広瀬香美、カバー・コラボ・新曲で彩る『歌ってみた 歌われてみた』 ベテランらしい技量から遊び心まで満載な1枚に

 まさかの「YouTubeデビュー」と、J-POPカバー曲を披露する「歌ってみた」シリーズの大ヒットに沸いた2020年の広瀬香美。当初はスタッフの提案で“試しにやってみようかな”というくらいのノリだったらしいが、あれよあれよという間に人気爆発。3月にアップしたシリーズ第一弾「Lemon」(米津玄師)は2021年1月現在400万回再生を超え、その後もKing Gnu、Official髭男dism、あいみょん、LiSAなどの独自解釈カバーが人気を呼び、CMソングで多くのヒットを持つ「冬の女王」の健在を示すとともに、新たなリスナー層の開拓にも成功した。コロナ禍に沈むエンタメ業界を明るく盛り上げる意味でも、それはとても価値のある挑戦だった。

【広瀬香美】米津玄師さんのLemonを歌ってみた①【※スタッフのご機嫌とり】

 1月27日にリリースされた広瀬香美のニューアルバム『歌ってみた 歌われてみた』は、その「歌ってみた」シリーズの再録に、「ロマンスの神様」などオリジナル曲に多彩なボーカルゲストを迎えた「歌われてみた」シリーズを新たに追加。さらに書き下ろし新曲もたっぷりと盛り込んだ、三段重ねのおせち料理のような豪華パッケージだ。長年のファンはもちろん新規リスナーにも入りやすい入門編として、最適な作品に仕上がっている。

 三部構成の第一部「歌ってみた」に収録されたのは、「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」(H Jungle with t)、「白日」(King Gnu)、「もしかしてだけど」(どぶろっく)、「奏(かなで)」(スキマスイッチ)、「Pretender」(Official髭男dism)の5曲で、誰もが知るヒットチューンがずらりと並ぶ。アレンジはすべてピアノと歌だけのシンプルなものだが、「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」では原曲のドラムンベースのビートをリズミックに再構築したり、「白日」はテンポにとわられず緩急自在に演奏したりするなど、音楽家・広瀬香美にとって他者の楽曲を歌うことは、おそらく分析と研究の一環でもあるのだろう。プロフェッショナルなアレンジの妙技と、パフォーマーとしての遊び心をバランスよく散りばめているのが「歌ってみた」シリーズの醍醐味だ。特に「もしかしてだけど」は、ブギウギ風のかっこいいアレンジで下ネタぎりぎりの歌詞を嬉々として歌う、異色だが見事な出来栄えだ。

【広瀬香美】H junglewith tさんのWOW WAR TONIGHT歌ってみた⑫【※浜ちゃんトレイン🚃ジャングル経由🌳パーマ行き​‍🦱】
【広瀬香美】King Gnuさんの白日歌ってみた③【※やんちゃでロックな幕の内弁当】

 6曲目から始まる第二部「歌われてみた」シリーズでは、「愛があれば大丈夫」(with 眉村ちあき)、「ゲレンデがとけるほど恋したい」(with 鬼龍院翔<ゴールデンボンバー>)、「ロマンスの神様」(with 百田夏菜子)、「DEAR...again」(with chay)、「promise」(with HAN-KUN)と、名曲×豪華コラボが次々と登場。ゴールデンボンバー「女々しくて」のフレーズを織り込んで笑いを取りつつも、歌には真剣に挑む鬼龍院翔。メロディとまっすぐに向き合い、ソロボーカリストとしての確かな実力を発揮する百田夏菜子。新たなラップパートを盛り込んで楽曲を生まれ変わらせたHAN-KUNなど、いずれも楽曲へのリスペクトと新解釈が合体した出色のパフォーマンスだ。ピアノとコーラスに徹する広瀬香美のパフォーマンスからも、コラボが嬉しくて仕方ないという空気が伝わってくる。

【広瀬香美×HAN-KUN】ついに完成‼《歌ってみた 歌われてみた》レコーディング現場に潜入してみた #6

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