてBillboard Global 200入りを果たしています(※3)。もちろん、日本でも人気が急上昇中。昨年の原稿で私は「授賞式どうやって出るの?」なんて書いていましたが、今やそんな話ではない。PLAVEは韓国のメインストリームど真ん中にいる存在と言っていいでしょう。メンバー自身が作詞・作曲に参加し、パフォーマンスを作り上げていることは昨年も書きましたが、「Dash」を聴くと、その音楽的な成長も感じます。
「Drowning」WOODZ
WOODZことチョ・スンヨンは、グループ活動ののち、現在は作詞作曲も自身で手がけるソロアーティスト。ノミネート曲「Drowning」は2023年のリリース当初、そこまで大きなヒットではなかったそうですが、彼が軍服務中に公開されたライブ映像がSNSで爆発的に拡散。「逆走」と呼ばれるチャート上昇を見せ、2025年のMelon年間チャートで年間1位を獲得。リリースから約2年後に年間チャートの頂点へ到達するという異例の成功物語をもつ1曲です。本人は軍服務中には実感がなく「部隊内で幹部や他の兵士たちが声をかけてくれたり、サインを求めてきた時に『何かうまくいったんだな』と感じた」という発言があって、なんだか微笑ましいです(※4)。そして今回こうして海外のアワードでのノミネート。ドラマチックですよね。
「Golden」HUNTR/X
2025年最大の社会現象と言ってもいいのが、この曲かもしれません。Netflixアニメーション映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』から生まれた、架空のグループHUNTR/Xによる「Golden」。今さらとやかく説明するのも私の拙い感想を述べるのも、全て蛇足と思えてしまいます。最初は「映画の挿入歌でしょ?」と思っていたのですが、とにかく完成度が高いですよね。時代的なムードとかいろんなことが複合的に絡み合って、世界中の人に愛されているのだと思います。
改めまして、「Golden」はBillboard Global 200で長期間1位を記録し、まさに世界的ヒット。YouTube Musicでも世界各国で首位を獲得し、公開から半年以上経ってもチャート上位を維持。さらに2026年のアカデミー賞では歌曲賞(Best Original Song)を受賞。ゴールデングローブ賞にもノミネート。もちろん、映画そのものもNetflix史上最大級のヒット作となり、相乗効果でどんどん人気が加速しました(※5)。
以上ノミネート5曲をざっとご紹介しました。繰り返しになりますが、これをきっかけに色々な曲を芋蔓式に掘って聴いてみると、新しいお気に入りアーティストに出会えるかもしれません。そして、それは音楽に限ったことではなく、きっとあらゆる分野において、私たち自身の考え方をアップデートしてくれることになると思います。
※1:https://www.medcom.id/hiburan/musik/8N0XjvYN-top-lagu-tabola-bale-tembus-nominasi-best-song-asia-di-music-awards-japan-2026?utm_source=chatgpt.com
※2:https://www.gmanetwork.com/news/lifestyle/hobbiesandactivities/968432/multo-is-most-streamed-song-on-spotify-ph-in-2025-cup-of-joe-is-most-streamed-opm-artist/story/?utm_source=chatgpt.com
※3:https://www.koreajoongangdaily.com/entertainment/plaves-dash-becomes-first-virtual-idol-song-on-billboard-global-200/12341099?utm_source=chatgpt.com
※4:https://www.donga.com/jp/article/all/20250723/5740906/1、https://www.kbsworld.ne.jp/entertainment/view?blcSn=67927&rowNum=1
※5:https://pitchfork.com/news/oscars-2026-kpop-demon-hunters-golden-wins-best-original-song/?utm_source=chatgpt.com
























