CYNHN、日常の孤独に寄り添う1st EP『#0F4C81(クラシックブルー)』 繊細な楽曲群を歌いこなる頼もしいヴォーカル

 CYNHN(スウィーニー)の1st EP『#0F4C81』は「クラシックブルー」と読む。その読み方はカラーコードに由来している。カラーコードとは、Webブラウザでの表示のために定義されている十六進法の文字列のことだ。カラーコードを検索できるサイトで「#0F4C81」と入力すれば、CYNHNの名前の由来である「青」が表示されるはずだ。ユニット名に続いて、とうとうCDタイトルも「読めない」ものになったのか……と不思議な感慨すら抱く。

 ストレートなわかりやすさを目指さず、より繊細なものを志向する。そんな姿勢は、『#0F4C81』から最初に先行配信され、MVも公開された「氷菓」に顕著だ。その「氷菓」も「アイスクリーム」と読むのだから、わかりにくさも筋金入りだ。

CYNHN 「氷菓」Music Video

 「氷菓」は綾瀬志希の歌とともに始まるが、彼女は感情を爆発させるかのようなヴォーカルスタイルを封印して、驚くほど穏やかな歌いだしを聴かせる。ヴォーカルは百瀬怜、月雲ねる、青柳透と続いていき、サビの崎乃奏音でようやく熱を帯びていく。しかし、それ以降も含めて、全体的な手触りはあくまで冷ややかだ。

 「氷菓」の作曲はmol-74、編曲はトオミヨウ。バンドサウンドとエレクトロニカの要素が、CYNHNの新たな一面を静かに、しかし大胆に切り拓いた楽曲だ。CYNHNのヴォーカルと重なるとき、聴き手自身が体験していないはずのノスタルジーを味わわせる。

CYNHN「イナフイナス」Music Video

 さらに12月15日にMV公開が行われたのは「イナフイナス」。CYNHNのメインソングライターである渡辺翔が作詞作曲を担当し、ケンカイヨシが編曲した楽曲だ。これまでになくダンスビートを意識したトラックとともに、MVでは月雲ねるを筆頭に、百瀬怜がソロダンスを披露する。2分50秒過ぎの譜割りの細かさは、ヒップホップへの接近を感じさせる瞬間だ。

CYNHN「#0F4C81」ダイジェスト映像

 蒼山幸子作詞の「夜間飛行」には、〈この恋はきっと幼い〉という歌詞も出てくる。CYNHNにとっては珍しいラブソングだ。言い換えると、CYNHNはふだんはほぼ内面について歌っている。「夜間飛行」もまた恋をしている自身の内面を歌っており、同年代の楽曲にありがちな甘酸っぱさがないという点で実にCYNHNらしい。トオミヨウ作編曲のメロディやサウンドとあわせ、とてもメランコリックだ。

 草野華余子が作詞作曲編曲(編曲のみebaと共作)をした「インディゴに沈む」も、「わたし」と「君」の物語だが直接的なラブソングではない。インディゴ、つまり藍色をキーワードにしながら〈朝は未だ、来ない〉と未明の葛藤を歌うドラマティックなナンバーだ。

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